十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒
此ヨリ壽命增シ。父十歳ナルニ其子二十歲ヲ保ツ。壽命增スルニ由テ善心モ增長シ。倶ニ善法ヲ行シテ。偸盜ヲ離ル。此世界人民悉ク不殺生不偸盜ヲ奉行スルトキ。父二十歲ナルニ其子ハ四十歳ヲ保ツ。人民ノ福分モ少シク古ニ復スル。此壽命增シ。世界モ漸次ニヨクナルニ就テハ其心モ自カラ正ク。此ヨリ邪婬ヲ離ル。次ニ妄語ヲ離ル。次ニ兩舌ヲ離ル。次ニ惡口ヲ離ル。次ニ綺語ヲ離ル。次ニ貪欲嫉妬ヲ離ル。次ニ瞋恚ヲ離ル。次ニ惡邪見ヲ離ル。カクノ如ク漸漸ニ十善ノ世ニ還ル。壽命モ福德モ相好モ智慧モ次第ニ增長シ。乃至四萬歲ノ壽ヲ保ツ。此時人民ノ善根イヨイヨ純熟シテ。深ク後世ノ罪ヲ恐レ。慇重ニ福業ヲ修習シ。父母ニ孝ヲ竭シ。主君ニ忠ヲ盡シ。有德ノ人ヲ恭敬ス。乃至八萬四千歲ノ壽命ヲ保ツテ。減少ナキト云コトシヤ。此ヲ增刧ト名クルトアル。
新字:此ヨリ寿命增シ。父十歳ナルニ其子二十歳ヲ保ツ。寿命增スルニ由テ善心モ增長シ。倶ニ善法ヲ行シテ。偸盗ヲ離ル。此世界人民悉ク不殺生不偸盗ヲ奉行スルトキ。父二十歳ナルニ其子ハ四十歳ヲ保ツ。人民ノ福分モ少シク古ニ復スル。此寿命增シ。世界モ漸次ニヨクナルニ就テハ其心モ自カラ正ク。此ヨリ邪婬ヲ離ル。次ニ妄語ヲ離ル。次ニ両舌ヲ離ル。次ニ悪口ヲ離ル。次ニ綺語ヲ離ル。次ニ貪欲嫉妬ヲ離ル。次ニ瞋恚ヲ離ル。次ニ悪邪見ヲ離ル。カクノ如ク漸漸ニ十善ノ世ニ還ル。寿命モ福徳モ相好モ智慧モ次第ニ增長シ。乃至四万歳ノ寿ヲ保ツ。此時人民ノ善根イヨイヨ純熟シテ。深ク後世ノ罪ヲ恐レ。慇重ニ福業ヲ修習シ。父母ニ孝ヲ竭シ。主君ニ忠ヲ尽シ。有徳ノ人ヲ恭敬ス。乃至八万四千歳ノ寿命ヲ保ツテ。減少ナキト云コトシヤ。此ヲ增刧ト名クルトアル。
書き下し
此ヨリ寿命增シ。父十歳ナルニ其子二十歳ヲ保ツ。寿命增スルニ由テ善心モ增長シ。倶ニ善法ヲ行シテ。偸盗ヲ離ル。此世界人民悉ク不殺生不偸盗ヲ奉行スルトキ。父二十歳ナルニ其子ハ四十歳ヲ保ツ。人民ノ福分モ少シク古ニ復スル。此寿命增シ。世界モ漸次ニヨクナルニ就テハ其心モ自カラ正ク。此ヨリ邪婬ヲ離ル。次ニ妄語ヲ離ル。次ニ両舌ヲ離ル。次ニ悪口ヲ離ル。次ニ綺語ヲ離ル。次ニ貪欲嫉妬ヲ離ル。次ニ瞋恚ヲ離ル。次ニ悪邪見ヲ離ル。カクノ如ク漸漸ニ十善ノ世ニ還ル。寿命モ福徳モ相好モ智慧モ次第ニ增長シ。乃至四万歳ノ寿ヲ保ツ。此時人民ノ善根イヨイヨ純熟シテ。深ク後世ノ罪ヲ恐レ。慇重ニ福業ヲ修習シ。父母ニ孝ヲ竭シ。主君ニ忠ヲ尽シ。有徳ノ人ヲ恭敬ス。乃至八万四千歳ノ寿命ヲ保ツテ。減少ナキト云コトシヤ。此ヲ增刧ト名クルトアル。
現代語訳
これより寿命が増し、父が十歳であるのに、その子は二十歳を保つ。寿命が増すことによって善心も増長し、ともに善法を行って、盗みを離れる。この世界の人民がことごとく不殺生・不偸盗を奉行するとき、父が二十歳であるのに、その子は四十歳を保つ。人民の福分も少し昔に復する。この寿命が増し、世界も次第によくなるにつれて、その心もおのずから正しく、これより邪淫を離れる。次に嘘を離れる。次に二枚舌を離れる。次に悪口を離れる。次に飾った言葉を離れる。次に貪欲と嫉妬を離れる。次に瞋恚を離れる。次に悪しき邪見を離れる。このようにして次第に十善の世に還る。寿命も福徳も相好も智慧も次第に増長し、ついには四万歳の寿命を保つ。このとき人民の善根はいよいよ純熟して、深く後世の罪を恐れ、丁重に福業を修習し、父母に孝を尽くし、主君に忠を尽くし、有徳の人を恭しく敬う。ついには八万四千歳の寿命を保って、減少がないということである。これを増劫と名づけるとある。
解説
この章句が説くこと
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