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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

今日ノ念ハ昨日ノ念ナラネトモ。必ス昨日ノ念ニ似テ現スル。今月ノ念ハ去月ノ念ナラネトモ。必ス去月ノ念ニ似テ現スル。今年ノ念ハ昨年ノ念ナラネトモ。必ス去年ノ念ニ似テ現スル。今生ノ念ハ過去世ノ念ナラネトモ。必ス過去世ノ念ニ似テ現スル。未來生ノ念ハ今生ノ念ナラネトモ。必ス今生ノ念ニ似テ現スル。三世ニ推通シテ誰主ト云コトナク。境ニ對シテ生シテ念念ニ代謝スル。代謝シテ跡ナキカト思ヘハ慣習ノ境ニ因テ增上スル。瞋恚ヲ慣習スル者ハ多ク瞋恚ノ念生スル。此ヲ習テ止ネハ終ニ殘忍暴惡ノ衆生ト成ル。愛欲ヲ慣習スル者ハ多ク愛欲ノ念生スル。此ヲ習テ止ネハ終ニ柔弱多婬ノ衆生トナル。

新字:今日ノ念ハ昨日ノ念ナラネトモ。必ス昨日ノ念ニ似テ現スル。今月ノ念ハ去月ノ念ナラネトモ。必ス去月ノ念ニ似テ現スル。今年ノ念ハ昨年ノ念ナラネトモ。必ス去年ノ念ニ似テ現スル。今生ノ念ハ過去世ノ念ナラネトモ。必ス過去世ノ念ニ似テ現スル。未来生ノ念ハ今生ノ念ナラネトモ。必ス今生ノ念ニ似テ現スル。三世ニ推通シテ誰主ト云コトナク。境ニ対シテ生シテ念念ニ代謝スル。代謝シテ跡ナキカト思ヘハ慣習ノ境ニ因テ增上スル。瞋恚ヲ慣習スル者ハ多ク瞋恚ノ念生スル。此ヲ習テ止ネハ終ニ残忍暴悪ノ衆生ト成ル。愛欲ヲ慣習スル者ハ多ク愛欲ノ念生スル。此ヲ習テ止ネハ終ニ柔弱多婬ノ衆生トナル。

書き下し

今日ノ念ハ昨日ノ念ナラネトモ。必ス昨日ノ念ニ似テ現スル。今月ノ念ハ去月ノ念ナラネトモ。必ス去月ノ念ニ似テ現スル。今年ノ念ハ昨年ノ念ナラネトモ。必ス去年ノ念ニ似テ現スル。今生ノ念ハ過去世ノ念ナラネトモ。必ス過去世ノ念ニ似テ現スル。未来生ノ念ハ今生ノ念ナラネトモ。必ス今生ノ念ニ似テ現スル。三世ニ推通シテ誰主ト云コトナク。境ニ対シテ生シテ念念ニ代謝スル。代謝シテ跡ナキカト思ヘハ慣習ノ境ニ因テ增上スル。瞋恚ヲ慣習スル者ハ多ク瞋恚ノ念生スル。此ヲ習テ止ネハ終ニ残忍暴悪ノ衆生ト成ル。愛欲ヲ慣習スル者ハ多ク愛欲ノ念生スル。此ヲ習テ止ネハ終ニ柔弱多婬ノ衆生トナル。

現代語訳

今日の念は昨日の念ではないけれども、必ず昨日の念に似て現れる。今月の念は先月の念ではないけれども、必ず先月の念に似て現れる。今年の念は昨年の念ではないけれども、必ず昨年の念に似て現れる。今生の念は過去世の念ではないけれども、必ず過去世の念に似て現れる。来世の念は今生の念ではないけれども、必ず今生の念に似て現れる。三世に押し通して、誰が主ということもなく、対象に向かって生じて、一瞬ごとに入れ替わる。入れ替わって跡がないかと思えば、慣れ親しんだ対象によって増していく。怒りに慣れ親しむ者は、多く怒りの念が生じる。これを習って止めなければ、ついには残忍で乱暴な衆生となる。愛欲に慣れ親しむ者は、多く愛欲の念が生じる。これを習って止めなければ、ついには柔弱で淫らな衆生となる。

解説

念は昨日から今日へ、今生から来世へと、別物でありながら必ず前に似て現れる。主体と呼べるものはないが、慣れ親しんだものは増していく。怒りを繰り返す者は怒りの念が増え、ついに残忍な者になる。愛欲を繰り返す者は愛欲に流される者になる。瞋恚と貪欲という十善の後半の戒が、ここで心の習慣の問題として示される。性格は生まれつき固定したものではなく、繰り返しによって育つ。どんな感情を日々繰り返しているかが、数年後の自分を決めるのである。

この章句が説くこと

慣習瞋恚愛欲三世

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