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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

此薄皮厚皮。モトヨリ堅實ナラス。此不淨ヲ裏ミ貯フルニ堪カタク。日夜ニ不淨ヲ漏シ出ス。耳ニ□□アル。鼻ニ洟汁有ル。目ニ淚アル。口ニ涕唾等アル。總身ニ汗垢汚アル。下ニ大小二便アル。此漏レ出ル諸ノ不淨ハ取收ネハナラス。其取收メヤウノ精キカ上段者シヤ。ソノ收メ樣ノ精カラヌカ下段下等ノ人間シヤ。上下ノ差ハアレトモ。不淨聚ニ違ヒナキシヤ。此不淨聚カ。糞聚ニ蟲ノ生スル如ク。大地上ニ衆多アツマリ生育スルヲ。人間世界ト名ツク。迷フ者ハ此不淨聚ヲ彼不淨聚ニ對シテ。一切名利ニ使ハルル。一切ノ我慢勝他ニ惱マサルル。一切ノ五欲ニ執着スル。博學俊邁モ。高官貴人モ。勇力剛勁モ。此ニ覆ハサレテ。自己法性ノ智慧ヲ味マス者カ。謂ユル憐ムヘキ衆生シヤ。

新字:此薄皮厚皮。モトヨリ堅実ナラス。此不浄ヲ裏ミ貯フルニ堪カタク。日夜ニ不浄ヲ漏シ出ス。耳ニ□□アル。鼻ニ洟汁有ル。目ニ涙アル。口ニ涕唾等アル。総身ニ汗垢汚アル。下ニ大小二便アル。此漏レ出ル諸ノ不浄ハ取収ネハナラス。其取収メヤウノ精キカ上段者シヤ。ソノ収メ様ノ精カラヌカ下段下等ノ人間シヤ。上下ノ差ハアレトモ。不浄聚ニ違ヒナキシヤ。此不浄聚カ。糞聚ニ虫ノ生スル如ク。大地上ニ衆多アツマリ生育スルヲ。人間世界ト名ツク。迷フ者ハ此不浄聚ヲ彼不浄聚ニ対シテ。一切名利ニ使ハルル。一切ノ我慢勝他ニ悩マサルル。一切ノ五欲ニ執着スル。博学俊邁モ。高官貴人モ。勇力剛勁モ。此ニ覆ハサレテ。自己法性ノ智慧ヲ味マス者カ。謂ユル憐ムヘキ衆生シヤ。

書き下し

此薄皮厚皮。モトヨリ堅実ナラス。此不浄ヲ裏ミ貯フルニ堪カタク。日夜ニ不浄ヲ漏シ出ス。耳ニ□□アル。鼻ニ洟汁有ル。目ニ涙アル。口ニ涕唾等アル。総身ニ汗垢汚アル。下ニ大小二便アル。此漏レ出ル諸ノ不浄ハ取収ネハナラス。其取収メヤウノ精キカ上段者シヤ。ソノ収メ様ノ精カラヌカ下段下等ノ人間シヤ。上下ノ差ハアレトモ。不浄聚ニ違ヒナキシヤ。此不浄聚カ。糞聚ニ虫ノ生スル如ク。大地上ニ衆多アツマリ生育スルヲ。人間世界ト名ツク。迷フ者ハ此不浄聚ヲ彼不浄聚ニ対シテ。一切名利ニ使ハルル。一切ノ我慢勝他ニ悩マサルル。一切ノ五欲ニ執着スル。博学俊邁モ。高官貴人モ。勇力剛勁モ。此ニ覆ハサレテ。自己法性ノ智慧ヲ味マス者カ。謂ユル憐ムヘキ衆生シヤ。

現代語訳

この薄皮・厚皮は、もともと堅く確かなものではない。この不浄を包み蓄えるのに耐えがたく、日夜に不浄を漏らし出す。耳には□□がある。鼻には鼻汁がある。目には涙がある。口にはよだれや唾などがある。全身に汗や垢や汚れがある。下には大小の便がある。この漏れ出る諸々の不浄は、始末しなければならない。その始末の仕方が行き届いているのが上等の者である。その始末の仕方が行き届かないのが下等の人間である。上下の差はあっても、不浄の集まりであることに違いはないのである。この不浄の集まりが、糞の山に虫がわくように、大地の上に数多く集まって生まれ育っているのを、人間世界と名づける。迷う者は、この不浄の集まりを、あの不浄の集まりに向き合わせて、一切の名利に使われる。一切の我慢や勝とうとする心に悩まされる。一切の五欲に執着する。博学で優れた者も、高官や貴人も、勇ましく力の強い者も、これに覆われて、自己の法性の智慧をくらましている者が、いわゆる憐れむべき衆生である。

解説

身体から漏れ出るものを数え上げ、上等と下等の違いは始末の仕方の差にすぎず、本体は同じだと言う。耳の不浄の二字は底本と明治刊本がいずれも読めない。人間世界を不浄の集まりどうしの張り合いと見るのは激しい言い方だが、狙いは、名誉や勝ち負けに振り回される根を断つことにある。博学も高官も剛勇も、その点では変わらない。上下の差を誇る気持ちが湧いた時、同じ身体を持つ者どうしだと思い返せば、人を見下す心は和らぐ。

この章句が説くこと

不浄観名利我慢五欲法性衆生

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