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十善法語 / 巻第二・不偸盜戒

在家ニ在テハ在家ヲ利益ス。國治リ家齊フ。出家ニ在テハ出家ヲ利益ス。生死解脫ノ要路シヤ。諸ノ禪定モ此ヨリ生スル。達摩多羅禪經ニ。尸羅旣ニ清淨ナレハ。三昧中ニ於テ現ストアル。三十二相モ此ヨリ生スル。薩遮經ニ三十二相差別ノ因ナシ。持戒ヲ以テ基本トストアル。三身ノ妙果モ是ヨリ生スル。羯磨疏ニ。攝律儀戒ニ因テ法身ヲ得ス。攝善法戒ニ因テ報身ヲ得ス。饒益有情戒ニ因テ應身ヲ得ストアル。塵却久遠成道ノ如來ハ不殺生戒ノ顯ルル處シヤ。福德莊嚴ノ寶勝如來ハ不偸盜戒ノ顯ルル處シヤ。得自性清淨法性如來ハ不邪婬戒ノ顯ルル處シヤ。傳戒相承ノ義如是。

新字:在家ニ在テハ在家ヲ利益ス。国治リ家斉フ。出家ニ在テハ出家ヲ利益ス。生死解脱ノ要路シヤ。諸ノ禅定モ此ヨリ生スル。達摩多羅禅経ニ。尸羅既ニ清浄ナレハ。三昧中ニ於テ現ストアル。三十二相モ此ヨリ生スル。薩遮経ニ三十二相差別ノ因ナシ。持戒ヲ以テ基本トストアル。三身ノ妙果モ是ヨリ生スル。羯磨疏ニ。摂律儀戒ニ因テ法身ヲ得ス。摂善法戒ニ因テ報身ヲ得ス。饒益有情戒ニ因テ応身ヲ得ストアル。塵却久遠成道ノ如来ハ不殺生戒ノ顕ルル処シヤ。福徳荘厳ノ宝勝如来ハ不偸盗戒ノ顕ルル処シヤ。得自性清浄法性如来ハ不邪婬戒ノ顕ルル処シヤ。伝戒相承ノ義如是。

書き下し

在家ニ在テハ在家ヲ利益ス。国治リ家斉フ。出家ニ在テハ出家ヲ利益ス。生死解脱ノ要路シヤ。諸ノ禅定モ此ヨリ生スル。達摩多羅禅経ニ。尸羅既ニ清浄ナレハ。三昧中ニ於テ現ストアル。三十二相モ此ヨリ生スル。薩遮経ニ三十二相差別ノ因ナシ。持戒ヲ以テ基本トストアル。三身ノ妙果モ是ヨリ生スル。羯磨疏ニ。摂律儀戒ニ因テ法身ヲ得ス。摂善法戒ニ因テ報身ヲ得ス。饒益有情戒ニ因テ応身ヲ得ストアル。塵却久遠成道ノ如来ハ不殺生戒ノ顕ルル処シヤ。福徳荘厳ノ宝勝如来ハ不偸盗戒ノ顕ルル処シヤ。得自性清浄法性如来ハ不邪婬戒ノ顕ルル処シヤ。伝戒相承ノ義如是。

現代語訳

在家にあっては在家を利益する。国が治まり家が整う。出家にあっては出家を利益する。生死を解脱する要の道である。諸々の禅定もこれから生じる。達摩多羅禅経に、「尸羅(戒)がすでに清浄であれば、三昧の中に現れる」とある。三十二相もこれから生じる。薩遮経に、「三十二相には個別の因はない。持戒をもって基本とする」とある。三身の妙なる果もこれから生じる。羯磨疏に、「摂律儀戒によって法身を得る。摂善法戒によって報身を得る。饒益有情戒によって応身を得る」とある。塵点久遠劫に成道した如来は、不殺生戒の顕れる所である。福徳荘厳の宝勝如来は、不偸盗戒の顕れる所である。自性清浄を得た法性如来は、不邪婬戒の顕れる所である。伝戒相承の意義はこのようである。

解説

十善は在家には治国斉家を、出家には解脱への要路をもたらし、禅定も仏の三十二相も、法身・報身・応身の三身も、すべて戒から生じると経論を引いて示す。三つの浄戒と三身の対応は、悪を止める戒、善を行う戒、人々を利する戒という三つの柱が、仏の三つのあり方に結びつくという考え方である。久遠の如来を不殺生戒の現れ、宝勝如来を不偸盗戒の現れと見るのは、尊者の伝えた戒の相承に基づく解釈として紹介されている。何事も土台は戒だという一貫した主張である。

この章句が説くこと

持戒禅定三身三聚浄戒如来相承

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