十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下
一切ノ味ハ。舌ニ對シテ其麁細ヲ顯ス。舌根ハ味ヲ得テ其力用アル。此業有テ舌根鈍ナル。此業有テ舌根利ナル。迦旃延尊者ノ輪王所食ノ味ヲ知モ。無トハ云ハレヌ。此味舌根ヲ助ケテ。明利更ニ增長スル。此舌根神靈ノ顯ルル處。法性ノ顯ルル處シヤ。法華ノ中ニ其有所食瞰悉皆成甘露ト云モ。其時節アルコトソ。一切ノ觸境ハ。身ニ對シテ其輕重ヲ顯ス。身根ハ觸ヲ得テ其力用アル。此業有テ身麁獵ナル。此業有テ身柔輕ナル。明利ナル。無滅王子ノ賢王所坐ノ褥ヲ撫シテ。ソノ織師熱病アルトキノ織成ナルヲ知ルモ。無トハ云レヌ。此觸身根ヲ助テ。明利更ニ增長スル。此身根。神靈ノ顯ルル處。法性ノ顯ルル處シヤ。法華經ノ中ニ如是諸色像皆於身中現スト云モ。其時節有コトソ。
新字:一切ノ味ハ。舌ニ対シテ其麁細ヲ顕ス。舌根ハ味ヲ得テ其力用アル。此業有テ舌根鈍ナル。此業有テ舌根利ナル。迦旃延尊者ノ輪王所食ノ味ヲ知モ。無トハ云ハレヌ。此味舌根ヲ助ケテ。明利更ニ增長スル。此舌根神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華ノ中ニ其有所食瞰悉皆成甘露ト云モ。其時節アルコトソ。一切ノ触境ハ。身ニ対シテ其軽重ヲ顕ス。身根ハ触ヲ得テ其力用アル。此業有テ身麁猟ナル。此業有テ身柔軽ナル。明利ナル。無滅王子ノ賢王所坐ノ褥ヲ撫シテ。ソノ織師熱病アルトキノ織成ナルヲ知ルモ。無トハ云レヌ。此触身根ヲ助テ。明利更ニ增長スル。此身根。神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華経ノ中ニ如是諸色像皆於身中現スト云モ。其時節有コトソ。
書き下し
一切ノ味ハ。舌ニ対シテ其麁細ヲ顕ス。舌根ハ味ヲ得テ其力用アル。此業有テ舌根鈍ナル。此業有テ舌根利ナル。迦旃延尊者ノ輪王所食ノ味ヲ知モ。無トハ云ハレヌ。此味舌根ヲ助ケテ。明利更ニ增長スル。此舌根神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華ノ中ニ其有所食瞰悉皆成甘露ト云モ。其時節アルコトソ。一切ノ触境ハ。身ニ対シテ其軽重ヲ顕ス。身根ハ触ヲ得テ其力用アル。此業有テ身麁猟ナル。此業有テ身柔軽ナル。明利ナル。無滅王子ノ賢王所坐ノ褥ヲ撫シテ。ソノ織師熱病アルトキノ織成ナルヲ知ルモ。無トハ云レヌ。此触身根ヲ助テ。明利更ニ增長スル。此身根。神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華経ノ中ニ如是諸色像皆於身中現スト云モ。其時節有コトソ。
現代語訳
一切の味は、舌に向かってその粗い細かいを現す。舌根は味を得てその働きがある。ある業があって舌根が鈍い。ある業があって舌根が鋭い。迦旃延尊者が転輪王の食べる味を知ったというのも、無いとは言えない。この味が舌根を助けて、明らかさと鋭さはさらに増す。この舌根は神霊の現れる所、法性の現れる所である。法華経の中に、その食べるものはことごとくみな甘露となる、と言うのも、その時があることである。一切の触れる対象は、身に向かってその軽い重いを現す。身根は触れるものを得てその働きがある。ある業があって身が粗く荒々しい。ある業があって身が柔らかく軽く、明らかで鋭い。無滅王子が賢王の座る敷物をなでて、その織り手が熱病にかかっていた時に織ったものであることを知ったというのも、無いとは言えない。この触れるものが身根を助けて、明らかさと鋭さはさらに増す。この身根は神霊の現れる所、法性の現れる所である。法華経の中に、このような諸々の色や像がみな身の中に現れる、と言うのも、その時があることである。
解説
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『十善法語』巻第十二・不邪見戒之下一切ノ声ハ耳ニ対シテ其音響カアル。耳根ハ声ヲ得テ其力用アル。此業有テ聾者トナル。声韻律呂。此人ノ為ニハ亀毛兎角ノ如シヤ。此業有テ聰ヲ得ル。師曠カ如キモ無トハ云レヌ。声韻ノ律呂屈曲。此人ノ為ニハ治乱分明シヤ。コノ声耳根ヲ助テ。聰更ニ增長スル。此耳神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華経ノ中ニ以此常耳聞三千世界声ト云モ。其時節ノ有コトソ。一切ノ香ハ鼻根ニ対シテ其薫猶ヲ顕ハス。鼻根ハ香ヲ得テ其力用アル。此業有テ鼻根鈍濁ナル。此業有テ鼻根明利ナル。迦留陀夷尊者カ青蓮花香ヲ嗅得テ。輪王ノ七宝ミナ優波羅大尼ノ変化ナルコトヲ知ルモ。無トハ云レヌ。此香鼻根ヲ助テ明利更ニ增長スル。此鼻根神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華経ノ中ニ入禅出禅者聞香亦能知ト云モ。其時節ノアルコトソ。
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『十善法語』巻第十二・不邪見戒之下此眼アレハ色カ分ルル。全ク不邪見戒ノ姿シヤ。此耳アレハ声カ分ルル。全ク不邪見戒ノ姿シヤ。此鼻アレハ香カ分ルル。此舌アレハ味カ分ルル。此身アレハ触カワカルル。此意アレハ善悪邪正是非得失ヲ知ル。全ク不邪見戒ノ姿シヤ。此等ノ事ヲ具ニ憶念セヨ。聖道ヲ得ル基本シヤ。一切ノ色ハ眼ニ対シテ其光彩ヲアラハス。眼根ハ色ヲ得テ其力用アル。此業有テ生盲トナル。色ノ光彩。コノ人ノ為ニハ亀毛兎角ノ如シヤ。此業有テ明目ヲ得ル。離婁カ如キモ世世其人アルシヤ。色ノ光彩。此人ノ為ニハ麁細分明シヤ。此色眼ヲ助テ。此明更ニ增上スル。此眼神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ハルル処シヤ。法華経ノ中ニ父母所生ノ眼悉見三千界ト云モ。其時節ノ有コトソ。
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『十善法語』巻第七・不兩舌戒舌ニ五味ヲ嘗ル。内外ハ何処ニ安布ス。自他ハ何ノ処ニ安布ス。好悪ハ何ノ処ニ安排布置スル。此内外ヲ見テ仏性ヲ知ル。此自他ヲ見テ仏性ヲ知ル。此好悪ノ相ヲ見テ明ニ仏性ニ達スル。味境ト舌根ト。一異ノ相ナク。凡聖ノ相ナク。迷悟ノ相ナク。言説ノ相ナク。心念ノ相ナイ。此ヲ不両舌戒ノ性ト名ツクルシヤ。身ニ触ヲ覚スル。内外ハ何処ニ安布ス。自他ハ何ノ処ニ安布ス。好悪ハ何ノ処ニ安排布置スル。此内外ヲ見テ仏性ヲ知ル。自他ヲ見テ仏性ヲ知ル。好悪ノ相ヲ見テ明ニ仏性ニ達スル。触境ト身根ト。一異ノ相ナク。凡聖ノ相ナク。迷悟ノ相ナク。言説ノ相ナク。心念ノ相ナイ。此ヲ不両舌戒ノ性ト名ツクル。意ニ法ヲ分別スル。内外ハ何ノ処ニ安排スル。自他ハ何ノ処ニ安布ス。善悪邪正是非得失ハ何ノ処ニ安排布置スル。此内外ヲ見テ仏性ヲ知ル。此自他ヲ見テ仏性ヲ知ル。此善悪邪正是非得失ノ相ヲ見テ明ニ仏性ニ達スル。一切ノ善悪邪正。是非得失ト意根ト。一異ノ相ナク。凡聖ノ相ナク。迷悟ノ相ナク。言説ノ相ナク。心念ノ相ナイ。此ヲ不両舌戒ノ性ト名ツクルシヤ。
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『十善法語』巻第十二・不邪見戒之下一切ノ善悪邪正是非得失ハ。意ニ対シテ其義理ヲ顕ス。意根ハ諸法ニ対シテ其力用アル。此業有テ意根鈍濁ナル。天ヨリ得ルニ非ス。地ヨリ得ルニ非ス。天地斉ク覆載シテ。此人人類ニ非ス。父母ヨリ得ルニ非ス。聖智ノ父母其子ニ譲ルコトアタハス。偶然トシテカクアルニ非ス。自然法爾トシテカクアルニ非ス。習学モ養育モ其成立ヲ期スヘカラス。唯業力誘ヒ来テ菽麦ヲモ弁セヌ。一切義趣此人ノ為ニハ亀毛兎角ノ如シヤ。此業有テ意根明利ナル。天ヨリ得ルニ非ス。地ヨリ得ルニ非ス。天地斉ク覆載シテ。此人億兆ノ君師トナル。父母ヨリ得ルニ非ス。頑麗ノ父其子ヲ移スコトアタハス。偶然トシテカクアルニ非ス。自然法爾トシテカクアルニ非ス。唯業力装飾シテ。一ヲ聞テ十ヲ知ル。一度憶スレハ終身忘レヌ。此義理意根ヲ助テ。明利更ニ增長スル。此意根神霊ノ顕ルル処。法性ノ顕ルル処シヤ。法華ノ中ニ俗間経書治世語言治生業等皆順正法ト云モ。其時節アルコトソ。
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