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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此天地位定レハ。南面シテ右ヲ西トス。左ヲ東トス。後ヲ北トス。東隣ノ西ハ此家ノ東トナリ。此家ノ西ハ西隣ノ東トナル。經ノ中ニ須彌ノ四洲共ニ日ノ出ル處ヲ東方ト定ムルトアル。西瞿耶尼洲ノ東ハ瞻部ノ西。拘盧洲ノ東ハ瞿耶尼ノ西トアル。常見ノ起サレヌ場處シヤ。法如是ナレハ。此四方四維ハ定カナラヌカト云ニ。斯ク四方定レハ主方神有テ守ル。此神靈ソノ性善アリ惡アリ。世人善神ノ方ニ向テ其福ヲ得ル。惡神ノ方ニ向テソノ禍ヲ得ル。磁石ノ針ハ。何ノ處ニ在テモ北ニ向フ。斷見ノ起サレヌ場處シヤ。

新字:此天地位定レハ。南面シテ右ヲ西トス。左ヲ東トス。後ヲ北トス。東隣ノ西ハ此家ノ東トナリ。此家ノ西ハ西隣ノ東トナル。経ノ中ニ須弥ノ四洲共ニ日ノ出ル処ヲ東方ト定ムルトアル。西瞿耶尼洲ノ東ハ瞻部ノ西。拘盧洲ノ東ハ瞿耶尼ノ西トアル。常見ノ起サレヌ場処シヤ。法如是ナレハ。此四方四維ハ定カナラヌカト云ニ。斯ク四方定レハ主方神有テ守ル。此神霊ソノ性善アリ悪アリ。世人善神ノ方ニ向テ其福ヲ得ル。悪神ノ方ニ向テソノ禍ヲ得ル。磁石ノ針ハ。何ノ処ニ在テモ北ニ向フ。断見ノ起サレヌ場処シヤ。

書き下し

此天地位定レハ。南面シテ右ヲ西トス。左ヲ東トス。後ヲ北トス。東隣ノ西ハ此家ノ東トナリ。此家ノ西ハ西隣ノ東トナル。経ノ中ニ須弥ノ四洲共ニ日ノ出ル処ヲ東方ト定ムルトアル。西瞿耶尼洲ノ東ハ瞻部ノ西。拘盧洲ノ東ハ瞿耶尼ノ西トアル。常見ノ起サレヌ場処シヤ。法如是ナレハ。此四方四維ハ定カナラヌカト云ニ。斯ク四方定レハ主方神有テ守ル。此神霊ソノ性善アリ悪アリ。世人善神ノ方ニ向テ其福ヲ得ル。悪神ノ方ニ向テソノ禍ヲ得ル。磁石ノ針ハ。何ノ処ニ在テモ北ニ向フ。断見ノ起サレヌ場処シヤ。

現代語訳

この天地の位が定まれば、南に向いて右を西とし、左を東とし、後ろを北とする。東隣の西はこの家の東となり、この家の西は西隣の東となる。経の中に、須弥山の四つの大陸では、いずれも日の出る所を東方と定める、とある。西の瞿耶尼洲の東は瞻部洲の西であり、北の拘盧洲の東は瞿耶尼洲の西である、とある。常見を起こせない所である。法がこのようであるなら、この四方と四隅は定まらないのか、と言うと、このように四方が定まれば、方角を司る神がいて守る。この神霊には、その性に善もあり悪もある。世の人は善神の方角に向かってその福を得、悪神の方角に向かってその禍を得る。磁石の針は、どこにあっても北に向かう。断見を起こせない所である。

解説

方角という身近な例で断常を超える見方を示す。東隣の西はこの家の東であり、仏教の須弥山世界でも、どの大陸も日の出る方を東とする。方角は立つ位置で変わるから、固定した東西があるという常見は起こせない。しかし方角は定まればその神が守り、磁石の針はどこでも北を指すから、方角など無いという断見も起こせない。方位の吉凶は当時の信仰として説かれている。立場によって見え方は変わるが、変わらぬ基準もある。交渉や調整の場で思い出したい見方である。

この章句が説くこと

断常方角常見断見須弥山

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