格言聯璧 / 存養類・其の心を大にして天下の物を容る
大其心,容天下之物;虛其心,受天下之善;平其心,論天下之事;潛其心,觀天下之理;定其心,應天下之變;清明以養吾之神,湛一以養吾之慮,沈警以養吾之識,剛大以養吾之氣,果斷以養吾之才,凝重以養吾之度,寬裕以養吾之量,嚴冷以養吾之操。
新字:大其心,容天下之物;虚其心,受天下之善;平其心,論天下之事;潜其心,観天下之理;定其心,応天下之変;清明以養吾之神,湛一以養吾之慮,沈警以養吾之識,剛大以養吾之気,果断以養吾之才,凝重以養吾之度,寛裕以養吾之量,厳冷以養吾之操。
書き下し
其の心を大にして、天下の物を容る。其の心を虚にして、天下の善を受く。其の心を平かにして、天下の事を論ず。其の心を潛めて、天下の理を觀る。其の心を定めて、天下の變に應ず。清明以て吾が神を養ひ、湛一以て吾が慮を養ひ、沈警以て吾が識を養ひ、剛大以て吾が氣を養ひ、果斷以て吾が才を養ひ、凝重以て吾が度を養ひ、寬裕以て吾が量を養ひ、嚴冷以て吾が操を養ふ。
現代語訳
心を大きくして、天下のあらゆるものを受け入れます。心を虚しくして、天下のあらゆる善を受け取ります。心を平らにして、天下の事を論じます。心を沈めて、天下の道理を観察します。心を定めて、天下の変化に対応します。清らかで明るい心で精神を養い、澄んで一つにまとまった心で思慮を養い、落ち着いて油断のない心で見識を養い、剛く大きな心で気力を養い、思い切りのよさで才能を養い、どっしりとした重みで風格を養い、ゆったりとした寛さで度量を養い、きびしく冷静な心で節操を養います。
解説
前半は心の五つの持ち方と、それぞれが天下の何に向かうかを対応させています。大にすれば物を容れ、虚にすれば善を受け、平にすれば事を論じ、潜めれば理を観、定めれば変に応ずるという具合です。宋の張載に「其の心を大にすれば則ち能く天下の物を体す」という言葉があり、それを展開した形です。後半は八つの「以て養ふ」を連ね、神・慮・識・気・才・度・量・操という人の内面の要素を、それぞれ何によって育てるかを示します。自分に足りない資質を見つけたとき、どんな心構えで補えばよいかを探す一覧表として使えます。
この章句が説くこと
存養虚心度量修身心術
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・修身・心を大にし虛にし平にし潛め定む其の心を大にして天下の物を容れ、其の心を虛にして天下の善を受け、其の心を平にして天下の事を論じ、其の心を潛めて天下の理を觀、其の心を定めて天下の變に應ず。
-
『格言聯璧』學問類・虚心ならざれば水を以て石に沃ぐが如し志氣を把りて奮發し得て起さば、何の事か做すべからざらん。 虚心ならざれば、便ち水を以て石に沃ぐが如く、一毫も進入し得ず。 開悟せざれば、便ち柱に膠して瑟を鼓するが如く、一毫も轉動し得ず。 體認せざれば、便ち電光の物を照すが如く、一毫も把捉し得ず。
-
『酔古堂剣掃』集素・貌は松と共に瘦す心は竹と俱に空し、問ふ是非何處にか覺を安んぜん。 貌は松と共に瘦す、知る憂喜の眉に上るに由無きを。
-
言志四録・南洲手抄独得の見は私に似る、人其の驟至に驚く。平凡の議は公に似る、世其の狃聞に安んず。凡そ人の言を聴くは、宜しく虚懐にして之を邀ふべし。狃聞に苟安することなくんば可なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・一葉の滄海に泛ぶが如し聖賢の量は空闊なり。事の胸中に到るは一葉の滄海に泛ぶが如し。
-
『呻吟語』内篇・應務・度量寬弘なれば受用の處有り世間に一處として拂意の事無きは無く、一日として拂意の事無きは無し。椎だ度量寬弘なれば受用の處有り。彼の局量褊淺なる者は空しく自ら懊恨するのみ。