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十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中

夢中ニ百里千里ノ事ヲ見モ。唯コレ方寸ノ中ノ轉變ト云ヘキコトシヤ。此方寸モ元來規度ヲ以テ度ヘキナラネハ。方寸カ近キテモナク。百里千里カ遠キテモナイ。中有モ如是。業力ノ牽處ハ百里千里モ唯是眼前シヤ。因緣ナキトコロハ咫尺モ千里シヤ。眼前カ近テモナク。百里千里カ遠テモナイ。現今ノ境界モ。中有ノ境界モ。元來游絲ヲノヘテ春風ヲ繫ク如クシヤ。其中有ノ眼根ハ。天眼ノ如ク障礙ノ外ヲ視ルトアル。不思議ナルモノシヤ。眼根ニ見ユル處カ生處ノ國シヤ。其國土ノ中ニ。次生ノ祿位官爵。君臣朋友。苦樂昇沈カ定ルシヤ。此國土ト中有ノ念相ト。一ト云ヘカラス。異ト云ヘカラス。國土ノアル處ハ卽念ノ生スル處。念ノ生スル處カ卽生處シヤ。一期ノ苦樂昇沈シヤ。

新字:夢中ニ百里千里ノ事ヲ見モ。唯コレ方寸ノ中ノ転変ト云ヘキコトシヤ。此方寸モ元来規度ヲ以テ度ヘキナラネハ。方寸カ近キテモナク。百里千里カ遠キテモナイ。中有モ如是。業力ノ牽処ハ百里千里モ唯是眼前シヤ。因縁ナキトコロハ咫尺モ千里シヤ。眼前カ近テモナク。百里千里カ遠テモナイ。現今ノ境界モ。中有ノ境界モ。元来游糸ヲノヘテ春風ヲ繋ク如クシヤ。其中有ノ眼根ハ。天眼ノ如ク障礙ノ外ヲ視ルトアル。不思議ナルモノシヤ。眼根ニ見ユル処カ生処ノ国シヤ。其国土ノ中ニ。次生ノ禄位官爵。君臣朋友。苦楽昇沈カ定ルシヤ。此国土ト中有ノ念相ト。一ト云ヘカラス。異ト云ヘカラス。国土ノアル処ハ即念ノ生スル処。念ノ生スル処カ即生処シヤ。一期ノ苦楽昇沈シヤ。

書き下し

夢中ニ百里千里ノ事ヲ見モ。唯コレ方寸ノ中ノ転変ト云ヘキコトシヤ。此方寸モ元来規度ヲ以テ度ヘキナラネハ。方寸カ近キテモナク。百里千里カ遠キテモナイ。中有モ如是。業力ノ牽処ハ百里千里モ唯是眼前シヤ。因縁ナキトコロハ咫尺モ千里シヤ。眼前カ近テモナク。百里千里カ遠テモナイ。現今ノ境界モ。中有ノ境界モ。元来游糸ヲノヘテ春風ヲ繋ク如クシヤ。其中有ノ眼根ハ。天眼ノ如ク障礙ノ外ヲ視ルトアル。不思議ナルモノシヤ。眼根ニ見ユル処カ生処ノ国シヤ。其国土ノ中ニ。次生ノ禄位官爵。君臣朋友。苦楽昇沈カ定ルシヤ。此国土ト中有ノ念相ト。一ト云ヘカラス。異ト云ヘカラス。国土ノアル処ハ即念ノ生スル処。念ノ生スル処カ即生処シヤ。一期ノ苦楽昇沈シヤ。

現代語訳

夢の中で百里千里の事を見るのも、ただ胸の内の移り変わりと言うべきことである。この胸の内ももともと物差しで測るべきものではないから、胸の内が近いのでもなく、百里千里が遠いのでもない。中有もこのとおりである。業の力の引く所は、百里千里もただ目の前である。因縁のない所は、わずかな距離も千里である。目の前が近いのでもなく、百里千里が遠いのでもない。今の境界も中有の境界も、もともと陽炎の糸を伸ばして春風をつなぎ止めるようなものである。その中有の眼は、天眼のように障りの外を見るとある。不思議なものである。その眼に見える所が生まれる所の国である。その国土の中で、次の生の俸禄や官位、君臣や朋友、苦楽や浮き沈みが定まるのである。この国土と中有の念のありさまとは、一つとも言えず、異なるとも言えない。国土のある所がすなわち念の生じる所であり、念の生じる所がすなわち生まれる所である。一生の苦楽や浮き沈みである。

解説

夢で遠い土地を見るのも胸の内の移り変わりにすぎず、業の力が引く所は千里も目の前、縁のない所はすぐそばも千里だと尊者は説く。ここから中有が次の生へ向かう過程の描写が始まる。中有の眼は天眼のように障りを越えて見通し、その眼に映る国が生まれる国となり、そこで次の生の地位や人間関係、苦楽が定まる。国土と中有の念は一つとも別とも言えず、念の生じる所がそのまま生まれる所だという。尊者の説く中有の姿は、心が引かれる先に自分の居場所ができていくという、生き方そのものの縮図として読むこともできる。

この章句が説くこと

中有業力天眼国土生処

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