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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

若得道ノ人ハ左之右之。法ノ現前スルトコロト云コトシヤ。若諸天ノ中ハ淨妙ノ天宮。淨妙ノ天身。下類ノ測ヘキ所ナラスト云。畜生等ノ四大ハ麁獷臭穢。常ニ苦惱逼切スト云コトシヤ。鬼神ノ部類ハ或ハ總身火炎ナルモアリ。又總身風ノ如クナルモアリ。其福分業相ニ隨テ種種アルト云コトシヤ。得道ノ人ハ此等ノ差別。ミナ明ニ知ルト云コトシヤ。經中ニ四大各各神有トアル。密教ニ地天ノ法多ク福德增益門ニ修ス。水天ノ法多ク請雨ニ就テ修ス。火天ノ法護摩アリ。此ニ息灾モ增益モ敬愛等モ成就ス。事火婆羅門ハ殊ニ敬重ス。風天ノ法多ク神足ヲ求ルニ就テ修スルト云コトシヤ。此四海大神ハ人間ノ身ニ徧滿シテ。人間アルコトヲ知ラヌ。人間ハ四大ヲ受テ我身トシテ。四大神アルコトヲ知ラヌ。思ヘハ面白キシヤ。

新字:若得道ノ人ハ左之右之。法ノ現前スルトコロト云コトシヤ。若諸天ノ中ハ浄妙ノ天宮。浄妙ノ天身。下類ノ測ヘキ所ナラスト云。畜生等ノ四大ハ麁獷臭穢。常ニ苦悩逼切スト云コトシヤ。鬼神ノ部類ハ或ハ総身火炎ナルモアリ。又総身風ノ如クナルモアリ。其福分業相ニ随テ種種アルト云コトシヤ。得道ノ人ハ此等ノ差別。ミナ明ニ知ルト云コトシヤ。経中ニ四大各各神有トアル。密教ニ地天ノ法多ク福徳增益門ニ修ス。水天ノ法多ク請雨ニ就テ修ス。火天ノ法護摩アリ。此ニ息災モ增益モ敬愛等モ成就ス。事火婆羅門ハ殊ニ敬重ス。風天ノ法多ク神足ヲ求ルニ就テ修スルト云コトシヤ。此四海大神ハ人間ノ身ニ遍満シテ。人間アルコトヲ知ラヌ。人間ハ四大ヲ受テ我身トシテ。四大神アルコトヲ知ラヌ。思ヘハ面白キシヤ。

書き下し

若得道ノ人ハ左之右之。法ノ現前スルトコロト云コトシヤ。若諸天ノ中ハ浄妙ノ天宮。浄妙ノ天身。下類ノ測ヘキ所ナラスト云。畜生等ノ四大ハ麁獷臭穢。常ニ苦悩逼切スト云コトシヤ。鬼神ノ部類ハ或ハ総身火炎ナルモアリ。又総身風ノ如クナルモアリ。其福分業相ニ随テ種種アルト云コトシヤ。得道ノ人ハ此等ノ差別。ミナ明ニ知ルト云コトシヤ。経中ニ四大各各神有トアル。密教ニ地天ノ法多ク福徳增益門ニ修ス。水天ノ法多ク請雨ニ就テ修ス。火天ノ法護摩アリ。此ニ息灾モ增益モ敬愛等モ成就ス。事火婆羅門ハ殊ニ敬重ス。風天ノ法多ク神足ヲ求ルニ就テ修スルト云コトシヤ。此四海大神ハ人間ノ身ニ遍満シテ。人間アルコトヲ知ラヌ。人間ハ四大ヲ受テ我身トシテ。四大神アルコトヲ知ラヌ。思ヘハ面白キシヤ。

現代語訳

もし道を得た人であれば、左にも右にも、法の現前する所ということである。もし諸天の中は、清浄で妙なる天宮、清浄で妙なる天の身で、下の者の推し量れる所ではないと言う。畜生などの四大は、粗く荒く臭く穢れて、常に苦悩が迫ると言う。鬼神の類は、あるいは全身が火炎であるものもあり、また全身が風のようであるものもあり、その福分や業相に従って種々あるということである。道を得た人は、これらの差別をみな明らかに知るということである。経の中に、四大にはおのおの神がある、とある。密教では、地天の法は多く福徳増益の門に修する。水天の法は多く雨乞いについて修する。火天の法には護摩がある。これによって息災も増益も敬愛なども成就する。事火婆羅門(火を祀る婆羅門)は殊に敬い重んじる。風天の法は多く神足を求めることについて修するということである。この四海大神(四大の神)は人間の身にあまねく満ちていて、人間がいることを知らない。人間は四大を受けて我が身として、四大の神がいることを知らない。思えば面白いことである。

解説

四大のあり方は、生きものの境涯によって違うと尊者は言う。天人は清らかで妙なる身、畜生は粗く苦しみに迫られ、鬼神には全身が炎や風のようなものもいる、と当時の仏教の世界観で語られる。さらに経に四大それぞれに神があるとし、密教の地天・水天・火天・風天の修法を紹介する。四大の神は人の身に満ちているのに人を知らず、人は四大を借りて身としながら神を知らない。自分の体を支える目に見えない働きに、ふだん気づかないことを面白いと見る視点である。

この章句が説くこと

四大密教天神境涯地天護摩

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