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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

他ヲ看レハ瞋恚生シ。聲ヲ聞テハ瞋恚生ス。國土ハ純ニ荊棘林トナリ。木石瓦礫モ鐵蒺藜ノ如ク。手ニ取ル物コトコトク皆利刀ノ如クトアル瞋恚ノ熾盛ナルニ任セテ向フ者ヲ皆互ニ殺害ス。手足分段シテ其忿猶止マズ。身首所ヲ異ニシテ更ニ蹂踐ストアル。此間七日ヲ經。此ヲ小ノ三災ノ第三刀兵灾トス。此灾難ニ人民ノ死亡スル。前ノ饑饉疾疫ノ難ヨリモ百千萬倍ス。日月モ光彩ヲ失ヒ。天地ノ氣候モ常ニカハルトアル。其時唯一類ノ善根ノ衆生。此鬪諍ノ害ヲ避テ。山中ニ迯ケカクル。此ヲ減却ノ底下トス。人間タル者ノ果報トシテ。是ヨリ惡キハナキト云コトシヤ。

新字:他ヲ看レハ瞋恚生シ。声ヲ聞テハ瞋恚生ス。国土ハ純ニ荊棘林トナリ。木石瓦礫モ鉄蒺藜ノ如ク。手ニ取ル物コトコトク皆利刀ノ如クトアル瞋恚ノ熾盛ナルニ任セテ向フ者ヲ皆互ニ殺害ス。手足分段シテ其忿猶止マズ。身首所ヲ異ニシテ更ニ蹂践ストアル。此間七日ヲ経。此ヲ小ノ三災ノ第三刀兵災トス。此災難ニ人民ノ死亡スル。前ノ饑饉疾疫ノ難ヨリモ百千万倍ス。日月モ光彩ヲ失ヒ。天地ノ気候モ常ニカハルトアル。其時唯一類ノ善根ノ衆生。此闘諍ノ害ヲ避テ。山中ニ迯ケカクル。此ヲ減却ノ底下トス。人間タル者ノ果報トシテ。是ヨリ悪キハナキト云コトシヤ。

書き下し

他ヲ看レハ瞋恚生シ。声ヲ聞テハ瞋恚生ス。国土ハ純ニ荊棘林トナリ。木石瓦礫モ鉄蒺藜ノ如ク。手ニ取ル物コトコトク皆利刀ノ如クトアル瞋恚ノ熾盛ナルニ任セテ向フ者ヲ皆互ニ殺害ス。手足分段シテ其忿猶止マズ。身首所ヲ異ニシテ更ニ蹂践ストアル。此間七日ヲ経。此ヲ小ノ三災ノ第三刀兵灾トス。此灾難ニ人民ノ死亡スル。前ノ饑饉疾疫ノ難ヨリモ百千万倍ス。日月モ光彩ヲ失ヒ。天地ノ気候モ常ニカハルトアル。其時唯一類ノ善根ノ衆生。此闘諍ノ害ヲ避テ。山中ニ迯ケカクル。此ヲ減却ノ底下トス。人間タル者ノ果報トシテ。是ヨリ悪キハナキト云コトシヤ。

現代語訳

他人を見れば瞋恚が生じ、声を聞いては瞋恚が生じる。国土はまったく茨の林となり、木や石や瓦礫も鉄のまきびしのようで、手に取る物はことごとくみな鋭い刀のようだとある。瞋恚の盛んなのに任せて、向かって来る者をみな互いに殺害する。手足をばらばらにしてもその怒りはなお止まず、首と体が所を異にしても、更に踏みにじるとある。この間に七日を経る。これを小の三災の第三、刀兵災とする。この災難に人民が死亡するのは、前の飢饉や疾疫の難よりも百千万倍である。日月も光彩を失い、天地の気候も常と変わるとある。その時、ただ一類の善根の衆生が、この闘争の害を避けて、山中に逃げ隠れる。これを減劫の底とする。人間たる者の果報として、これより悪いものはないということである。

解説

刀兵災の七日間の描写である。人を見ても声を聞いても怒りが湧き、国土は茨の林となり、手に取る木や石が刃物に変わる。怒りのままに殺し合い、相手が死んでも怒りが止まない。死者は飢饉や疫病の百千万倍に及び、日月も光を失う。わずかな善根の人々だけが山に逃れる。これが減劫の底である。尊者は、怒りが極まると世界そのものが凶器に変わるという像で、瞋恚の害の大きさを示す。誇張に見えるが、憎しみが連鎖した争いの現実を思えば、遠い話ではない。

この章句が説くこと

刀兵災瞋恚闘諍減劫善根果報

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