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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

經說ニカクアルシヤ。元此世界只虛空ノミナリ。洞然トシテ一物モナシ。其邊際ヲ云ヘカラス。其時空中ニ微塵生ス。此微塵ヲ緣トシテ又彼微塵生スル其微塵兩兩相合シ聚集シテ。次第ニ安布シ。此世界現シ。山河出來ルシヤ。何故ニ此微塵聚集シテ或ハ山トナリ。或ハ川ト成ルナラハ。此一一ノ微塵ニ悉ク堅濕煖動ノ四相ヲ具ス。此四相或ハ聚集シ。或ハ離散ス。聚集ノ邊ニ世界成立ス。離散ノ邊ニ世界壞滅ス。面白キ物シヤ。一微塵ノ中ニ四相具足スト言ヘハ。ムツカシキ微細ナルコトト思フヘキジヤカ。今眼ニ見ユル物ヲ以テ推シテ知レ。空中ニ一片ノ雲生スルニ。其色アリ。其形アリ。其動靜アルシヤ。山中雲ノ生スル處ニ坐シテ居レハ。其濕モ覺ユルシヤ。一微塵ニ堅濕煖動ノ四相具足スルコトコノ趣シヤ。水中ニ泡カ生スルモ。其姿アリ。其色アリ。大小動作アルシヤ。地上ニ一草生スルモ。其色アリ。其姿アリ。其濕モアリ。功能モアルシヤ。一微塵ニ四相具足スルモ此理シヤ。物ニ大小ハアレトモ。其理ハ違ハヌシヤ。

新字:経説ニカクアルシヤ。元此世界只虚空ノミナリ。洞然トシテ一物モナシ。其辺際ヲ云ヘカラス。其時空中ニ微塵生ス。此微塵ヲ縁トシテ又彼微塵生スル其微塵両両相合シ聚集シテ。次第ニ安布シ。此世界現シ。山河出来ルシヤ。何故ニ此微塵聚集シテ或ハ山トナリ。或ハ川ト成ルナラハ。此一一ノ微塵ニ悉ク堅湿煖動ノ四相ヲ具ス。此四相或ハ聚集シ。或ハ離散ス。聚集ノ辺ニ世界成立ス。離散ノ辺ニ世界壊滅ス。面白キ物シヤ。一微塵ノ中ニ四相具足スト言ヘハ。ムツカシキ微細ナルコトト思フヘキジヤカ。今眼ニ見ユル物ヲ以テ推シテ知レ。空中ニ一片ノ雲生スルニ。其色アリ。其形アリ。其動静アルシヤ。山中雲ノ生スル処ニ坐シテ居レハ。其湿モ覚ユルシヤ。一微塵ニ堅湿煖動ノ四相具足スルコトコノ趣シヤ。水中ニ泡カ生スルモ。其姿アリ。其色アリ。大小動作アルシヤ。地上ニ一草生スルモ。其色アリ。其姿アリ。其湿モアリ。功能モアルシヤ。一微塵ニ四相具足スルモ此理シヤ。物ニ大小ハアレトモ。其理ハ違ハヌシヤ。

書き下し

経説ニカクアルシヤ。元此世界只虚空ノミナリ。洞然トシテ一物モナシ。其辺際ヲ云ヘカラス。其時空中ニ微塵生ス。此微塵ヲ縁トシテ又彼微塵生スル其微塵両両相合シ聚集シテ。次第ニ安布シ。此世界現シ。山河出来ルシヤ。何故ニ此微塵聚集シテ或ハ山トナリ。或ハ川ト成ルナラハ。此一一ノ微塵ニ悉ク堅湿煖動ノ四相ヲ具ス。此四相或ハ聚集シ。或ハ離散ス。聚集ノ辺ニ世界成立ス。離散ノ辺ニ世界壊滅ス。面白キ物シヤ。一微塵ノ中ニ四相具足スト言ヘハ。ムツカシキ微細ナルコトト思フヘキジヤカ。今眼ニ見ユル物ヲ以テ推シテ知レ。空中ニ一片ノ雲生スルニ。其色アリ。其形アリ。其動静アルシヤ。山中雲ノ生スル処ニ坐シテ居レハ。其湿モ覚ユルシヤ。一微塵ニ堅湿煖動ノ四相具足スルコトコノ趣シヤ。水中ニ泡カ生スルモ。其姿アリ。其色アリ。大小動作アルシヤ。地上ニ一草生スルモ。其色アリ。其姿アリ。其湿モアリ。功能モアルシヤ。一微塵ニ四相具足スルモ此理シヤ。物ニ大小ハアレトモ。其理ハ違ハヌシヤ。

現代語訳

経説にこうある。元来この世界はただ虚空だけであった。からりとして一物もない。その辺際を言うことはできない。その時、空中に微塵が生じた。この微塵を縁として、またあの微塵が生じる。その微塵が二つずつ合い集まって、次第に配置され、この世界が現れ、山河ができるのである。なぜこの微塵が集まって、あるいは山となり、あるいは川となるのかといえば、この一つ一つの微塵に、ことごとく堅・湿・煖・動の四つの相を具えている。この四相があるいは集まり、あるいは離れ散る。集まる側で世界が成立する。離れ散る側で世界が壊滅する。面白いものである。一つの微塵の中に四相が具足すると言えば、難しく微細なことと思うだろうが、今眼に見える物で推して知れ。空中に一片の雲が生じると、その色があり、その形があり、その動静がある。山中の雲の生じる所に座っていれば、その湿りも感じる。一つの微塵に堅湿煖動の四相が具足するのは、この趣である。水中に泡が生じるのも、その姿があり、その色があり、大小の動きがある。地上に一本の草が生じるのも、その色があり、その姿があり、その湿りもあり、効能もある。一つの微塵に四相が具足するのもこの理である。物に大小はあるけれども、その理は違わないのである。

解説

仏典の世界成立の説を紹介する。初めは何もない虚空で、そこに微塵が生じ、微塵が集まって山河ができた。一つ一つの微塵には、堅さ、湿り、温かさ、動きの四つの性質が具わっていて、それが集まれば世界が成り、散れば壊れる。難しく聞こえるが、雲を見れば色も形も動きもあり、そばに座れば湿りを感じる。泡にも一本の草にも同じ理がある、と尊者は身近な物で説明する。大きなものも小さなものも同じ理でできているという見方は、物事の仕組みを身近な例から考える姿勢として参考になる。

この章句が説くこと

微塵四大成壊世界縁起虚空

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