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十善法語 / 巻第四・不妄語戒

此本不生ト云ハトウシタコトソ。一切ノ法ハ本來生セヌモノシヤ。生セヌニ由テ滅セヌモノシヤ。先今日ノ者ハ。胎內ニ十月滿足シ。六根圓備シテ。生レ出タヲ生ト思フカ。ソレハ本ノ生テハナイ。本ノ生ハ託胎羯邏藍ノトキニ在ヘキシヤ。託胎ノ後。餘ノ障緣ダニナケレハ。五位增長セネハナラヌ。支分滿足スレハ決定シテ生レ出ネハナラヌコトシヤ。菓ノ時至テ熟シ落ルヤウナモノデ。生レマジト云コトハナラヌシヤ。ソレナラハ產生ノ時ハ本ノ生ナラヌ。託胎ノ時カ正キ生カト云ニ。此託胎ハ元來業力ヨリ生シタモノシヤ。此業種子カアレハ。高キ峰ヨリ大石ヲマロハシ落ス樣ナルモノテ。ソノ中間ニ留メラルルモノテナキシヤ。決定シテ因緣アル生處ニ趣カネハナラヌシヤ。託胎ハ業ニ牽サレタ後ノコトテ。本ノ生ナラヌ。此業成就シタ時カ。託胎ノ定タ時シヤ。

新字:此本不生ト云ハトウシタコトソ。一切ノ法ハ本来生セヌモノシヤ。生セヌニ由テ滅セヌモノシヤ。先今日ノ者ハ。胎内ニ十月満足シ。六根円備シテ。生レ出タヲ生ト思フカ。ソレハ本ノ生テハナイ。本ノ生ハ託胎羯邏藍ノトキニ在ヘキシヤ。託胎ノ後。余ノ障縁ダニナケレハ。五位增長セネハナラヌ。支分満足スレハ決定シテ生レ出ネハナラヌコトシヤ。菓ノ時至テ熟シ落ルヤウナモノデ。生レマジト云コトハナラヌシヤ。ソレナラハ産生ノ時ハ本ノ生ナラヌ。託胎ノ時カ正キ生カト云ニ。此託胎ハ元来業力ヨリ生シタモノシヤ。此業種子カアレハ。高キ峰ヨリ大石ヲマロハシ落ス様ナルモノテ。ソノ中間ニ留メラルルモノテナキシヤ。決定シテ因縁アル生処ニ趣カネハナラヌシヤ。託胎ハ業ニ牽サレタ後ノコトテ。本ノ生ナラヌ。此業成就シタ時カ。託胎ノ定タ時シヤ。

書き下し

此本不生ト云ハトウシタコトソ。一切ノ法ハ本来生セヌモノシヤ。生セヌニ由テ滅セヌモノシヤ。先今日ノ者ハ。胎内ニ十月満足シ。六根円備シテ。生レ出タヲ生ト思フカ。ソレハ本ノ生テハナイ。本ノ生ハ託胎羯邏藍ノトキニ在ヘキシヤ。託胎ノ後。余ノ障縁ダニナケレハ。五位增長セネハナラヌ。支分満足スレハ決定シテ生レ出ネハナラヌコトシヤ。菓ノ時至テ熟シ落ルヤウナモノデ。生レマジト云コトハナラヌシヤ。ソレナラハ産生ノ時ハ本ノ生ナラヌ。託胎ノ時カ正キ生カト云ニ。此託胎ハ元来業力ヨリ生シタモノシヤ。此業種子カアレハ。高キ峰ヨリ大石ヲマロハシ落ス様ナルモノテ。ソノ中間ニ留メラルルモノテナキシヤ。決定シテ因縁アル生処ニ趣カネハナラヌシヤ。託胎ハ業ニ牽サレタ後ノコトテ。本ノ生ナラヌ。此業成就シタ時カ。託胎ノ定タ時シヤ。

現代語訳

この本不生というのはどういうことか。一切の法は本来生じないものである。生じないので滅しないものである。まず今日の者は、胎内に十か月満ちて六根(眼耳鼻舌身意)が円かに備わって生まれ出たことを生と思うか。それは本当の生ではない。本当の生は、託胎して羯邏藍(受胎直後の状態)となった時にあるはずである。託胎の後、ほかの障りの縁さえなければ、五位(胎内の五つの段階)が増し成長しないわけにはいかない。手足などが満ち足りれば、必ず生まれ出ないわけにはいかないことである。果実が時至って熟し落ちるようなもので、生まれまいということはできないのである。それならば出産の時は本当の生ではない、託胎の時が正しい生かと言うと、この託胎はもともと業の力から生じたものである。この業の種子があれば、高い峰から大石を転がし落とすようなもので、その途中で留められるものではないのである。必ず因縁のある生まれるところへ赴かないわけにはいかない。託胎は業に引かれた後のことで、本当の生ではない。この業が成就した時が、託胎の定まった時なのである。

解説

阿字の本不生の意味を、慈雲は生まれるとはいつのことかという問いで解き明かしていく。出産の時は生の始まりではなく、胎に宿った時にすでに決まっている。その託胎も、実は業の力によって定まったもので、高い峰から転げ落ちる大石のように途中では止められない。羯邏藍は受胎直後の状態、五位は胎内での成長の段階を指す仏教の用語である。始まりだと思っていたものが、実は前の原因の結果にすぎない。物事の起点を一つに決めつけず、原因をさかのぼって見る思考の訓練として読める。

この章句が説くこと

本不生託胎因縁

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