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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此地上閻浮提ノ中ニ。衆生福緣ノ熟スル時。法身等流シテ其迹ヲ顯ハス。譬ヘハ衆星ノ朗月ヲ籠ル如ク。法身ノ大士圍繞シテ。迦維羅衞ニ降誕シタマフ。摩耶夫人ハ三世諸佛ノ親母トナリ。瞿夷夫人ハ塵却ニモ瞻仰シ盡サヌ。十六大國王ハ同時受生シテ。成道七日ノ初ニ心地戒ヲ聽受ス。其十九歲ノトキ。東宮ノ位ヲ棄テ出家シタマフ。此ハ五欲ノ實ナキヲ顯示スル姿シヤ。三十歲ノトキ。摩竭陀國優留頻羅聚落ノ管內。菩提樹下。金剛寶石座上ニ在テ。無上正覺ヲ成シタマフ。此ハ無明ノ本來空ヲ顯示スル姿シヤ。末ハ本ニ徹スレハ。八相ノ化儀悉ク法身ノ妙德タルシヤ。本ハ末ニ異ナラネハ。今日ノ泥木鑄畫。全三身ヲ具足シテ缺減ナキシヤ。

新字:此地上閻浮提ノ中ニ。衆生福縁ノ熟スル時。法身等流シテ其迹ヲ顕ハス。譬ヘハ衆星ノ朗月ヲ籠ル如ク。法身ノ大士囲繞シテ。迦維羅衛ニ降誕シタマフ。摩耶夫人ハ三世諸仏ノ親母トナリ。瞿夷夫人ハ塵却ニモ瞻仰シ尽サヌ。十六大国王ハ同時受生シテ。成道七日ノ初ニ心地戒ヲ聴受ス。其十九歳ノトキ。東宮ノ位ヲ棄テ出家シタマフ。此ハ五欲ノ実ナキヲ顕示スル姿シヤ。三十歳ノトキ。摩竭陀国優留頻羅聚落ノ管内。菩提樹下。金剛宝石座上ニ在テ。無上正覚ヲ成シタマフ。此ハ無明ノ本来空ヲ顕示スル姿シヤ。末ハ本ニ徹スレハ。八相ノ化儀悉ク法身ノ妙徳タルシヤ。本ハ末ニ異ナラネハ。今日ノ泥木鋳画。全三身ヲ具足シテ欠減ナキシヤ。

書き下し

此地上閻浮提ノ中ニ。衆生福縁ノ熟スル時。法身等流シテ其迹ヲ顕ハス。譬ヘハ衆星ノ朗月ヲ籠ル如ク。法身ノ大士囲繞シテ。迦維羅衛ニ降誕シタマフ。摩耶夫人ハ三世諸仏ノ親母トナリ。瞿夷夫人ハ塵却ニモ瞻仰シ尽サヌ。十六大国王ハ同時受生シテ。成道七日ノ初ニ心地戒ヲ聴受ス。其十九歳ノトキ。東宮ノ位ヲ棄テ出家シタマフ。此ハ五欲ノ実ナキヲ顕示スル姿シヤ。三十歳ノトキ。摩竭陀国優留頻羅聚落ノ管内。菩提樹下。金剛宝石座上ニ在テ。無上正覚ヲ成シタマフ。此ハ無明ノ本来空ヲ顕示スル姿シヤ。末ハ本ニ徹スレハ。八相ノ化儀悉ク法身ノ妙徳タルシヤ。本ハ末ニ異ナラネハ。今日ノ泥木鋳画。全三身ヲ具足シテ欠減ナキシヤ。

現代語訳

この地上の閻浮提の中で、衆生の福の縁が熟する時、法身が等しく流れ出てその跡を現す。たとえば多くの星が明るい月を囲むように、法身の大士たちが取り囲んで、迦毘羅衛に降誕なさった。摩耶夫人は三世の諸仏の生母となり、瞿夷夫人は塵の数ほどの劫をかけても仰ぎ尽くせない。十六の大国の王は同時に生まれて、成道の七日の初めに心地戒を聴いて受けた。十九歳の時、東宮の位を捨てて出家なさった。これは五欲に実体がないことを示す姿である。三十歳の時、摩竭陀国の優留頻羅村の管内、菩提樹の下、金剛宝石の座の上で、無上の正しい悟りを成就なさった。これは無明がもともと空であることを示す姿である。末が本に通じているから、八相の教化の姿はことごとく法身の妙なる徳である。本は末と異ならないから、今日の泥や木や鋳物や絵の仏像も、三身を完全に備えて欠けることがないのである。

解説

三宝のうち仏宝の尊さを、釈尊の生涯に沿って説く。衆生の福縁が熟した時に法身が姿を現し、迦毘羅衛に生まれ、十九歳で王子の位を捨てて出家し、三十歳で菩提樹下に成道した。出家は五欲に実体のないことを、成道は無明がもとより空であることを示す姿だと尊者は読む。年齢は尊者の依った伝えによる。八相とは降誕から涅槃までの八つの節目である。泥や木の仏像にも三身が欠けずに備わるという結びは、形あるものを通して本を敬う心を教えている。

この章句が説くこと

仏宝出家五欲無明法身三身

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