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十善法語 / 巻第十・不邪見戒之上

此倶生ノ惑。分別起ノ惑ノ差別アルコトヲ憶念スレハ。實ニ邪見ノ怖ルヘキコトヲ知ルシヤ。近クハ天命人道ニ順シ。遠クハ法性ニ順シテ。此邪見ヲ遠離スルカ。今日說ク所ノ戒相シヤ。總シテ戒法ハ不思議ナルモノニテ。此戒善カ身ニ有レハ。外ノ惡事ニ自ラ遠サカル。譬ヘハ國ニ武備有レハ敵國カ得伺ハヌ如ク。又人ノ元氣充實シタル者ハ風寒暑濕ノ外邪カ侵サヌ如クシヤ。不殺生戒ソノ身ニ具レハ假令怨賊毒蟲ニ過テモ慈悲心生スル。諸ノ父ヲ弑シ。君ヲ弑シ。非理ニ有情ヲ損害スル惡賊煩惱ハヨリツカヌシヤ。

新字:此倶生ノ惑。分別起ノ惑ノ差別アルコトヲ憶念スレハ。実ニ邪見ノ怖ルヘキコトヲ知ルシヤ。近クハ天命人道ニ順シ。遠クハ法性ニ順シテ。此邪見ヲ遠離スルカ。今日説ク所ノ戒相シヤ。総シテ戒法ハ不思議ナルモノニテ。此戒善カ身ニ有レハ。外ノ悪事ニ自ラ遠サカル。譬ヘハ国ニ武備有レハ敵国カ得伺ハヌ如ク。又人ノ元気充実シタル者ハ風寒暑湿ノ外邪カ侵サヌ如クシヤ。不殺生戒ソノ身ニ具レハ仮令怨賊毒虫ニ過テモ慈悲心生スル。諸ノ父ヲ弑シ。君ヲ弑シ。非理ニ有情ヲ損害スル悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。

書き下し

此倶生ノ惑。分別起ノ惑ノ差別アルコトヲ憶念スレハ。実ニ邪見ノ怖ルヘキコトヲ知ルシヤ。近クハ天命人道ニ順シ。遠クハ法性ニ順シテ。此邪見ヲ遠離スルカ。今日説ク所ノ戒相シヤ。総シテ戒法ハ不思議ナルモノニテ。此戒善カ身ニ有レハ。外ノ悪事ニ自ラ遠サカル。譬ヘハ国ニ武備有レハ敵国カ得伺ハヌ如ク。又人ノ元気充実シタル者ハ風寒暑湿ノ外邪カ侵サヌ如クシヤ。不殺生戒ソノ身ニ具レハ仮令怨賊毒虫ニ過テモ慈悲心生スル。諸ノ父ヲ弑シ。君ヲ弑シ。非理ニ有情ヲ損害スル悪賊煩悩ハヨリツカヌシヤ。

現代語訳

この倶生の惑と分別起の惑とに違いがあることを心にとどめて考えれば、まことに邪見の恐ろしさがわかるのである。近くは天命と人の道に従い、遠くは法性(万物の本性)に従って、この邪見を遠ざけ離れることが、今日説く戒の姿である。総じて戒法は不思議なもので、この戒の善が身にあれば、外の悪事から自然に遠ざかる。たとえば、国に武備があれば敵国がうかがうことができないように、また人の元気が充実している者には風・寒・暑・湿の外からの邪気が侵さないように、である。不殺生戒がその身に備われば、たとえ怨みを持つ賊や毒虫に出会っても慈悲の心が生じる。父を殺し、主君を殺し、道理なく生き物を損ない害するといった悪賊のような煩悩は寄りつかないのである。

解説

戒を身につけることの働きを、国の武備と身体の元気にたとえる段である。戒は外から悪を一つずつ禁じる規則ではなく、身に備わると悪のほうが寄りつかなくなる力だと尊者は言う。ここから十善の一つ一つについて、その戒があればどの煩悩が寄りつかないかを列挙していくが、その最初が不殺生戒で、怨みの相手や毒虫に対してさえ慈悲が生じるとされる。一つ一つの誘惑と戦うより、土台の体力をつけるほうが強いという考え方は、習慣づくりにもそのまま応用できる。

この章句が説くこと

戒法不殺生慈悲法性武備煩悩

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