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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此ヲ近事ニ喩ヘハ。詩歌ヲ慣習スル者ハ多ク詩的興歌情生スル。計略ヲ慣習スル者ハ多ク計略ニ長スル。伎藝ヲ慣習スル者ハ多ク伎藝ニ妙ヲ得ル如シ。具ニ擴シテ充テ憶念セヨ。法相ノ五性各別ト云モ。此慣習ヨリ生シテ。無量時其性ヲ成スルコトソ。此等ノ事ヲ能憶念スルモノハ聖道ヲ得ル基トナル。今時ノ者ハ此心ノ斯ニ在リ。此道ノ斯ニ在コトヲ思ハヌ。人事ニ顯レテ隱レヌコトヲ思ハヌ。古今ニ貫テ明了ナルコトヲ思ハヌ。唯妄想ヲ逞クシテ兎角ニ迷フ。

新字:此ヲ近事ニ喩ヘハ。詩歌ヲ慣習スル者ハ多ク詩的興歌情生スル。計略ヲ慣習スル者ハ多ク計略ニ長スル。伎芸ヲ慣習スル者ハ多ク伎芸ニ妙ヲ得ル如シ。具ニ擴シテ充テ憶念セヨ。法相ノ五性各別ト云モ。此慣習ヨリ生シテ。無量時其性ヲ成スルコトソ。此等ノ事ヲ能憶念スルモノハ聖道ヲ得ル基トナル。今時ノ者ハ此心ノ斯ニ在リ。此道ノ斯ニ在コトヲ思ハヌ。人事ニ顕レテ隠レヌコトヲ思ハヌ。古今ニ貫テ明了ナルコトヲ思ハヌ。唯妄想ヲ逞クシテ兎角ニ迷フ。

書き下し

此ヲ近事ニ喩ヘハ。詩歌ヲ慣習スル者ハ多ク詩的興歌情生スル。計略ヲ慣習スル者ハ多ク計略ニ長スル。伎芸ヲ慣習スル者ハ多ク伎芸ニ妙ヲ得ル如シ。具ニ擴シテ充テ憶念セヨ。法相ノ五性各別ト云モ。此慣習ヨリ生シテ。無量時其性ヲ成スルコトソ。此等ノ事ヲ能憶念スルモノハ聖道ヲ得ル基トナル。今時ノ者ハ此心ノ斯ニ在リ。此道ノ斯ニ在コトヲ思ハヌ。人事ニ顕レテ隠レヌコトヲ思ハヌ。古今ニ貫テ明了ナルコトヲ思ハヌ。唯妄想ヲ逞クシテ兎角ニ迷フ。

現代語訳

これを身近なことに喩えれば、詩歌に慣れ親しむ者は多く詩歌の興趣が生じる。計略に慣れ親しむ者は多く計略に長ける。技芸に慣れ親しむ者は多く技芸に巧みさを得るようなものである。詳しく押し広げて思いめぐらしなさい。法相宗で五性各別というのも、この慣れ親しみから生じて、限りない時をかけてその性を成すことである。これらのことをよく思いめぐらす者は、聖なる道を得る基となる。今時の者は、この心がここにあり、この道がここにあることを思わない。人の営みに現れて隠れないことを思わない。古今を貫いて明らかであることを思わない。ただ妄想をたくましくして、とかく迷うのである。

解説

詩歌を習う者には詩心が、計略を習う者には謀が、技芸を習う者には巧みさが育つ。身近な例で慣習の力を示し、さらに法相宗の五性各別の説にまで広げる。五性各別とは、衆生には悟りに至る素質の違う五種があるという説で、尊者はそれも限りない時間の慣習から成ったものだと解する。素質は固定したものではなく、習いの積み重ねだという見方である。何に慣れ親しむかを選ぶことが、自分の性を選ぶことになる。学びや仕事の環境選びに通じる。

この章句が説くこと

慣習五性各別法相宗妄想

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