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十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中

出生ノ後。父母ノ乳養飮食衣服等ノ差別。家ノ貴賤。身ノ貧富。作業ノ高下。交友ノ親疎。身ノ勞逸。心ノ憂喜。藝ノ巧拙。力ノ强羸等。皆目ニ見ル通リシヤ。此中居ハ氣ヲウツシ。養ハ體ヲウツス。乳哺飮食衣服等ノソタテニ由テ。身ノ壯健羸劣モ分ルレトモ。其大體ハ業相成熟シタコトハ。改マラヌモノシヤ。看ヨ。親戚心ヲ盡シテ育ル小兒ニ病身短命ナル者モアルシヤ。繼母ナトノ憎ミ恚ンテ育ル小兒ニ壯健長壽ナルモノモ有ルシヤ。周ノ先ノ棄ハ母カ林中水上隘巷ニ棄レトモ。鳥獸カ覆育スト云。徐ノ偃王ハ母カ水濱ニ棄置クニ。犬來テ覆育スト云シヤ。此類古今少カラヌシヤ。

新字:出生ノ後。父母ノ乳養飲食衣服等ノ差別。家ノ貴賤。身ノ貧富。作業ノ高下。交友ノ親疎。身ノ労逸。心ノ憂喜。芸ノ巧拙。力ノ強羸等。皆目ニ見ル通リシヤ。此中居ハ気ヲウツシ。養ハ体ヲウツス。乳哺飲食衣服等ノソタテニ由テ。身ノ壮健羸劣モ分ルレトモ。其大体ハ業相成熟シタコトハ。改マラヌモノシヤ。看ヨ。親戚心ヲ尽シテ育ル小児ニ病身短命ナル者モアルシヤ。継母ナトノ憎ミ恚ンテ育ル小児ニ壮健長寿ナルモノモ有ルシヤ。周ノ先ノ棄ハ母カ林中水上隘巷ニ棄レトモ。鳥獣カ覆育スト云。徐ノ偃王ハ母カ水浜ニ棄置クニ。犬来テ覆育スト云シヤ。此類古今少カラヌシヤ。

書き下し

出生ノ後。父母ノ乳養飲食衣服等ノ差別。家ノ貴賤。身ノ貧富。作業ノ高下。交友ノ親疎。身ノ労逸。心ノ憂喜。芸ノ巧拙。力ノ强羸等。皆目ニ見ル通リシヤ。此中居ハ気ヲウツシ。養ハ体ヲウツス。乳哺飲食衣服等ノソタテニ由テ。身ノ壮健羸劣モ分ルレトモ。其大体ハ業相成熟シタコトハ。改マラヌモノシヤ。看ヨ。親戚心ヲ尽シテ育ル小児ニ病身短命ナル者モアルシヤ。継母ナトノ憎ミ恚ンテ育ル小児ニ壮健長寿ナルモノモ有ルシヤ。周ノ先ノ棄ハ母カ林中水上隘巷ニ棄レトモ。鳥獣カ覆育スト云。徐ノ偃王ハ母カ水浜ニ棄置クニ。犬来テ覆育スト云シヤ。此類古今少カラヌシヤ。

現代語訳

生まれた後、父母による乳での養いや飲食・衣服などの違い、家の貴賤、身の貧富、生業の高下、交友の親疎、身の労苦と安楽、心の憂いと喜び、芸の巧拙、力の強弱などは、みな目に見るとおりである。この中で、住まいは気を移し、養いは体を移す。乳や飲食・衣服などの育て方によって、身の丈夫さ弱さも分かれるけれども、その大体は業のありさまが成熟したことであって、改まらないものである。見なさい。親族が心を尽くして育てる幼子に病弱で短命な者もいる。継母などが憎み怒って育てる幼子に丈夫で長寿な者もいる。周の祖先の棄は、母が林の中や水の上や狭い路地に棄てたけれども、鳥や獣が覆い育てたという。徐の偃王は、母が水辺に棄て置いたところ、犬が来て覆い育てたという。この類は古今に少なくないのである。

解説

生まれた後の境遇の違いと、育て方の影響を論じる段である。住む所は気質を、養い方は体を変えるので、育て方によって丈夫さにも差が出るが、大筋は業によって定まっていると尊者は言う。その例として、心を尽くして育てられても病弱な子、継母に疎まれても丈夫な子を挙げ、さらに周の始祖となった棄が捨てられても鳥獣に守られた話、徐の偃王が犬に育てられた話を引く。当時の因果観による説明だが、環境だけでは人は決まらないという指摘として読める。努力が思うように実らない時にも、逆境に育つ強さを見る時にも、その背後の長い因縁を思う視点を与える。

この章句が説くこと

業相養育環境宿業因縁

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