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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

舊臣ヲ棄ス。民ノ利ヲ奪ス。賢者ヲ擧ヶ用フル。能者ヲ職ニ居シムル。功アル者ヲ賞スル。天下ノ財コレヲ天下ニ用フ。私ヲ以テ公ヲ亂サヌ。財費ズシテ諸人悅フ。慳吝ナラスシテ國用足ル。身勞セスシテ恩萬民ニ被フ。思慮ヲ用ヒスシテ四夷賓服スル。不偸盜ノ法。法トシテ如是シヤ。私愛禮ヲ亂サヌ。妻妾其所ヲ得ル。內議外ニ漏レヌ。外事內ニ入ラヌ。下民ニ至マテ侵犯私竊ノ行ナイ。男女正シケレハ國政亂レヌ。不邪婬ノ法。法トシテ如是シヤ。命令一タヒ下ツテ萬國推戴スル。善政一タヒ布テ永ク子孫ニ傳フ。不妄語ノ法。法トシテ如是シヤ。讒諛便嬖ヲ遠サケテ自ラ私ニ溺ヌ。利口雜謔ヲ捨テ質直ヲ貴ム。不綺語ノ法。法トシテ如是シヤ。

新字:旧臣ヲ棄ス。民ノ利ヲ奪ス。賢者ヲ挙ヶ用フル。能者ヲ職ニ居シムル。功アル者ヲ賞スル。天下ノ財コレヲ天下ニ用フ。私ヲ以テ公ヲ乱サヌ。財費ズシテ諸人悦フ。慳吝ナラスシテ国用足ル。身労セスシテ恩万民ニ被フ。思慮ヲ用ヒスシテ四夷賓服スル。不偸盗ノ法。法トシテ如是シヤ。私愛礼ヲ乱サヌ。妻妾其所ヲ得ル。内議外ニ漏レヌ。外事内ニ入ラヌ。下民ニ至マテ侵犯私窃ノ行ナイ。男女正シケレハ国政乱レヌ。不邪婬ノ法。法トシテ如是シヤ。命令一タヒ下ツテ万国推戴スル。善政一タヒ布テ永ク子孫ニ伝フ。不妄語ノ法。法トシテ如是シヤ。讒諛便嬖ヲ遠サケテ自ラ私ニ溺ヌ。利口雑謔ヲ捨テ質直ヲ貴ム。不綺語ノ法。法トシテ如是シヤ。

書き下し

旧臣ヲ棄ス。民ノ利ヲ奪ス。賢者ヲ挙ヶ用フル。能者ヲ職ニ居シムル。功アル者ヲ賞スル。天下ノ財コレヲ天下ニ用フ。私ヲ以テ公ヲ乱サヌ。財費ズシテ諸人悅フ。慳吝ナラスシテ国用足ル。身労セスシテ恩万民ニ被フ。思慮ヲ用ヒスシテ四夷賓服スル。不偸盗ノ法。法トシテ如是シヤ。私愛礼ヲ乱サヌ。妻妾其所ヲ得ル。内議外ニ漏レヌ。外事内ニ入ラヌ。下民ニ至マテ侵犯私窃ノ行ナイ。男女正シケレハ国政乱レヌ。不邪婬ノ法。法トシテ如是シヤ。命令一タヒ下ツテ万国推戴スル。善政一タヒ布テ永ク子孫ニ伝フ。不妄語ノ法。法トシテ如是シヤ。讒諛便嬖ヲ遠サケテ自ラ私ニ溺ヌ。利口雑謔ヲ捨テ質直ヲ貴ム。不綺語ノ法。法トシテ如是シヤ。

現代語訳

古くからの臣を棄てない。民の利を奪わない。賢者を挙げ用いる。能力ある者を職につける。功ある者を賞する。天下の財はこれを天下のために用いる。私によって公を乱さない。財を費やさずに人々が悦ぶ。物惜しみしないで国の費用が足りる。身を労さずに恩が万民に及ぶ。思慮を用いずに四方の夷が服従する。不偸盗の法は、法としてこのようなものである。私の愛で礼を乱さない。妻妾がそれぞれその所を得る。宮中の議が外に漏れない。外の事が宮中に入らない。下々の民に至るまで、侵したり私にかすめたりする行いがない。男女が正しければ国政は乱れない。不邪婬の法は、法としてこのようなものである。命令が一たび下れば万国が推し戴く。善政が一たび布かれれば永く子孫に伝わる。不妄語の法は、法としてこのようなものである。讒言やへつらい、寵愛の小人を遠ざけて、自ら私情に溺れない。口達者や雑談・戯れを捨てて質朴で真っ直ぐなことを貴ぶ。不綺語の法は、法としてこのようなものである。

解説

十善の各戒が君主の政治としてどう現れるかを、不偸盗から不綺語まで続けて示す段である。盗まないとは、民の利を奪わず、天下の財を天下のために使い、私で公を乱さないことである。邪婬をしないとは、私の愛で礼を乱さず、宮中の秩序を保つことである。嘘をつかないとは、命令が信じられ善政が続くことであり、綺語をしないとは、へつらいや口達者を遠ざけて質朴を貴ぶことである。個人の戒が、組織の長には人事や財政の規律として現れるという読み方は今も示唆に富む。

この章句が説くこと

不偸盗不邪婬不妄語不綺語公私人事

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