十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下
且ク大聖世尊ノ菩提樹下ニ獲ル所ノ法。衆生各自ソノ根機ニ應シテ聽受シ得ル。在世滅後。此ヲ貝葉ニ書シテ後世ニ遺ス。支那ニ翻シ傳テ住持ノ法寶トナル。根機差別シ。法淺深種種ナレトモ。一文一句コトコトク甘露味ナルコトハ一シヤ。初成道ヨリ入涅槃ニ至リ。人天小乘ノ教ヨリ大乘圓極ニ至ルマテ。說相差別スルトモ。ソノ法性等流ナルコトハ一シヤ。信受スル者ハ今世後世ノ大明燈シヤ。奉行スル者ハ身心ノ勝安樂シヤ。一文一句ト雖トモ誠ニ身命ニカヘルニ惜カラヌシヤ。無量劫ノ無明煩惱ヲ一時ニ照破スルハ。此法寶シヤ。無量劫ノ罪業障礙ヲ一時ニ消滅スルハ。此法寶シヤ。萬善功德ヲ一時ニ滿足スルハ。此法寶シヤ。
新字:且ク大聖世尊ノ菩提樹下ニ獲ル所ノ法。衆生各自ソノ根機ニ応シテ聴受シ得ル。在世滅後。此ヲ貝葉ニ書シテ後世ニ遺ス。支那ニ翻シ伝テ住持ノ法宝トナル。根機差別シ。法浅深種種ナレトモ。一文一句コトコトク甘露味ナルコトハ一シヤ。初成道ヨリ入涅槃ニ至リ。人天小乗ノ教ヨリ大乗円極ニ至ルマテ。説相差別スルトモ。ソノ法性等流ナルコトハ一シヤ。信受スル者ハ今世後世ノ大明灯シヤ。奉行スル者ハ身心ノ勝安楽シヤ。一文一句ト雖トモ誠ニ身命ニカヘルニ惜カラヌシヤ。無量劫ノ無明煩悩ヲ一時ニ照破スルハ。此法宝シヤ。無量劫ノ罪業障礙ヲ一時ニ消滅スルハ。此法宝シヤ。万善功徳ヲ一時ニ満足スルハ。此法宝シヤ。
書き下し
且ク大聖世尊ノ菩提樹下ニ獲ル所ノ法。衆生各自ソノ根機ニ応シテ聴受シ得ル。在世滅後。此ヲ貝葉ニ書シテ後世ニ遺ス。支那ニ翻シ伝テ住持ノ法宝トナル。根機差別シ。法浅深種種ナレトモ。一文一句コトコトク甘露味ナルコトハ一シヤ。初成道ヨリ入涅槃ニ至リ。人天小乗ノ教ヨリ大乗円極ニ至ルマテ。説相差別スルトモ。ソノ法性等流ナルコトハ一シヤ。信受スル者ハ今世後世ノ大明灯シヤ。奉行スル者ハ身心ノ勝安楽シヤ。一文一句ト雖トモ誠ニ身命ニカヘルニ惜カラヌシヤ。無量劫ノ無明煩悩ヲ一時ニ照破スルハ。此法宝シヤ。無量劫ノ罪業障礙ヲ一時ニ消滅スルハ。此法宝シヤ。万善功徳ヲ一時ニ満足スルハ。此法宝シヤ。
現代語訳
しばらく、大聖世尊が菩提樹の下で得られた法を、衆生はそれぞれその素質に応じて聴いて受けることができる。仏の在世にも滅後にも、これを貝多羅葉に書いて後世に遺した。中国に翻訳して伝えて、この世に保たれる法宝となった。素質に違いがあり、法に浅い深いの様々があっても、一文一句ことごとく甘露の味であることは一つである。初めて悟りを開かれた時から涅槃に入られるまで、人や天の教え、小乗の教えから、大乗の円満な極みに至るまで、説き方に違いがあっても、それが法性から等しく流れ出たものであることは一つである。信じて受ける者には今世と後世を照らす大きな灯明である。奉じて行う者には身と心の優れた安楽である。一文一句といえども、まことに身命に代えても惜しくないのである。無量劫の無明と煩悩を一時に照らし破るのは、この法宝である。無量劫の罪業と障りを一時に消し去るのは、この法宝である。万の善と功徳を一時に満たすのは、この法宝である。
解説

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法華経・藥草喻品第五(2)「爾の時、無数千万億種の衆生、仏の所に来至して、法を聴く。如来、時に於て、是の衆生の諸根の利鈍、精進、懈怠を観て、其の堪うる所に随いて、為に法を説きたもうこと、種種無量にして、皆歓喜せしめ、快く善利を得しむ。」 「是の諸の衆生、是の法を聞き已りて、現世は安穏に、後生は善処にして、道を以て楽を受け、亦た法を聞くことを得。既に法を聞き已りて、諸の障礙を離れ、諸法の中に於て、力の能う所に任せ、漸く道に入るを得。彼の大雲の、一切の卉木叢林、及び諸の薬草に雨ふらして、其の種性の如く、具足して蒙潤し、各生長することを得るが如し。」 「如来の説法は、一相一味なり、所謂、解脱相、離相、滅相にして、究竟して一切種智に至る。其れ衆生有りて、如来の法を聞き、若しくは持ち読誦し、説の如く修行せば、得る所の功徳、自ら覚知せず。所以は何ん。唯だ如来のみ、此の衆生の種相体性を知る、何の事を念い、何の事を思い、何の事を修し、云何に念い、云何に思い、云何に修し、何の法を以て念い、何の法を以て思い、何の法を以て修し、何の法を以て何の法を得るかを。衆生は種種の地に住す、唯だ如来のみ、如実に之を見て、明了にして礙げ無し。彼の卉木叢林、諸の薬草等の、自ら上中下の性を知らざるが如し。如来は是の一相一味の法を知る、所謂、解脱相、離相、滅相、究竟涅槃、常寂滅相にして、終に空に帰す。仏、是れを知り已りて、衆生の心欲を観て、之を将護す、是の故に即ちには、為に一切種智を説かず。汝等迦葉、甚だ稀有なりと為す、能く如来の宜しきに随いて説法したもうを知り、能く信じ能く受く。所以は何ん。諸仏世尊、宜しきに随いて説法したもうこと、解し難く知り難し。」 爾の時、世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説きて言わく、
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