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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

生レ出シ初ヲ知レハ死ノ終ヲ知ル。死ノ終ニ明カナレハ死後ノ去處ニ達スル。今日カク有ルコトヲ知レハ過去ノ業相ヲ知ル。今生ノ身心ヲ詳ニスレハ當來ノ苦樂ヲ知ル。解脫涅槃ハ今日ノ解脫涅槃。過去ヨリノ解脫涅槃シヤ。當來ヲ待テ解脫スルニ非ス。生死流轉ハ今日ノ生死流轉。盡未來際ノ生死流轉シヤ。過去世業相ニアツケ置クヘキコトテハナキシヤ。自ラ省察シテ看ヨ。此身ハ皆人ノ知ルトコロ。父母肉血ノ餘分シヤ。肉血ハ何ノ處ヨリ生スルソ。肉血ハ肉血ヨリ生シテ。水穀ノ聚リナレル處シヤ。生レ出シ時ハ何ナル心ソ。飢レハ啼寒ケレハ啼ク。乳ヲ口ニヨスレハ吸フ。父母ヲモ知ラヌ。コノ何事ナキ處ニ。宿福ノ者ハハヤ眼中ニ其英氣顯ハル。此般ノコトモヨク思惟スルモノハ。聖智見ヲ得ル基トナル。

新字:生レ出シ初ヲ知レハ死ノ終ヲ知ル。死ノ終ニ明カナレハ死後ノ去処ニ達スル。今日カク有ルコトヲ知レハ過去ノ業相ヲ知ル。今生ノ身心ヲ詳ニスレハ当来ノ苦楽ヲ知ル。解脱涅槃ハ今日ノ解脱涅槃。過去ヨリノ解脱涅槃シヤ。当来ヲ待テ解脱スルニ非ス。生死流転ハ今日ノ生死流転。尽未来際ノ生死流転シヤ。過去世業相ニアツケ置クヘキコトテハナキシヤ。自ラ省察シテ看ヨ。此身ハ皆人ノ知ルトコロ。父母肉血ノ余分シヤ。肉血ハ何ノ処ヨリ生スルソ。肉血ハ肉血ヨリ生シテ。水穀ノ聚リナレル処シヤ。生レ出シ時ハ何ナル心ソ。飢レハ啼寒ケレハ啼ク。乳ヲ口ニヨスレハ吸フ。父母ヲモ知ラヌ。コノ何事ナキ処ニ。宿福ノ者ハハヤ眼中ニ其英気顕ハル。此般ノコトモヨク思惟スルモノハ。聖智見ヲ得ル基トナル。

書き下し

生レ出シ初ヲ知レハ死ノ終ヲ知ル。死ノ終ニ明カナレハ死後ノ去処ニ達スル。今日カク有ルコトヲ知レハ過去ノ業相ヲ知ル。今生ノ身心ヲ詳ニスレハ当来ノ苦楽ヲ知ル。解脱涅槃ハ今日ノ解脱涅槃。過去ヨリノ解脱涅槃シヤ。当来ヲ待テ解脱スルニ非ス。生死流転ハ今日ノ生死流転。尽未来際ノ生死流転シヤ。過去世業相ニアツケ置クヘキコトテハナキシヤ。自ラ省察シテ看ヨ。此身ハ皆人ノ知ルトコロ。父母肉血ノ余分シヤ。肉血ハ何ノ処ヨリ生スルソ。肉血ハ肉血ヨリ生シテ。水穀ノ聚リナレル処シヤ。生レ出シ時ハ何ナル心ソ。飢レハ啼寒ケレハ啼ク。乳ヲ口ニヨスレハ吸フ。父母ヲモ知ラヌ。コノ何事ナキ処ニ。宿福ノ者ハハヤ眼中ニ其英気顕ハル。此般ノコトモヨク思惟スルモノハ。聖智見ヲ得ル基トナル。

現代語訳

生まれ出た初めを知れば、死の終わりを知る。死の終わりに明らかであれば、死後の行き先に通じる。今日こうしてあることを知れば、過去の業のありさまを知る。今生の身と心をつまびらかにすれば、来世の苦楽を知る。解脱涅槃は、今日の解脱涅槃であり、過去からの解脱涅槃である。来世を待って解脱するのではない。生死の流転は、今日の生死の流転であり、未来の果てまでの生死の流転である。過去世の業のありさまに預けておくべきことではないのである。自ら省みて見なさい。この身は誰もが知るように、父母の肉と血の余りである。肉と血はどこから生じるのか。肉と血は肉と血から生じて、水と穀物が集まってできた所である。生まれ出た時はどのような心か。飢えれば泣き、寒ければ泣く。乳を口に寄せれば吸う。父母をも知らない。この何事もない所に、前世の福のある者は、早くも眼の中にその英気が現れる。このようなこともよく思いめぐらす者は、聖なる智見を得る基となる。

解説

解脱も輪廻も、来世や過去世に預けておく話ではなく、今日のこととして起こっている、というのがこの段の核心である。生まれた初めを知れば死を知り、今の身心をつまびらかにすれば未来の苦楽を知る。そのうえで尊者は、生まれたばかりの赤子を見よと言う。泣いて乳を吸うだけの何事もない所に、すでに生まれ持ったものの違いが目に現れる。先のことも過去のことも、今日の自分の中に見える。いつか変わろうではなく、今日の行いを見つめ直す言葉である。

この章句が説くこと

解脱涅槃輪廻今日聖智見

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