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家道訓 / 巻之一・総論上

一人の世にある、たかきいやしき、皆身ををさめて、家をとゝのふるを以てつとめとす。家の本は身にあり。故に家ををさむる主人は、まづ我が身を正しくして、家をとゝのふべし。身脩まらざれば家とゝのひがたし。家とゝのはざれば身を安くしがたし。君子はつねに身をつゝしみて、後の患をおもんぱかる。こゝを以て、身やすくして家たもつべし。家の主人正しければ、家人を敎へみちびくべし。主人正しからざれば、家人の則なく、善をすゝめ惡をいましめがたくして、家法行はれず。故に主人の身の行は、家人の見ならへる手本となれり。つゝしむべし。

新字:一人の世にある、たかきいやしき、皆身ををさめて、家をとゝのふるを以てつとめとす。家の本は身にあり。故に家ををさむる主人は、まづ我が身を正しくして、家をとゝのふべし。身脩まらざれば家とゝのひがたし。家とゝのはざれば身を安くしがたし。君子はつねに身をつゝしみて、後の患をおもんぱかる。こゝを以て、身やすくして家たもつべし。家の主人正しければ、家人を教へみちびくべし。主人正しからざれば、家人の則なく、善をすゝめ悪をいましめがたくして、家法行はれず。故に主人の身の行は、家人の見ならへる手本となれり。つゝしむべし。

書き下し

一人の世にある、たかきいやしき、皆身ををさめて、家をととのふるを以てつとめとす。家の本は身にあり。故に家ををさむる主人は、まづ我が身を正しくして、家をととのふべし。身脩まらざれば家ととのひがたし。家ととのはざれば身を安くしがたし。君子はつねに身をつつしみて、後の患をおもんぱかる。ここを以て、身やすくして家たもつべし。家の主人正しければ、家人を教へみちびくべし。主人正しからざれば、家人の則なく、善をすすめ悪をいましめがたくして、家法行はれず。故に主人の身の行は、家人の見ならへる手本となれり。つつしむべし。

現代語訳

人がこの世にあって、身分の高い者も低い者も、皆身を修めて家を整えることを務めとします。家の本は身にあります。ですから家を治める主人は、まず自分の身を正しくして家を整えるべきです。身が修まらなければ家は整いにくく、家が整わなければ身を安らかにしにくいのです。君子は常に身を慎んで、後の憂いを考えます。それによって身は安らかに、家は保たれるのです。家の主人が正しければ、家の者を教え導くことができます。主人が正しくなければ、家の者の手本がなく、善を勧め悪を戒めることが難しくて、家の決まりは行われません。ですから主人の身の行いは、家の者が見習う手本となるのです。慎むべきです。

解説

家道訓は正徳元年、八十二歳の益軒が家の治め方と財の用い方を説いた書です。冒頭で益軒は、大学の「身修まりて后家斉ふ」の考えを受けて、家の本は主人の身にあると言います。主人が正しければ家の者を導けますが、主人が正しくなければ家法は行われません。主人の行いがそのまま家の者の手本になるからです。親の姿を子が見て育ち、上司の働き方を部下がまねるのは今も同じで、家庭でも職場でも、まず自分の行いを整えることが出発点になります。

この章句が説くこと

家修身主人手本大学

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