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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

何者カ主宰ト爲テ此世界成壞ヲ安排布置ス。此初ノ火灾ハ衆生ノ瞋恚ヨリ起ル。次ノ水灾ハ貪愛婬欲ヨリ起ル。終リノ風灾ハ散亂ヨリ起ル。四大ノ成壞。三毒ノ緣起。何ノ處ヨリ來ルソ。唯コレ現今衆生一念心上ノ安排布置シヤ。此一念心亦蹤跡ナシ。元來生ナク滅ナク。來ナク去ナシ。悟ント欲セハ直ニ悟レ。汝カ一念心。元來不可得シヤ。迷ント欲セハ迷ヘ。汝カ一念心上ノ愛水。世界ヲウルホシテ生ス。生スル者ハ必滅ス。生滅アル處必ス來去アリ。年代久近アリ。小ノ三灾大ノ三灾アル。此三千世界同時ニ生シ。同時ニ滅スルト云コトシヤ。

新字:何者カ主宰ト為テ此世界成壊ヲ安排布置ス。此初ノ火災ハ衆生ノ瞋恚ヨリ起ル。次ノ水災ハ貪愛婬欲ヨリ起ル。終リノ風災ハ散乱ヨリ起ル。四大ノ成壊。三毒ノ縁起。何ノ処ヨリ来ルソ。唯コレ現今衆生一念心上ノ安排布置シヤ。此一念心亦蹤跡ナシ。元来生ナク滅ナク。来ナク去ナシ。悟ント欲セハ直ニ悟レ。汝カ一念心。元来不可得シヤ。迷ント欲セハ迷ヘ。汝カ一念心上ノ愛水。世界ヲウルホシテ生ス。生スル者ハ必滅ス。生滅アル処必ス来去アリ。年代久近アリ。小ノ三災大ノ三災アル。此三千世界同時ニ生シ。同時ニ滅スルト云コトシヤ。

書き下し

何者カ主宰ト為テ此世界成壊ヲ安排布置ス。此初ノ火灾ハ衆生ノ瞋恚ヨリ起ル。次ノ水灾ハ貪愛婬欲ヨリ起ル。終リノ風灾ハ散乱ヨリ起ル。四大ノ成壊。三毒ノ縁起。何ノ処ヨリ来ルソ。唯コレ現今衆生一念心上ノ安排布置シヤ。此一念心亦蹤跡ナシ。元来生ナク滅ナク。来ナク去ナシ。悟ント欲セハ直ニ悟レ。汝カ一念心。元来不可得シヤ。迷ント欲セハ迷ヘ。汝カ一念心上ノ愛水。世界ヲウルホシテ生ス。生スル者ハ必滅ス。生滅アル処必ス来去アリ。年代久近アリ。小ノ三灾大ノ三灾アル。此三千世界同時ニ生シ。同時ニ滅スルト云コトシヤ。

現代語訳

何者が主宰となって、この世界の成壊を按配配置するのか。この初めの火災は衆生の瞋恚から起こる。次の水災は貪愛や淫欲から起こる。終わりの風災は散乱から起こる。四大の成壊、三毒の縁起は、どこから来るのか。ただこれ、現在の衆生の一念の心の上の按配配置である。この一念の心にもまた跡形がない。元来、生もなく滅もなく、来ることもなく去ることもない。悟ろうと思うならば、ただちに悟れ。お前の一念の心は、元来得ることのできないものである。迷おうと思うならば迷え。お前の一念の心の上の愛の水が、世界を潤して生じる。生じる者は必ず滅する。生滅のある所には必ず来去がある。年代の久しい近いがある。小の三災、大の三災がある。この三千世界は同時に生じ、同時に滅するということである。

解説

世界の成壊を司る主宰者はいない、と尊者は言う。火災は衆生の瞋恚から、水災は貪愛から、風災は散乱から起こり、四大の成り立ちも三毒の縁起も、すべて今この瞬間の衆生の一念の心が配置したものである。しかもその一念にも跡形はなく、生滅も来去もない。悟りたければ今すぐ悟れ、迷いたければ迷え、と突きつける。宇宙規模の話が、最後は聴いている一人ひとりの一念に戻ってくる構成が見事である。世界を嘆く前に、自分の一念を見よ、という促しとして響く。

この章句が説くこと

一念三毒主宰成壊瞋恚唯心

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