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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此不邪見ノ德アル者ハ。人主ハ明ナルシヤ。能群臣ノ邪正ヲ知ル。鏡ノ長明ナル如ク。胸中ニ物ナケレハ。好醜自カラアラハルルシヤ。老人ハ事ヘ安シ。心邪曲ナケレハ兒孫各ソノ長スル所ニ隨フシヤ。臣トナレハ事ニ任スヘシ。其私ヲ雜ヘネハ作コト忠直シヤ。少壯ノ人ハ孝順ナルシヤ。人ニ邪智ナケレハ自ラ道ニカナフシヤ。誠ニ十善ハ。上下貴賤。智愚賢不肖。悉ク通行スヘク。假令夷狄ニ在テモ通行スヘキ道シヤ。

新字:此不邪見ノ徳アル者ハ。人主ハ明ナルシヤ。能群臣ノ邪正ヲ知ル。鏡ノ長明ナル如ク。胸中ニ物ナケレハ。好醜自カラアラハルルシヤ。老人ハ事ヘ安シ。心邪曲ナケレハ児孫各ソノ長スル所ニ随フシヤ。臣トナレハ事ニ任スヘシ。其私ヲ雑ヘネハ作コト忠直シヤ。少壮ノ人ハ孝順ナルシヤ。人ニ邪智ナケレハ自ラ道ニカナフシヤ。誠ニ十善ハ。上下貴賤。智愚賢不肖。悉ク通行スヘク。仮令夷狄ニ在テモ通行スヘキ道シヤ。

書き下し

此不邪見ノ徳アル者ハ。人主ハ明ナルシヤ。能群臣ノ邪正ヲ知ル。鏡ノ長明ナル如ク。胸中ニ物ナケレハ。好醜自カラアラハルルシヤ。老人ハ事ヘ安シ。心邪曲ナケレハ児孫各ソノ長スル所ニ随フシヤ。臣トナレハ事ニ任スヘシ。其私ヲ雑ヘネハ作コト忠直シヤ。少壮ノ人ハ孝順ナルシヤ。人ニ邪智ナケレハ自ラ道ニカナフシヤ。誠ニ十善ハ。上下貴賤。智愚賢不肖。悉ク通行スヘク。仮令夷狄ニ在テモ通行スヘキ道シヤ。

現代語訳

この不邪見の徳のある者は、人の主となれば明らかである。よく群臣の邪と正を知る。鏡が長く曇らないように、胸の中にわだかまりがなければ、良し悪しはおのずから現れるのである。老人となれば仕えやすい。心に邪な曲がりがなければ、子や孫はそれぞれその長ずる所に従うのである。臣となれば事を任せることができる。その私心を混ぜなければ、なすことが忠実でまっすぐである。若く盛んな人は孝行で従順である。人に邪な知恵がなければ、おのずから道にかなうのである。まことに十善は、上下貴賤、智者も愚者も、賢者も愚か者も、ことごとく行うべきものであり、たとえ夷狄の地にあっても通じて行うべき道である。

解説

不邪見の徳が、立場ごとにどう現れるかを示す。君主なら胸中に先入観がないので、鏡のように臣下の良し悪しが自然に見える。年長者なら心に曲がりがないので、子や孫がそれぞれの長所を伸ばす。臣下なら私心を混ぜないので安心して任される。若者なら素直に孝順となる。夷狄という当時の言葉を用いつつ、十善はどの身分にも、どの国にも通じる道だと言い切る。先入観を持たない上司の下で人が育つ。人を見る目と任される信頼の源を教える。

この章句が説くこと

邪見十善君臣私心

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