格言聯璧 / 存養類・欲寡ければ則ち寬し
因循人似閑,心中常有餘忙。 寡欲故靜,有主則虛。 無欲之謂聖,寡欲之謂賢;多欲之謂凡,徇欲之謂狂。 人之心胸,多欲則窄,寡欲則寬。 人之心境,多欲則忙,寡欲則閑。 人之心術,多欲則險,寡欲則平。 人之心事,多欲則憂,寡欲則樂。 人之心氣,多欲則餒,寡欲則剛。
新字:因循人似閑,心中常有余忙。 寡欲故静,有主則虚。 無欲之謂聖,寡欲之謂賢;多欲之謂凡,徇欲之謂狂。 人之心胸,多欲則窄,寡欲則寛。 人之心境,多欲則忙,寡欲則閑。 人之心術,多欲則険,寡欲則平。 人之心事,多欲則憂,寡欲則楽。 人之心気,多欲則餒,寡欲則剛。
書き下し
因循の人は閑なるに似たれども、心中常に餘忙有り。 欲寡し、故に靜かなり。主有れば則ち虚なり。 欲無き、之を聖と謂ふ。欲寡き、之を賢と謂ふ。欲多き、之を凡と謂ふ。欲に徇ふ、之を狂と謂ふ。 人の心胸は、欲多ければ則ち窄く、欲寡ければ則ち寬し。 人の心境は、欲多ければ則ち忙しく、欲寡ければ則ち閑なり。 人の心術は、欲多ければ則ち險しく、欲寡ければ則ち平かなり。 人の心事は、欲多ければ則ち憂へ、欲寡ければ則ち樂しむ。 人の心氣は、欲多ければ則ち餒ゑ、欲寡ければ則ち剛し。
現代語訳
ぐずぐずと先延ばしにする人は暇そうに見えますが、心のなかには常に片付かない忙しさがあります。 欲が少ないから心が静かなのです。心に主がいるから心が虚しく澄むのです。 欲がないのを聖人といい、欲が少ないのを賢人といい、欲が多いのを凡人といい、欲に従って身を任せるのを狂人といいます。 人の胸のうちは、欲が多ければ狭く、欲が少なければ広くなります。 人の心の境地は、欲が多ければ忙しく、欲が少なければのどかになります。 人の心の働きは、欲が多ければ険しく、欲が少なければ平らかになります。 人の心配ごとは、欲が多ければ憂いとなり、欲が少なければ楽しみとなります。 人の気力は、欲が多ければしぼみ、欲が少なければ剛くなります。
解説
前の単位の「果決の人」と対になる「因循の人」の句から始まります。先延ばしにする人は暇そうでも心の中は片付かない用事でいっぱいだという指摘は、今日でも耳が痛いものです。続いて寡欲の効用が畳みかけるように語られます。欲の多少で人を聖・賢・凡・狂の四段に分け、さらに心胸・心境・心術・心事・心気の五つについて、欲が多いとどうなり、少ないとどうなるかを並べます。狭いと寛い、忙と閑、険と平、憂と楽、餒と剛の対比は明快です。心のゆとりが持てないとき、原因は時間ではなく欲の多さにあるのかもしれません。
この章句が説くこと
寡欲存養決断閑適節制
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