格言聯璧 / 持躬類・田宅を廣むるは義方を教ふるに如かず
立黨羽,不如昭信義。作威福,不如篤至誠。 多言說,不如慎隱微。博聲名,不如正心術。 恣豪華,不如樂名教。廣田宅,不如教義方。
新字:立党羽,不如昭信義。作威福,不如篤至誠。 多言説,不如慎隠微。博声名,不如正心術。 恣豪華,不如楽名教。広田宅,不如教義方。
書き下し
黨羽を立つるは、信義を昭かにするに如かず。威福を作すは、至誠を篤くするに如かず。 言說を多くするは、隱微を愼むに如かず。聲名を博むるは、心術を正すに如かず。 豪華を恣にするは、名教を樂しむに如かず。田宅を廣むるは、義方を教ふるに如かず。
現代語訳
徒党を組むよりも、信義を明らかにするほうがよい。威光と恩恵を振りかざすよりも、まごころを厚くするほうがよい。 言葉を多くするよりも、人の見ていないところを慎むほうがよい。名声を広めるよりも、心の持ち方を正すほうがよい。 贅沢をほしいままにするよりも、人倫の教えを楽しむほうがよい。田畑や屋敷を広げるよりも、子に正しい道を教えるほうがよい。
解説
前の単位から続く「如かず」の比較の列で、人が頼りにしがちなものと、より根本的なものを六組並べています。党羽より信義、威福より至誠、言説より隠微の慎み、声名より心術、豪華より名教、田宅より義方という具合です。威福を作すは『書経』洪範に見える語で、権勢で人を賞罰し従わせることです。義方は『春秋左氏伝』隠公三年の「子を愛しては之に教ふるに義方を以てす」に基づき、子に正しい生き方を教えることです。仲間を増やし、名を広め、財産を増やすことより、信頼と誠実と子への教えが、長い目で見て人と家を支えます。
この章句が説くこと
信義至誠家訓持躬心術
関連する章句
-
『格言聯璧』敦品類・福を造る者は淡にして長し田宅を廣め、姻援を結び、什一を爭ひ、功名を鬻ぐ、此れ福を求むるなり。 福を造る者は淡にして長く、福を求むる者は濃にして短し。 士大夫は當に此の生の爲に名を惜しむべし、當に此の生の爲に名を市るべからず。 詩書に敦く、氣節を尚び、取與を慎み、威儀を謹む、此れ名を惜しむなり。
-
『格言聯璧』持躬類・信足らざれば則ち多言才足らざれば則ち謀多く、識足らざれば則ち事多く、威足らざれば則ち怒り多く、信足らざれば則ち言多く、勇足らざれば則ち勞多く、明足らざれば則ち察多く、理足らざれば則ち辯多く、情足らざれば則ち儀多し。 私恩もて煦感するは、仁の賊なり。直往して輕く擔ふは、義の賊なり。
-
『格言聯璧』持躬類・内は己を欺かず、外は人を欺かず心は妄りに念はず、身は妄りに動かず、口は妄りに言はず、君子の誠を存する所以なり。 内は己を欺かず、外は人を欺かず、上は天を欺かず、君子の獨を愼む所以なり。 父母に愧ぢず、兄弟に愧ぢず、妻子に愧ぢず、君子の家に宜しき所以なり。
-
『格言聯璧』持躬類・身心に益無きの書を展ぶる勿れ心術は光明篤實を以て第一と爲し、容貌は正大老成を以て第一と爲し、言語は簡重眞切を以て第一と爲す。 身心に益無きの語を吐く勿れ、身心に益無きの事を爲す勿れ、身心に益無きの人に近づく勿れ、身心に益無きの境に入る勿れ、身心に益無きの書を展ぶる勿れ。
-
『格言聯璧』持躬類・富は能く施すを以て德と爲す賢人君子と做らんと要するは、我の主張にして、天に由り得ず。 富は能く施すを以て德と爲し、貧は求むる無きを以て德と爲し、貴は人に下るを以て德と爲し、賤は勢を忘るるを以て德と爲す。 體面を護るは、廉恥を重んずるに如かず。醫藥を求むるは、性情を養ふに如かず。
-
『格言聯璧』持躬類・聰明睿知、之を守るに愚を以てす聰明睿知は、之を守るに愚を以てす。功、天下を被ふも、之を守るに讓を以てす。 勇力、世を振ふも、之を守るに怯を以てす。富、四海を有つも、之を守るに謙を以てす。 居積の人と富を爭はず、進取の人と貴を爭はず、矜飾の人と名を爭はず、少年の人と英俊を爭はず、盛氣の人と是非を爭はず。