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十善法語 / 巻第十・不邪見戒之上

不偸盜戒ソノ身ニ有レハ。金銀財寶。祿位官爵等ノ中ニ非理ノ求ハナイ。家燒切盗。穿踰私竊ナトノ惡賊煩惱ハヨリツカヌシヤ。不邪婬戒ソノ身ニ有レハ。他所護ノ男女ノ境ニ於テ自ラ愛着ヲ生セヌ。一切非理ノ愛着。穴隙ヲ鑽テ相窺ヒ。墻ヲ踰テ相從フナドノ惡賊煩惱ハヨリツカヌシヤ。不妄語戒ソノ身ニ有レハ。一切語言カ自ラ眞正ナルシヤ。一切欺誑惑亂。僞物ヲ造作シ。僞書ヲ作リ出ス等ノ惡賊煩惱ハヨリツカヌシヤ。不綺語戒ソノ身ニ有レハ。言ニ虛飾ガナイ。一切ノ口合ヒ。非時ノ言論。小歌淨瑠璃等ヲ弄フ惡賊煩惱ハヨリツカヌシヤ。

新字:不偸盗戒ソノ身ニ有レハ。金銀財宝。禄位官爵等ノ中ニ非理ノ求ハナイ。家焼切盗。穿踰私窃ナトノ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。不邪婬戒ソノ身ニ有レハ。他所護ノ男女ノ境ニ於テ自ラ愛着ヲ生セヌ。一切非理ノ愛着。穴隙ヲ鑽テ相窺ヒ。墻ヲ踰テ相従フナドノ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。不妄語戒ソノ身ニ有レハ。一切語言カ自ラ真正ナルシヤ。一切欺誑惑乱。偽物ヲ造作シ。偽書ヲ作リ出ス等ノ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。不綺語戒ソノ身ニ有レハ。言ニ虚飾ガナイ。一切ノ口合ヒ。非時ノ言論。小歌浄瑠璃等ヲ弄フ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。

書き下し

不偸盗戒ソノ身ニ有レハ。金銀財宝。禄位官爵等ノ中ニ非理ノ求ハナイ。家焼切盗。穿踰私窃ナトノ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。不邪婬戒ソノ身ニ有レハ。他所護ノ男女ノ境ニ於テ自ラ愛着ヲ生セヌ。一切非理ノ愛着。穴隙ヲ鑽テ相窺ヒ。墻ヲ踰テ相従フナドノ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。不妄語戒ソノ身ニ有レハ。一切語言カ自ラ真正ナルシヤ。一切欺誑惑乱。偽物ヲ造作シ。偽書ヲ作リ出ス等ノ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。不綺語戒ソノ身ニ有レハ。言ニ虚飾ガナイ。一切ノ口合ヒ。非時ノ言論。小歌浄瑠璃等ヲ弄フ悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。

現代語訳

不偸盗戒がその身にあれば、金銀財宝や俸禄・官位などの中に、道理にかなわない求めはない。家を焼いて物を奪い、壁に穴をあけ垣を越えてひそかに盗むなどの悪賊のような煩悩は寄りつかないのである。不邪淫戒がその身にあれば、他人が守っている男女に対して、おのずから愛着を生じない。一切の道理にかなわない愛着、壁の穴をあけてのぞき見し、垣根を越えて密かに通じるなどの悪賊のような煩悩は寄りつかないのである。不妄語戒がその身にあれば、あらゆる言葉がおのずから真実で正しいものとなる。一切の欺きやたぶらかし、偽物をこしらえ、偽の書物を作り出すなどの悪賊のような煩悩は寄りつかないのである。不綺語戒がその身にあれば、言葉に虚飾がない。一切の語呂合わせのしゃれ、時をわきまえない議論、小唄や浄瑠璃などをもてあそぶ悪賊のような煩悩は寄りつかないのである。

解説

不偸盗・不邪淫・不妄語・不綺語の四つの戒について、それが身にあるときに寄りつかなくなる煩悩を並べる段である。盗みには俸禄や官位への無理な求めまで含め、妄語には偽物や偽書をこしらえることまで数える。小唄や浄瑠璃をもてあそぶことを綺語に入れるのは、江戸中期の町の風俗を踏まえた当時の見方である。要は、戒が身につけば、いちいち禁止を意識しなくても、財にも色にも言葉にも、無理な求めや飾りが出てこなくなるということである。肩書きへの執着や誇張した言葉も、同じ根から出ていないか見直したい。

この章句が説くこと

不偸盗不邪淫不妄語不綺語煩悩十善

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