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十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中

此中有ノ法トシテ。假令千里萬里ヲ隔ツルモ。其有緣ノ生處ヲ見ル。其聲ヲ聞。假令中間ニソコハクノ國土アリ。山川聚落アルモ。皆畢竟シテ龜毛兎角ノ如クシヤ。其中間ニ百千ノ衆庶。萬億ノ人民有モ。皆畢竟シテ龜毛兎角ノ如クシヤ。唯其因緣ノ在ル處カ我眼ノオヨフ處ワカ眼ノ及トコロカ我生死ノアル處シヤ。譬ニテ云ハ。此處ニ安臥シテ夢中ニ出羽奧州ノ事ヲ見ル。長崎對馬ノ事ヲモミル。其中間ノ山川聚落人物ハ。何ホト有テモ龜毛兎角ノ如クシヤ。緣起元來不可思議シヤ。千里萬里カ遠テモナク。隣里郷黨カ近テモナイ。元來法ハ遠近ヲ離レタルモノシヤ。面白キコトシヤ。

新字:此中有ノ法トシテ。仮令千里万里ヲ隔ツルモ。其有縁ノ生処ヲ見ル。其声ヲ聞。仮令中間ニソコハクノ国土アリ。山川聚落アルモ。皆畢竟シテ亀毛兎角ノ如クシヤ。其中間ニ百千ノ衆庶。万億ノ人民有モ。皆畢竟シテ亀毛兎角ノ如クシヤ。唯其因縁ノ在ル処カ我眼ノオヨフ処ワカ眼ノ及トコロカ我生死ノアル処シヤ。譬ニテ云ハ。此処ニ安臥シテ夢中ニ出羽奥州ノ事ヲ見ル。長崎対馬ノ事ヲモミル。其中間ノ山川聚落人物ハ。何ホト有テモ亀毛兎角ノ如クシヤ。縁起元来不可思議シヤ。千里万里カ遠テモナク。隣里郷党カ近テモナイ。元来法ハ遠近ヲ離レタルモノシヤ。面白キコトシヤ。

書き下し

此中有ノ法トシテ。仮令千里万里ヲ隔ツルモ。其有縁ノ生処ヲ見ル。其声ヲ聞。仮令中間ニソコハクノ国土アリ。山川聚落アルモ。皆畢竟シテ亀毛兎角ノ如クシヤ。其中間ニ百千ノ衆庶。万億ノ人民有モ。皆畢竟シテ亀毛兎角ノ如クシヤ。唯其因縁ノ在ル処カ我眼ノオヨフ処ワカ眼ノ及トコロカ我生死ノアル処シヤ。譬ニテ云ハ。此処ニ安臥シテ夢中ニ出羽奥州ノ事ヲ見ル。長崎対馬ノ事ヲモミル。其中間ノ山川聚落人物ハ。何ホト有テモ亀毛兎角ノ如クシヤ。縁起元来不可思議シヤ。千里万里カ遠テモナク。隣里郷党カ近テモナイ。元来法ハ遠近ヲ離レタルモノシヤ。面白キコトシヤ。

現代語訳

この中有の法として、たとえ千里万里を隔てていても、その縁のある生まれる所を見、その声を聞く。たとえその間にいくつもの国土があり、山川や村里があっても、みな結局は亀の毛や兎の角(実在しないもの)のようなものである。その間に百千の庶民、万億の人民がいても、みな結局は亀の毛や兎の角のようなものである。ただその因縁のある所が自分の眼の及ぶ所であり、自分の眼の及ぶ所が自分の生死のある所なのである。たとえで言えば、ここに安らかに横たわって、夢の中で出羽や奥州の事を見る。長崎や対馬の事をも見る。その間の山川や村里や人物は、どれほどあっても亀の毛や兎の角のようなものである。縁起はもともと不可思議である。千里万里が遠いのでもなく、隣近所や郷里が近いのでもない。もともと法は遠近を離れたものである。面白いことである。

解説

時間に続いて、空間の遠近も中有にとっては意味を持たないと説く段である。中有は千里万里を隔てていても縁のある生まれる先を見、その声を聞き、途中の国々や山川や無数の人々は、亀の毛や兎の角のように無いに等しい。寝床にいながら夢で出羽や奥州、長崎や対馬を見るようなものだという。聞き手に身近な地名を挙げて、縁あるところだけが目に入り、その間の距離が消えてしまう心のありようを描いている。遠く離れていても心が結ばれた相手はすぐそばに感じられ、隣にいても縁のない人は見えない、という経験に引き寄せて読むこともできる。
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この章句が説くこと

中有縁起遠近亀毛兎角夢縁

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