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十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中

初託胎ノ姿ハ至テ微昧ナレトモ。此一生ノ苦樂昇沈。藝ノ巧拙。運ノ强弱。ミナ此處ニ具足スルシヤ。能能思惟スレハ面白キコトシヤ。胎內ノ五位。皆過去世ノ業相ノ通リニ成熟スル。十月滿シテ生レ出ル。父母モ何底ノ物カ生レ出ルコトヲ知ラス。其子モ何底ノ處ニ出ルコトヲ知ラス。唯業力裝飾シテ此一期ノ報身ヲ成スコトシヤ。此中少分ハ。其父母ノ善惡現緣ニ由テ。其子ノ相好智慧モ轉變シ。其母ノ行住坐臥。飯食衣服。志性作業ニ由テ。其子ノ身相ノ好惡康羸モ轉スヘキナレトモ。大抵ハ業相自カラ一定シテ此世ニ出生スルシヤ。

新字:初託胎ノ姿ハ至テ微昧ナレトモ。此一生ノ苦楽昇沈。芸ノ巧拙。運ノ強弱。ミナ此処ニ具足スルシヤ。能能思惟スレハ面白キコトシヤ。胎内ノ五位。皆過去世ノ業相ノ通リニ成熟スル。十月満シテ生レ出ル。父母モ何底ノ物カ生レ出ルコトヲ知ラス。其子モ何底ノ処ニ出ルコトヲ知ラス。唯業力装飾シテ此一期ノ報身ヲ成スコトシヤ。此中少分ハ。其父母ノ善悪現縁ニ由テ。其子ノ相好智慧モ転変シ。其母ノ行住坐臥。飯食衣服。志性作業ニ由テ。其子ノ身相ノ好悪康羸モ転スヘキナレトモ。大抵ハ業相自カラ一定シテ此世ニ出生スルシヤ。

書き下し

初託胎ノ姿ハ至テ微昧ナレトモ。此一生ノ苦楽昇沈。芸ノ巧拙。運ノ强弱。ミナ此処ニ具足スルシヤ。能能思惟スレハ面白キコトシヤ。胎内ノ五位。皆過去世ノ業相ノ通リニ成熟スル。十月満シテ生レ出ル。父母モ何底ノ物カ生レ出ルコトヲ知ラス。其子モ何底ノ処ニ出ルコトヲ知ラス。唯業力装飾シテ此一期ノ報身ヲ成スコトシヤ。此中少分ハ。其父母ノ善悪現縁ニ由テ。其子ノ相好智慧モ転変シ。其母ノ行住坐臥。飯食衣服。志性作業ニ由テ。其子ノ身相ノ好悪康羸モ転スヘキナレトモ。大抵ハ業相自カラ一定シテ此世ニ出生スルシヤ。

現代語訳

初めて胎に宿った姿は至ってかすかであるけれども、この一生の苦楽や浮き沈み、芸の巧拙、運の強弱が、みなここに備わっているのである。よくよく考えれば面白いことである。胎内の五つの段階は、みな過去世の業のありさまのとおりに成熟する。十か月が満ちて生まれ出る。父母もどんな者が生まれ出るのかを知らず、その子もどんな所に出るのかを知らない。ただ業の力が飾り整えて、この一生の報いの身を成すのである。この中で少しの部分は、その父母の善悪の現在の縁によって、その子の容貌や智慧も移り変わり、その母の立ち居振る舞い、飲食や衣服、志や行いによって、その子の身体の良し悪しや健やかさ弱さも変わるはずであるが、おおよそは業のありさまがおのずから定まって、この世に生まれ出るのである。

解説

受胎したばかりのかすかな姿の中に、一生の苦楽、芸の巧拙、運の強弱までがすでに備わっていると尊者は説く。胎内の成長も過去の業のとおりに進み、父母もどんな子が生まれるかを知らず、子もどこに生まれるかを知らず、業の力が飾り整えて一生の身を形づくる。ただし、父母の善悪の行いや母の日々の暮らし方、食事、心がけによって、子の容貌や智慧、健やかさも少しは変わるとして、今日の胎教に通じる考えも示している。定まったものと変えうるものの両方を見る姿勢は、生まれ持ったものと今からできることを区別して考える手がかりになる。

この章句が説くこと

託胎業力胎教宿業報身一生

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