十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中
カウシヤ。心ノ往處ニ其形現ス。業ニ隨テ其報ヲ受ク。今此人間ニ生スル業ニ隨テ生シ。生ヲ受ルニ隨テ其念ノ相續スルコトシヤ。此人間分際テ看レハ。樓閣形ノ衆生ナトトキケハ。奇怪ナル樣ニ思ヘケレトモ。正眼ニ看來レハ。珍ラシキコトデハナイ。且ク此人間ノ目鼻ト云モノモ。手足ト云モノモ。自性法界ヨリ看レハ希有ナルモノシヤ。珍シキ物カ出來テアルコトシヤ。
新字:カウシヤ。心ノ往処ニ其形現ス。業ニ随テ其報ヲ受ク。今此人間ニ生スル業ニ随テ生シ。生ヲ受ルニ随テ其念ノ相続スルコトシヤ。此人間分際テ看レハ。楼閣形ノ衆生ナトトキケハ。奇怪ナル様ニ思ヘケレトモ。正眼ニ看来レハ。珍ラシキコトデハナイ。且ク此人間ノ目鼻ト云モノモ。手足ト云モノモ。自性法界ヨリ看レハ希有ナルモノシヤ。珍シキ物カ出来テアルコトシヤ。
書き下し
カウシヤ。心ノ往処ニ其形現ス。業ニ随テ其報ヲ受ク。今此人間ニ生スル業ニ随テ生シ。生ヲ受ルニ随テ其念ノ相続スルコトシヤ。此人間分際テ看レハ。楼閣形ノ衆生ナトトキケハ。奇怪ナル様ニ思ヘケレトモ。正眼ニ看来レハ。珍ラシキコトデハナイ。且ク此人間ノ目鼻ト云モノモ。手足ト云モノモ。自性法界ヨリ看レハ希有ナルモノシヤ。珍シキ物カ出来テアルコトシヤ。
現代語訳
こういうことである。心の往く所にその形が現れる。業に従ってその報いを受ける。今この人間に生まれるのも、業に従って生まれ、生を受けるに従ってその念が相続するのである。この人間の分際で見れば、楼閣の形の衆生などと聞くと奇怪なことのように思えるけれども、正しい眼で見てくれば珍しいことではない。ひとまず、この人間の目鼻というものも、手足というものも、自性の法界から見れば希有なものである。珍しい物ができているのである。
解説
楼閣の形の衆生と聞けば奇怪に思えるが、正しい眼で見れば珍しくないと尊者は言う。心の赴く所に形が現れ、業に従って報いを受けるのは、今の人間の身も同じだからである。尊者はさらに、人間の目や鼻や手足こそ、ものの本来の在り方から見れば希有な、珍しい物だと言い切る。奇妙なものを見る眼を反転させて、自分の当たり前の身体を不思議なものとして見直させる語り口である。見慣れたものを珍しいものとして見直すと、今ここに生きていることの不思議さに気づく。日常を新鮮に見る視点を与えてくれる一節である。
この章句が説くこと
業法界人身希有念形
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