十善法語 / 巻第六・不惡口戒
此迷ト云此悟ト云コト。物ノ表裏アル如ク。日ノ晝夜アル如ク。一佛性ノ中。假ニ分別シ說示スルノミシヤ。賢聖ハ一佛性ノ中ニ於テ。此世間常恒ニ清淨無爲シヤ。凡夫ハ一佛性ノ中ニ於テ。此世間常恒ニ煩惱無明シヤ。此煩惱無明ノ中。影ヲ逐テ止ヌ。業ニ隨テ流轉スル。一多ヲ建立スル。自他ヲ建立スル。捉ヘラレヌ影ヲ無理ニ捉ヘントスル。無常ニ常相ヲ拵ヘル。無我法中ニ我相ヲ計スル。一法中ニ心境ヲ分異スル。常住法中ニ三世轉變ヲミル。
新字:此迷ト云此悟ト云コト。物ノ表裏アル如ク。日ノ昼夜アル如ク。一仏性ノ中。仮ニ分別シ説示スルノミシヤ。賢聖ハ一仏性ノ中ニ於テ。此世間常恒ニ清浄無為シヤ。凡夫ハ一仏性ノ中ニ於テ。此世間常恒ニ煩悩無明シヤ。此煩悩無明ノ中。影ヲ逐テ止ヌ。業ニ随テ流転スル。一多ヲ建立スル。自他ヲ建立スル。捉ヘラレヌ影ヲ無理ニ捉ヘントスル。無常ニ常相ヲ拵ヘル。無我法中ニ我相ヲ計スル。一法中ニ心境ヲ分異スル。常住法中ニ三世転変ヲミル。
書き下し
此迷ト云此悟ト云コト。物ノ表裏アル如ク。日ノ昼夜アル如ク。一仏性ノ中。仮ニ分別シ説示スルノミシヤ。賢聖ハ一仏性ノ中ニ於テ。此世間常恒ニ清浄無為シヤ。凡夫ハ一仏性ノ中ニ於テ。此世間常恒ニ煩悩無明シヤ。此煩悩無明ノ中。影ヲ逐テ止ヌ。業ニ随テ流転スル。一多ヲ建立スル。自他ヲ建立スル。捉ヘラレヌ影ヲ無理ニ捉ヘントスル。無常ニ常相ヲ拵ヘル。無我法中ニ我相ヲ計スル。一法中ニ心境ヲ分異スル。常住法中ニ三世転変ヲミル。
現代語訳
この迷いと言い、この悟りと言うことは、物に表と裏があるように、日に昼と夜があるように、一つの仏性の中で仮に分けて説き示しているだけである。賢者聖者には、一つの仏性の中にあって、この世間は常に清浄で無為である。凡夫には、一つの仏性の中にあって、この世間は常に煩悩と無明である。この煩悩と無明の中で、影を追って止まない。業に従って流転する。一と多を立てる。自と他を立てる。捉えられない影を無理に捉えようとする。無常なものに常の相をこしらえる。無我の法の中に我の相を思いはかる。一つの法の中に心と対象を分けて異なるものとする。常住の法の中に過去・現在・未来の移り変わりを見る。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『翁問答』下卷之末夫人間は迷悟の二に極まれり、迷ときは凡夫なり悟ときは聖賢君子仏菩薩なり、その迷と悟は一心にあり人欲ふかく無明の雲あつく、心月のひかりかすかにして、やみの夜のごとくなるを迷の心といふなり、学問修行の功つもりて人欲きよくつきて、無明の雲はれ心月の霊光あきらかにてらすを悟の心と云、此悟の心を仏経に無心、無本仏、妙覚仏、化身仏などゝ名く、また無礙清浄位と云、前かどに論ずる高明広大の道体をさとる狂者の心の位これなり、かくの如く悟たる心の無欲無為自然の霊覚を真心と定真性と定霊性と定、仏心と定、仏性と定、これ即ち釈尊、達磨の心法の端的なり、三大乗の観念千七百則の公案、皆この端的に約れり、
-
『十善法語』巻第六・不惡口戒法性法トシテソムケハ。此罪業アルコト。譬ヘハ印章ヲ紙ニ印シ出ス如ク。鋳像ノ模ヲ脱スル如ク。毫釐モ差ヒナキトアルシヤ。唯心ノ麁ナル者。道理ニ暗キ者ハ自ラ解セス。名利五欲ニ随順スルモノ。事ニ掩ハサルル者ハ自ラ迷フシヤ。一切衆生イキトシ生ル者。蠢動含霊。ミナ一仏性ナルコト。大海ノ同一酸味ナル如ク。太虚空ノ同一洞豁ナル如クシヤ。此一仏性。凡夫ニ在テモ減セヌ。仏ニ在テモ增セヌ。此仏性ノ增減ナキコトヲ信スレハ。自ラ憍慢ノ心ナク。悪口ハ離ルルシヤ。迷ニ迷ヲ累ヌレドモ。元来相違ナク。廓然トシテ開悟スレドモ。元来相違ナイ。此迷悟ヘタテナキコトヲ信スレハ。自ラ憍慢ノ心ナク。悪口ハ離ルルシヤ。
-
『十善法語』巻第七・不兩舌戒此中コノ迷情ヲ起スハ。譬ヘハ翳眼ニ空華ヲ見ル如クシヤ。法性空中。妄ニ造作シテ自他ヲ見ル。此自他分上ニモ。平等ノ性和合ノ徳ハ本来隠シ得ヌシヤ。看ヨ。自ハ他ニ対シテ其相ヲ顕ハス。他自ニ対シテ其相ヲ顕ハス。若相対ナケレバ。元来不可得シヤ。凡ソ法ヲ説ハ。唯相対ノ儀シヤ。看ヨ。生死ニ対シテ涅槃ヲ説。凡夫ニ対シテ聖者ヲ説。煩悩無明ニ対シテ菩提ヲ説類シヤ。此ニ至テハ。迷ノ源ニ達スレハ直ニ聖域ニ入ル。迷情ノ中ニ此心境ヲ見ル。此心境能所ノ中ニモ。平等ノ性和合ノ徳ハ本来隠シ得ヌシヤ。看ヨ。能縁ノ心ハ境ニ由テ能トナル。所縁ノ境ハ心ニ由テ所トナル。心現スレハ境来ル。境来レハ憎愛生ス。若能所ヲ離ルレハ法元来不可得シヤ。凡ソ法ヲ論スルハ。唯コノ能所ノ差排シヤ。此ニ至テ能所各立シテ。唯心源ヲ見ルシヤ。
-
『十善法語』巻第十二・不邪見戒之下又且ク栄耀全盛ナルニマキレテ。諸ノ戯笑。遊コトニ心ヲ寄テ。悠然トシテ月日ヲ送ルヲ迷ト云。暫クハ憂来リ。暫クハ喜来リ。此愁去レハ又彼愁来リ。此喜コト満スレハ又余ノ願求ヲ起シテ。日夜ニ忽忽トシテ止ムコト無ウチ。遅キカ早キカ。終ニ無常ニ帰スル世相斯ノ如シ。極タコトソ。タトヒ月ハ熱ナリ日ハ冷ナリト云トモ。此事ハ云消レヌシヤ。此ヲ決徹シテ疑ハネハ聖智見ヲ得ル基トナル。断常二見ノ深坑ヲ此中ニ超過スル。今日ニモ徒ニ過シ。明日モ徒ニ過シ。更ニ百年千年ノ営ヲ思テ。迷ト云。多少ノ人カ近ヲ棄テテ遠ニ走ル。内ヲ忘テ外ニ求ムル。邪見ニ堕ルコトシヤ。
-
『十善法語』巻第十・不邪見戒之上世智ヲ以テ分別スル者ハカウシヤ。何方マテモ世智シヤ。元来コノ生死去来。世智ヲ以テ知ルヘキ所デナイ。彼月影ノ盤水ニウツル譬モ。麁相ニ思惟セハサモアルベキヤウナレトモ。具ニ思惟シテ看ヨ。理ニ当ラヌコトヲ知ルヘキシヤ。今正シク譬ヘテ云ハハ。心性ハ月ノ如ク。境界ハ盤水ノ如ク。妄念想像ハカノ月影ノ如シヤ。盤水有ル処ハ必ス月影有ル。月影ハ月輪ノ体ナラネトモ。影ハ必ス月ニ由テ生スル。カクノ如ク。境界ノ有ル処ハ必ス其念生ス。念ハ必ス本性ニ因テ起ル。盤ノ多少ニ随テ月影モ亦多少カ有ル。月影ニ多少ハアレトモ。天上ニハ唯一月輪ノミ。如是念想ハ境ニ随テ多少アレトモ。心性ハ唯一法性ノミシヤ。
-
『十善法語』巻第十二・不邪見戒之下事事常常隔シテ相容レヌ。理ハ常ニ虚通シテ障礙ナイ。一切世間ニ理外ノ物ナク。一切世間ニ事外ノ理ナク。理事元来不二シヤ。理事不二ナレハ。断常ノ二見ハ本来解脱スル。心境元来不二シヤ。自他元来不二シヤ。迷悟元来不二シヤ。仏界ヲ知フト思ハハ衆生界ニ入テ見ヨ。大道徹底ノ処ヲ尋子ンニハ迷ノ源底ヲ窮テ看ヨ。唯知ラヌ者カ知ヌハカリ。解セヌ者カ解セヌハカリソ。華厳ノ中ニ。正ク此戒相ヲ示ス。又離邪見菩薩住於正道不行占卜。不取悪戒。心見正直無証無諂。於仏法僧起決定信トアル。