十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒
元來一微塵ノ中ニ。堅濕煖動ノ相離レヌ故ニ。水ト成テ濕ホシ。火ト成テ煖メ。風ト成テ長養シ。地ト成テ其形ヲ生スル。大ニモアレ小ニモアレ。此四大互ニ因トナリ緣トナリテ萬物ヲ造作スルシヤ。正眼ニ看來レハ。此心微妙ナル物テ。一塵ノ中ニ入テ世界成立ノ因トナリ。世界壞滅ノ緣トナル。何ノ入トカ說ヘキ。一塵直ニ自心ノ性相シヤ。世界直ニ自心ノ性相シヤ。若ハ成立スルモ自心ノ性相ト知シヤ。若ハ滅壞スルモ自心ノ性相ト知ルシヤ。一類ノ衆生アリテ。此世界百千萬刧確乎トシテ住スト見ル。一類ノ衆生アリテ。此世界念念轉變スト見ル。自性空中各自ノ業アリテ此見差別ス。面白キコトシヤ。此中若自ラ達スレハ。法法解脫シ。萬境自ラ如如シヤ。
新字:元来一微塵ノ中ニ。堅湿煖動ノ相離レヌ故ニ。水ト成テ湿ホシ。火ト成テ煖メ。風ト成テ長養シ。地ト成テ其形ヲ生スル。大ニモアレ小ニモアレ。此四大互ニ因トナリ縁トナリテ万物ヲ造作スルシヤ。正眼ニ看来レハ。此心微妙ナル物テ。一塵ノ中ニ入テ世界成立ノ因トナリ。世界壊滅ノ縁トナル。何ノ入トカ説ヘキ。一塵直ニ自心ノ性相シヤ。世界直ニ自心ノ性相シヤ。若ハ成立スルモ自心ノ性相ト知シヤ。若ハ滅壊スルモ自心ノ性相ト知ルシヤ。一類ノ衆生アリテ。此世界百千万刧確乎トシテ住スト見ル。一類ノ衆生アリテ。此世界念念転変スト見ル。自性空中各自ノ業アリテ此見差別ス。面白キコトシヤ。此中若自ラ達スレハ。法法解脱シ。万境自ラ如如シヤ。
書き下し
元来一微塵ノ中ニ。堅湿煖動ノ相離レヌ故ニ。水ト成テ湿ホシ。火ト成テ煖メ。風ト成テ長養シ。地ト成テ其形ヲ生スル。大ニモアレ小ニモアレ。此四大互ニ因トナリ縁トナリテ万物ヲ造作スルシヤ。正眼ニ看来レハ。此心微妙ナル物テ。一塵ノ中ニ入テ世界成立ノ因トナリ。世界壊滅ノ縁トナル。何ノ入トカ説ヘキ。一塵直ニ自心ノ性相シヤ。世界直ニ自心ノ性相シヤ。若ハ成立スルモ自心ノ性相ト知シヤ。若ハ滅壊スルモ自心ノ性相ト知ルシヤ。一類ノ衆生アリテ。此世界百千万刧確乎トシテ住スト見ル。一類ノ衆生アリテ。此世界念念転変スト見ル。自性空中各自ノ業アリテ此見差別ス。面白キコトシヤ。此中若自ラ達スレハ。法法解脱シ。万境自ラ如如シヤ。
現代語訳
元来、一つの微塵の中に、堅湿煖動の相が離れないために、水となって潤し、火となって温め、風となって育て、地となってその形を生じる。大であれ小であれ、この四大が互いに因となり縁となって、万物を作り出すのである。正しい眼で見てくれば、この心は微妙なもので、一つの塵の中に入って世界成立の因となり、世界壊滅の縁となる。何が入るなどと説けようか。一つの塵がそのまま自分の心の性相である。世界がそのまま自分の心の性相である。成立するのも自分の心の性相と知るのである。滅び壊れるのも自分の心の性相と知るのである。ある類の衆生がいて、この世界は百千万劫にわたって確かに住すると見る。ある類の衆生がいて、この世界は念々に転変すると見る。自性の空の中で、おのおのの業があって、この見方が異なる。面白いことである。この中で、もし自ら達すれば、法ごとに解脱し、万境はおのずから如々である。
解説
この章句が説くこと
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