十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒
ソノ時彼カクレ避シ一類善根ノ人山中ヨリ出見レハ。國土ハ皆死人相枕シ。骸骨縱橫シテ。一ノ生人ヲ見ヌ。暫クアツテ。外ニモ一類善根ノ衆生。山中ニ遁レシ人アリテ。カシコノ山ヨリモ一人。ココナル山ヨリモ一人出テクル。ソノ時互ニ相見テ。親愛ノ心生スルコト。小兒ノ母ヲ見カ如ク。互ニ是ハイカナルコトニテカクアリシソ。是ハイカナルコトニテカクアリシソト云テ泣トアル。此時諸人相集リ。上品ノ厭離ヲ起シ。再ヒ退轉セス。互ニ親子ノ如ク相親ミ。善心ヲ生ス。此ニ至リ菩薩若ハ羅漢世ニ交リ出テ。漸次ニ十善ヲ教フ。人民惡極テ善ヲ思フ時節ナルニ由テ。好絹ノ染色ヲ受ヤスキカ如ク。先殺生ヲ離ル。
新字:ソノ時彼カクレ避シ一類善根ノ人山中ヨリ出見レハ。国土ハ皆死人相枕シ。骸骨縦横シテ。一ノ生人ヲ見ヌ。暫クアツテ。外ニモ一類善根ノ衆生。山中ニ遁レシ人アリテ。カシコノ山ヨリモ一人。ココナル山ヨリモ一人出テクル。ソノ時互ニ相見テ。親愛ノ心生スルコト。小児ノ母ヲ見カ如ク。互ニ是ハイカナルコトニテカクアリシソ。是ハイカナルコトニテカクアリシソト云テ泣トアル。此時諸人相集リ。上品ノ厭離ヲ起シ。再ヒ退転セス。互ニ親子ノ如ク相親ミ。善心ヲ生ス。此ニ至リ菩薩若ハ羅漢世ニ交リ出テ。漸次ニ十善ヲ教フ。人民悪極テ善ヲ思フ時節ナルニ由テ。好絹ノ染色ヲ受ヤスキカ如ク。先殺生ヲ離ル。
書き下し
ソノ時彼カクレ避シ一類善根ノ人山中ヨリ出見レハ。国土ハ皆死人相枕シ。骸骨縦横シテ。一ノ生人ヲ見ヌ。暫クアツテ。外ニモ一類善根ノ衆生。山中ニ遁レシ人アリテ。カシコノ山ヨリモ一人。ココナル山ヨリモ一人出テクル。ソノ時互ニ相見テ。親愛ノ心生スルコト。小児ノ母ヲ見カ如ク。互ニ是ハイカナルコトニテカクアリシソ。是ハイカナルコトニテカクアリシソト云テ泣トアル。此時諸人相集リ。上品ノ厭離ヲ起シ。再ヒ退転セス。互ニ親子ノ如ク相親ミ。善心ヲ生ス。此ニ至リ菩薩若ハ羅漢世ニ交リ出テ。漸次ニ十善ヲ教フ。人民悪極テ善ヲ思フ時節ナルニ由テ。好絹ノ染色ヲ受ヤスキカ如ク。先殺生ヲ離ル。
現代語訳
そのとき、あの隠れ避けていた一類の善根の人が山中から出て見ると、国土はみな死人が枕を並べ、骸骨が縦横に散らばって、一人の生きた人も見えない。しばらくして、他にも一類の善根の衆生で山中に逃れていた人があって、あちらの山からも一人、こちらの山からも一人と出てくる。そのとき互いに顔を合わせて、親愛の心が生じることは、小児が母を見るようで、互いに「これはどういうことでこうなったのか。これはどういうことでこうなったのか」と言って泣くとある。このとき諸人が集まり、上品の厭離を起こして、再び退転しない。互いに親子のように親しみ、善心を生じる。ここに至って菩薩あるいは羅漢が世に交わって現れ、次第に十善を教える。人民は悪が極まって善を思う時節であるから、良い絹が染め色を受けやすいように、まず殺生を離れる。
解説
この章句が説くこと
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『十善法語』巻第九・不瞋恚戒此ヨリ寿命增シ。父十歳ナルニ其子二十歳ヲ保ツ。寿命增スルニ由テ善心モ增長シ。倶ニ善法ヲ行シテ。偸盗ヲ離ル。此世界人民悉ク不殺生不偸盗ヲ奉行スルトキ。父二十歳ナルニ其子ハ四十歳ヲ保ツ。人民ノ福分モ少シク古ニ復スル。此寿命增シ。世界モ漸次ニヨクナルニ就テハ其心モ自カラ正ク。此ヨリ邪婬ヲ離ル。次ニ妄語ヲ離ル。次ニ両舌ヲ離ル。次ニ悪口ヲ離ル。次ニ綺語ヲ離ル。次ニ貪欲嫉妬ヲ離ル。次ニ瞋恚ヲ離ル。次ニ悪邪見ヲ離ル。カクノ如ク漸漸ニ十善ノ世ニ還ル。寿命モ福徳モ相好モ智慧モ次第ニ增長シ。乃至四万歳ノ寿ヲ保ツ。此時人民ノ善根イヨイヨ純熟シテ。深ク後世ノ罪ヲ恐レ。慇重ニ福業ヲ修習シ。父母ニ孝ヲ竭シ。主君ニ忠ヲ尽シ。有徳ノ人ヲ恭敬ス。乃至八万四千歳ノ寿命ヲ保ツテ。減少ナキト云コトシヤ。此ヲ增刧ト名クルトアル。