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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

自ラ迷フ者ハ見ルマシキ物ヲ見ル。思フマシキ事ヲ思フ。此心境界ヲ逐ヒ。境界心ヲ役使シ。此四大ヲ以テ自身ヲ造立シ。安排布置スル。現今ノ指爪髪毛皮肉筋骨五臟六腑ナトト云類。皆地大ニ屬ス。此ハ人間死スレハミナ朽テ土ニ歸ス。迷者ノ習ヒ活テ動キ。痛痒ヲ覺スレハ。是ヲ我物ト思ヒ。日夜ニ保着スレトモ。唯コレ生緣未タ盡サル間ノ妄想ノミニシテ。元來土塊ニ異ナラヌシヤ。一切山川大地草木叢林ヲ以テ自身トスト說ハ。廣大ナル事ヲ言出スヤウナレトモ。元來此地大ヲ自身ト思フヨリ看ヨ。遠クハナキシヤ。平生二六時中正憶念スレハ。此境界ニ相違セヌシヤ。

新字:自ラ迷フ者ハ見ルマシキ物ヲ見ル。思フマシキ事ヲ思フ。此心境界ヲ逐ヒ。境界心ヲ役使シ。此四大ヲ以テ自身ヲ造立シ。安排布置スル。現今ノ指爪髪毛皮肉筋骨五臓六腑ナトト云類。皆地大ニ属ス。此ハ人間死スレハミナ朽テ土ニ帰ス。迷者ノ習ヒ活テ動キ。痛痒ヲ覚スレハ。是ヲ我物ト思ヒ。日夜ニ保着スレトモ。唯コレ生縁未タ尽サル間ノ妄想ノミニシテ。元来土塊ニ異ナラヌシヤ。一切山川大地草木叢林ヲ以テ自身トスト説ハ。広大ナル事ヲ言出スヤウナレトモ。元来此地大ヲ自身ト思フヨリ看ヨ。遠クハナキシヤ。平生二六時中正憶念スレハ。此境界ニ相違セヌシヤ。

書き下し

自ラ迷フ者ハ見ルマシキ物ヲ見ル。思フマシキ事ヲ思フ。此心境界ヲ逐ヒ。境界心ヲ役使シ。此四大ヲ以テ自身ヲ造立シ。安排布置スル。現今ノ指爪髪毛皮肉筋骨五臓六腑ナトト云類。皆地大ニ属ス。此ハ人間死スレハミナ朽テ土ニ帰ス。迷者ノ習ヒ活テ動キ。痛痒ヲ覚スレハ。是ヲ我物ト思ヒ。日夜ニ保着スレトモ。唯コレ生縁未タ尽サル間ノ妄想ノミニシテ。元来土塊ニ異ナラヌシヤ。一切山川大地草木叢林ヲ以テ自身トスト説ハ。広大ナル事ヲ言出スヤウナレトモ。元来此地大ヲ自身ト思フヨリ看ヨ。遠クハナキシヤ。平生二六時中正憶念スレハ。此境界ニ相違セヌシヤ。

現代語訳

自ら迷う者は、見るべきでない物を見る。思うべきでない事を思う。この心が境界を追い、境界が心をこき使い、この四大によって自分の身を造り立て、按配配置する。今の指・爪・髪・毛・皮・肉・筋・骨・五臓六腑などという類は、みな地大に属する。これは人間が死ねば、みな朽ちて土に帰る。迷う者の習いとして、生きて動き、痛みや痒みを感じれば、これを自分の物と思い、日夜に保ち執着するけれども、ただこれは生の縁がまだ尽きない間の妄想だけであって、元来は土くれと異ならないのである。一切の山川大地、草木叢林をもって自分の身とする、と説くのは、広大なことを言い出すようだけれども、元来この地大を自分の身と思うことから見よ。遠いことではないのである。平生、一日中、正しく心にとどめていれば、この境界に違わないのである。

解説

四大の話を自分の身体に引き寄せる段である。爪も髪も皮も肉も骨も内臓も地大に属し、死ねば土に帰る。痛みや痒みを感じるから自分の物だと思い込んで執着するが、それは生の縁が尽きない間の思い込みで、元は土くれと変わらないと尊者は言う。だから山川大地や草木を自分の身とする、という教えも、大げさな話ではない。身体と大地が地続きだと感じられれば、自分と他を隔てる壁も低くなる。自分の体を大地の一部として感じ直す視点は、心身の緊張をほどく手がかりにもなる。

この章句が説くこと

地大身体執着四大自他法界

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