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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此念相ト相對シテ。暫クモ止コトナキ目前ノ境界ヲ思惟シテ看ヨ。春カ夏ニナリ。夏カ秋ニナリ。秋カ冬ニナリ。又春ニ回ル。春カ夏ニ移レトモ。此夏ハ必ス春ニ相似シテ。次第ニ遷リカハリ來ル。夏カ秋ニ移レトモ。此秋ハ必ス此夏ニ相似シテ。次第ニ遷リカハリ來ル。秋カ冬ニ遷レトモ。此冬ハ必ス此秋ニ相似シテ。次第ニ移リカハリ來ル。此冬カ又次ノ春ニ移リテ。今年ハ去年ナラネトモ。此今年ハ必ス去年ニ相似シテ遷リカハリ來ル。此中常見ヲ起スハ起ス者ノ迷シヤ。斷見ヲ起スハ起ス者ノ迷シヤ。諸草木モ花カ生シテハ實ノリ。實カ落テハ又花ヲ催ス。一ツ花カツホミサキソメテ早ウツロフ。此ハ常見ノ起サレヌ姿シヤ。今春ノ花ハ必ス去年ノ芳ニ相似シテ咲ク。此ハ斷見ノ起サレヌ姿シヤ。

新字:此念相ト相対シテ。暫クモ止コトナキ目前ノ境界ヲ思惟シテ看ヨ。春カ夏ニナリ。夏カ秋ニナリ。秋カ冬ニナリ。又春ニ回ル。春カ夏ニ移レトモ。此夏ハ必ス春ニ相似シテ。次第ニ遷リカハリ来ル。夏カ秋ニ移レトモ。此秋ハ必ス此夏ニ相似シテ。次第ニ遷リカハリ来ル。秋カ冬ニ遷レトモ。此冬ハ必ス此秋ニ相似シテ。次第ニ移リカハリ来ル。此冬カ又次ノ春ニ移リテ。今年ハ去年ナラネトモ。此今年ハ必ス去年ニ相似シテ遷リカハリ来ル。此中常見ヲ起スハ起ス者ノ迷シヤ。断見ヲ起スハ起ス者ノ迷シヤ。諸草木モ花カ生シテハ実ノリ。実カ落テハ又花ヲ催ス。一ツ花カツホミサキソメテ早ウツロフ。此ハ常見ノ起サレヌ姿シヤ。今春ノ花ハ必ス去年ノ芳ニ相似シテ咲ク。此ハ断見ノ起サレヌ姿シヤ。

書き下し

此念相ト相対シテ。暫クモ止コトナキ目前ノ境界ヲ思惟シテ看ヨ。春カ夏ニナリ。夏カ秋ニナリ。秋カ冬ニナリ。又春ニ回ル。春カ夏ニ移レトモ。此夏ハ必ス春ニ相似シテ。次第ニ遷リカハリ来ル。夏カ秋ニ移レトモ。此秋ハ必ス此夏ニ相似シテ。次第ニ遷リカハリ来ル。秋カ冬ニ遷レトモ。此冬ハ必ス此秋ニ相似シテ。次第ニ移リカハリ来ル。此冬カ又次ノ春ニ移リテ。今年ハ去年ナラネトモ。此今年ハ必ス去年ニ相似シテ遷リカハリ来ル。此中常見ヲ起スハ起ス者ノ迷シヤ。断見ヲ起スハ起ス者ノ迷シヤ。諸草木モ花カ生シテハ実ノリ。実カ落テハ又花ヲ催ス。一ツ花カツホミサキソメテ早ウツロフ。此ハ常見ノ起サレヌ姿シヤ。今春ノ花ハ必ス去年ノ芳ニ相似シテ咲ク。此ハ断見ノ起サレヌ姿シヤ。

現代語訳

この念のありさまと向き合って、しばらくも止むことのない目の前の境界を思いめぐらしてみなさい。春が夏になり、夏が秋になり、秋が冬になり、また春に回る。春が夏に移っても、この夏は必ず春に似て、次第に移り変わってくる。夏が秋に移っても、この秋は必ずこの夏に似て、次第に移り変わってくる。秋が冬に移っても、この冬は必ずこの秋に似て、次第に移り変わってくる。この冬がまた次の春に移って、今年は去年ではないけれども、この今年は必ず去年に似て移り変わってくる。ここで常見を起こすのは、起こす者の迷いである。断見を起こすのは、起こす者の迷いである。諸々の草木も、花が咲いては実り、実が落ちてはまた花を催す。一つの花が、蕾がほころび咲き始めたかと思えば、早くも散っていく。これは常見を起こせない姿である。今年の春の花は、必ず去年の香りに似て咲く。これは断見を起こせない姿である。

解説

心の中の念の相続を、今度は外の四季と草木で確かめさせる。季節は移るが、次の季節は前に似て移り、今年は去年ではないが去年に似る。花は咲いたと思えば散るから、変わらぬものがあるという常見は起こせない。だが今年の花は去年の香りに似て咲くから、すべて途絶えるという断見も起こせない。移ろいと続きを同時に見る目が、断常二見を超える。毎年同じようでいて同じでない仕事の繰り返しにも、この目で向き合うことができる。
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この章句が説くこと

断常常見断見無常四季

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