十善法語 / 巻第十一・不邪見戒之中
是ハ佛在世ノ事シヤ。僧護經ニアルシヤ。舍利弗尊者ノ弟子ニ僧護比丘ト云有リ。或時商人友ヲ結テ。南方大寶洲ニ赴ク。功德ノ爲ニ此僧護比丘ヲ請シ。船中ニ供養センコトヲ願フ。僧護比丘此ヲ和上舍利弗ニ白ス。舍利弗此ヲ世尊ニ白ス。世尊利益時至ルヲ觀見シテ聽許ス。時ニ海中難ナク。大寶洲ニ至リ。隨意ニ諸ノ珠玉牛頭梅檀ヲトル。歸路諸商人議ス。陸地ヲ取ンヤ。海路ヲ取ンヤ。海路ハ危難多シ。陸路ニ趣クヘシト。皆船ヲ棄テ陸地ヲ取テ歸ル。或時僧護比丘靜處ニ思惟シ同伴ヲ失フ。獨行路ニ迷テ異路ニ入ル。路次種種希有ノ事有リ。其中ニ一ノ褥形ノ有情火ニ燒レテ苦ヲ受ク。又或處ニ兩人ノ禿頭ノ者互ニ相抱キテ。此モ火ニ燒レ苦ヲ受ク。此類總シテ五十六事アリ。其ヨリ一ノ林ニ至ル。此林中ニ五百ノ仙人住ス。初ハ釋迦ノ弟子來リ。我園林ヲ汚スト云テ。共語セズ。其中上首ノ者慈悲アリ。一樹下ヲ許ス。僧護比丘此樹下ニ在テ。初夜思惟シ。中夜暫眠息シ。後夜ニ至テ聖伽陀ヲ諷ス。時清夜月明ニ。其聲林木ニ傳フ。諸仙感嘆シテ。到來リ安慰ス。僧護比丘聖法ヲ說ク。諸仙各信ヲ生シテ此僧護比丘ニ從テ出家シ。咸ク聖域ニ入ル。次第ニ禪法ノ教授ヲ受。久カラスシテ羅漢果ヲ證ス。
新字:是ハ仏在世ノ事シヤ。僧護経ニアルシヤ。舎利弗尊者ノ弟子ニ僧護比丘ト云有リ。或時商人友ヲ結テ。南方大宝洲ニ赴ク。功徳ノ為ニ此僧護比丘ヲ請シ。船中ニ供養センコトヲ願フ。僧護比丘此ヲ和上舎利弗ニ白ス。舎利弗此ヲ世尊ニ白ス。世尊利益時至ルヲ観見シテ聴許ス。時ニ海中難ナク。大宝洲ニ至リ。随意ニ諸ノ珠玉牛頭梅檀ヲトル。帰路諸商人議ス。陸地ヲ取ンヤ。海路ヲ取ンヤ。海路ハ危難多シ。陸路ニ趣クヘシト。皆船ヲ棄テ陸地ヲ取テ帰ル。或時僧護比丘静処ニ思惟シ同伴ヲ失フ。独行路ニ迷テ異路ニ入ル。路次種種希有ノ事有リ。其中ニ一ノ褥形ノ有情火ニ焼レテ苦ヲ受ク。又或処ニ両人ノ禿頭ノ者互ニ相抱キテ。此モ火ニ焼レ苦ヲ受ク。此類総シテ五十六事アリ。其ヨリ一ノ林ニ至ル。此林中ニ五百ノ仙人住ス。初ハ釈迦ノ弟子来リ。我園林ヲ汚スト云テ。共語セズ。其中上首ノ者慈悲アリ。一樹下ヲ許ス。僧護比丘此樹下ニ在テ。初夜思惟シ。中夜暫眠息シ。後夜ニ至テ聖伽陀ヲ諷ス。時清夜月明ニ。其声林木ニ伝フ。諸仙感嘆シテ。到来リ安慰ス。僧護比丘聖法ヲ説ク。諸仙各信ヲ生シテ此僧護比丘ニ従テ出家シ。咸ク聖域ニ入ル。次第ニ禅法ノ教授ヲ受。久カラスシテ羅漢果ヲ証ス。
書き下し
是ハ仏在世ノ事シヤ。僧護経ニアルシヤ。舎利弗尊者ノ弟子ニ僧護比丘ト云有リ。或時商人友ヲ結テ。南方大宝洲ニ赴ク。功徳ノ為ニ此僧護比丘ヲ請シ。船中ニ供養センコトヲ願フ。僧護比丘此ヲ和上舎利弗ニ白ス。舎利弗此ヲ世尊ニ白ス。世尊利益時至ルヲ観見シテ聴許ス。時ニ海中難ナク。大宝洲ニ至リ。随意ニ諸ノ珠玉牛頭梅檀ヲトル。帰路諸商人議ス。陸地ヲ取ンヤ。海路ヲ取ンヤ。海路ハ危難多シ。陸路ニ趣クヘシト。皆船ヲ棄テ陸地ヲ取テ帰ル。或時僧護比丘静処ニ思惟シ同伴ヲ失フ。独行路ニ迷テ異路ニ入ル。路次種種希有ノ事有リ。其中ニ一ノ褥形ノ有情火ニ焼レテ苦ヲ受ク。又或処ニ両人ノ禿頭ノ者互ニ相抱キテ。此モ火ニ焼レ苦ヲ受ク。此類総シテ五十六事アリ。其ヨリ一ノ林ニ至ル。此林中ニ五百ノ仙人住ス。初ハ釈迦ノ弟子来リ。我園林ヲ汚スト云テ。共語セズ。其中上首ノ者慈悲アリ。一樹下ヲ許ス。僧護比丘此樹下ニ在テ。初夜思惟シ。中夜暫眠息シ。後夜ニ至テ聖伽陀ヲ諷ス。時清夜月明ニ。其声林木ニ伝フ。諸仙感嘆シテ。到来リ安慰ス。僧護比丘聖法ヲ説ク。諸仙各信ヲ生シテ此僧護比丘ニ従テ出家シ。咸ク聖域ニ入ル。次第ニ禅法ノ教授ヲ受。久カラスシテ羅漢果ヲ証ス。
現代語訳
これは仏の在世の事で、僧護経にある。舎利弗尊者の弟子に僧護比丘という者がいた。ある時、商人たちが仲間を組んで南方の大宝洲へ赴くことになり、功徳のためにこの僧護比丘を招いて船の中で供養したいと願った。僧護比丘はこれを師の舎利弗に申し上げ、舎利弗はこれを世尊に申し上げた。世尊は利益をもたらす時が来たのを見通して許された。その時、海の中では難もなく大宝洲に着き、思いのままに諸々の珠玉や牛頭栴檀を取った。帰り道で商人たちは相談した。「陸路を取ろうか、海路を取ろうか。海路は危難が多い。陸路を行くのがよい」。皆、船を捨てて陸路を取って帰った。ある時、僧護比丘は静かな所で思惟していて仲間を見失い、一人で道に迷って別の道に入った。道すがら、さまざまな珍しい事があった。その中に、敷物の形をした生き物が火に焼かれて苦しみを受けていた。またある所では、二人の剃髪した者が互いに抱き合って、これも火に焼かれて苦しみを受けていた。この類がすべて五十六事あった。そこから一つの林に至った。この林の中に五百人の仙人が住んでいた。初めは「釈迦の弟子が来て、我らの園林を汚す」と言って、共に語らなかったが、その中の首座の者に慈悲があって、一本の樹の下を許した。僧護比丘はこの樹の下にいて、初夜には思惟し、中夜にはしばらく眠り休み、後夜に至って聖なる偈を誦した。清らかな夜で月は明るく、その声は林の木々に伝わった。仙人たちは感嘆してやって来て慰労した。僧護比丘は聖なる法を説いた。仙人たちはそれぞれ信を生じて、この僧護比丘に従って出家し、皆、聖者の境地に入った。次第に禅法の教えを受けて、久しからずして阿羅漢の果を証した。
解説
この章句が説くこと
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