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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此身心ハ何レノ處ヨリ來リ何レノ處ニ去ルソ。何ノ處ニ生シテ何ノ處ニ解脫スルソ。唯大聖世尊ノミ明了ナル處ニシテ。諸ノ賢聖ノ憶念修習スル處ソ。斯ニ一ノ疑ヲ生シテ決徹ノ場處ニ至ルヲ。大丈夫ト名ツクル。古人モ大疑ノモトニ大悟アリト云。此ニ心ヲ寄スルコトヲ知ラス。苦カ來レハ苦ニ惱サレテ。苦ノ來處ヲ知ラス。妄ニ免レンコトヲ思ヒ量テ。種種妄念ヲ長ス。世ヲ謗リ人ヲ咎テ常ニ安カラヌ。此者ヲ迷ノ凡夫ト名ツクルシヤ。

新字:此身心ハ何レノ処ヨリ来リ何レノ処ニ去ルソ。何ノ処ニ生シテ何ノ処ニ解脱スルソ。唯大聖世尊ノミ明了ナル処ニシテ。諸ノ賢聖ノ憶念修習スル処ソ。斯ニ一ノ疑ヲ生シテ決徹ノ場処ニ至ルヲ。大丈夫ト名ツクル。古人モ大疑ノモトニ大悟アリト云。此ニ心ヲ寄スルコトヲ知ラス。苦カ来レハ苦ニ悩サレテ。苦ノ来処ヲ知ラス。妄ニ免レンコトヲ思ヒ量テ。種種妄念ヲ長ス。世ヲ謗リ人ヲ咎テ常ニ安カラヌ。此者ヲ迷ノ凡夫ト名ツクルシヤ。

書き下し

此身心ハ何レノ処ヨリ来リ何レノ処ニ去ルソ。何ノ処ニ生シテ何ノ処ニ解脱スルソ。唯大聖世尊ノミ明了ナル処ニシテ。諸ノ賢聖ノ憶念修習スル処ソ。斯ニ一ノ疑ヲ生シテ決徹ノ場処ニ至ルヲ。大丈夫ト名ツクル。古人モ大疑ノモトニ大悟アリト云。此ニ心ヲ寄スルコトヲ知ラス。苦カ来レハ苦ニ悩サレテ。苦ノ来処ヲ知ラス。妄ニ免レンコトヲ思ヒ量テ。種種妄念ヲ長ス。世ヲ謗リ人ヲ咎テ常ニ安カラヌ。此者ヲ迷ノ凡夫ト名ツクルシヤ。

現代語訳

この身と心は、どこから来てどこへ去るのか。どこに生まれてどこで解き放たれるのか。ただ大聖世尊だけが明らかにしておられる所であり、多くの賢聖が思いめぐらし修め習う所である。ここに一つの疑いを起こして、とことん見極める所に至るのを大丈夫と名づける。古人も、大きな疑いのもとに大きな悟りがある、と言う。ここに心を寄せることを知らず、苦しみが来れば苦しみに悩まされて、苦しみの来る所を知らない。むやみに逃れようと思いはかって、様々な妄念を募らせる。世を謗り、人を咎めて、常に安らかでない。この者を迷いの凡夫と名づけるのである。

解説

身と心はどこから来てどこへ去るのか、という根本の問いを一つの疑いとして抱き、見極めに至る者を大丈夫と呼ぶ。大疑のもとに大悟ありは、禅門でよく言われる言葉である。反対に、苦が来るたびにその出どころを問わず、ただ逃れようとして妄念を増やし、世や人を責め続けるのが迷いの凡夫だという。問題が起きた時、原因を問わずに誰かのせいにしていないか。一つの問いを抱え続ける力が、状況を変える入口になることを教えている。

この章句が説くこと

大疑悟り凡夫妄念

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