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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

減刧ノ法トシテ。善法ハ保カタク。惡法ハ增長シ。後ホドワロクナル習ヒ。久シカラヌ間ニ。又昔ノ饑饉灾ノ事ヲ忘レ。我私ヲ主トシ。恩義ヲ思ハズ。段段惡事長シテ。君臣モ相欺キ。親子兄弟ノ間ニモ互ニ長短ヲ求ム。他家ノ交リハ唯妄語綺語。貪欲瞋恚。殺盜邪婬ノミニナル。ソノ時相好モ福德モ更ニ贏劣ニナリ。壽命モ二十歲ニ減ス。此人壽二十歲ノ時ニ。七月七日ノ疫病流行ス。天地ノ氣候不調ナルニ就テ。疫疾ノ鬼神力ヲ得。上下貴賤ミナ病ニ臥ス。臥モノ多ク死ス。能緣所緣ノ習ヒ。此死セシ者亦瘟疫ノ鬼トナリ人民ヲ殺害ス。此七月七日ノ災ニ死スル者。前ノ七年七月ノ饑饉ニ十倍百倍ストアル。此ヲ小ノ三災ノ第二疾疫灾トス。此七月七日過レハ。此時人民中品ノ厭離ヲ起シテ。分ニ隨テ善事ニ依ル。菩薩羅漢凡夫ニ如同シテ。一分ノ十善ヲ教フ。此時初テ日月ノ光モ□ク。天地ノ氣候モ暫ク調フテ。疫病ノ流行止ム。少分善事ノ力ニ由テ。二十歲ノ壽命アリテ暫ク住ス。世界減劫ノ法トシテ。二十歲ニ過ル者。二十歲ニ滿スル者ハ少ク。滿セスシテ死スル者ハ多シ。

新字:減刧ノ法トシテ。善法ハ保カタク。悪法ハ增長シ。後ホドワロクナル習ヒ。久シカラヌ間ニ。又昔ノ饑饉災ノ事ヲ忘レ。我私ヲ主トシ。恩義ヲ思ハズ。段段悪事長シテ。君臣モ相欺キ。親子兄弟ノ間ニモ互ニ長短ヲ求ム。他家ノ交リハ唯妄語綺語。貪欲瞋恚。殺盗邪婬ノミニナル。ソノ時相好モ福徳モ更ニ贏劣ニナリ。寿命モ二十歳ニ減ス。此人寿二十歳ノ時ニ。七月七日ノ疫病流行ス。天地ノ気候不調ナルニ就テ。疫疾ノ鬼神力ヲ得。上下貴賤ミナ病ニ臥ス。臥モノ多ク死ス。能縁所縁ノ習ヒ。此死セシ者亦瘟疫ノ鬼トナリ人民ヲ殺害ス。此七月七日ノ災ニ死スル者。前ノ七年七月ノ饑饉ニ十倍百倍ストアル。此ヲ小ノ三災ノ第二疾疫災トス。此七月七日過レハ。此時人民中品ノ厭離ヲ起シテ。分ニ随テ善事ニ依ル。菩薩羅漢凡夫ニ如同シテ。一分ノ十善ヲ教フ。此時初テ日月ノ光モ□ク。天地ノ気候モ暫ク調フテ。疫病ノ流行止ム。少分善事ノ力ニ由テ。二十歳ノ寿命アリテ暫ク住ス。世界減劫ノ法トシテ。二十歳ニ過ル者。二十歳ニ満スル者ハ少ク。満セスシテ死スル者ハ多シ。

書き下し

減刧ノ法トシテ。善法ハ保カタク。悪法ハ增長シ。後ホドワロクナル習ヒ。久シカラヌ間ニ。又昔ノ饑饉灾ノ事ヲ忘レ。我私ヲ主トシ。恩義ヲ思ハズ。段段悪事長シテ。君臣モ相欺キ。親子兄弟ノ間ニモ互ニ長短ヲ求ム。他家ノ交リハ唯妄語綺語。貪欲瞋恚。殺盗邪婬ノミニナル。ソノ時相好モ福徳モ更ニ贏劣ニナリ。寿命モ二十歳ニ減ス。此人寿二十歳ノ時ニ。七月七日ノ疫病流行ス。天地ノ気候不調ナルニ就テ。疫疾ノ鬼神力ヲ得。上下貴賤ミナ病ニ臥ス。臥モノ多ク死ス。能縁所縁ノ習ヒ。此死セシ者亦瘟疫ノ鬼トナリ人民ヲ殺害ス。此七月七日ノ災ニ死スル者。前ノ七年七月ノ饑饉ニ十倍百倍ストアル。此ヲ小ノ三災ノ第二疾疫灾トス。此七月七日過レハ。此時人民中品ノ厭離ヲ起シテ。分ニ随テ善事ニ依ル。菩薩羅漢凡夫ニ如同シテ。一分ノ十善ヲ教フ。此時初テ日月ノ光モ□ク。天地ノ気候モ暫ク調フテ。疫病ノ流行止ム。少分善事ノ力ニ由テ。二十歳ノ寿命アリテ暫ク住ス。世界減劫ノ法トシテ。二十歳ニ過ル者。二十歳ニ満スル者ハ少ク。満セスシテ死スル者ハ多シ。

現代語訳

減劫の法として、善法は保ちがたく、悪法は増長し、後になるほど悪くなる習いで、久しくないうちに、また昔の飢饉災の事を忘れ、自分の私を主とし、恩義を思わず、段々と悪事が長じて、君臣も互いに欺き、親子兄弟の間でも互いに短所を探す。他家との交わりは、ただ嘘と飾った言葉、貪欲と瞋恚、殺生・盗み・邪淫ばかりになる。そのとき相好も福徳もさらに衰え劣り、寿命も二十歳に減る。この人の寿命が二十歳の時に、七か月七日の疫病が流行する。天地の気候が調わないために、疫病の鬼神が力を得て、上下貴賤がみな病に臥す。臥す者の多くは死ぬ。能縁と所縁の習いで、この死んだ者がまた瘟疫の鬼となって人民を殺害する。この七か月七日の災いに死ぬ者は、前の七年七か月の飢饉に十倍百倍するとある。これを小の三災の第二、疾疫災とする。この七か月七日が過ぎると、このとき人民は中品の厭離を起こして、分に従って善事に依る。菩薩や羅漢が凡夫と同じ姿になって、一分の十善を教える。このとき初めて日月の光も(判読できない一字)、天地の気候もしばらく調って、疫病の流行が止む。少しの善事の力によって、二十歳の寿命があってしばらく住する。世界の減劫の法として、二十歳を過ぎる者、二十歳に満ちる者は少なく、満たずに死ぬ者は多い。

解説

飢饉の苦しみも喉元を過ぎれば忘れられ、人は私を主とし恩を忘れ、君臣も親子も互いに欺き短所を探し合うようになる。寿命が二十歳に縮んだとき、次の災い、七か月七日の疫病が襲う。死者が鬼となってさらに人を殺すという描写は、苦しみが次の苦しみの原因になる連鎖を示すもので、当時の仏教の世界観として語られている。人は再び善を思い、疫病は止むが、衰えの流れは続く。災いの教訓をどれだけ早く忘れるか、という人間の性を突きつける一節である。

この章句が説くこと

疫病三災減劫恩義厭離十善

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