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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

此身ノ煖氣ハ火大ニ屬ス。此四肢百骸。ソノ命根任持スル。此煖氣ト倶トナリ居ルシヤ。此煖氣去盡レハ形木石ニ異ナラス。火大カナケレハ人ハ活テ居ラレヌモノシヤ。熱病增上スレハ眼前ニ火光ヲ見ル。此身ノ火大アル。知ヘキシヤ。此身內ノ火。外ノ日月ノ光ト相違セヌシヤ。金石草木ヨリ出ル火ト相違セヌシヤ。愚ナル者ハ此身内ノ煖氣ヲ愛シテ。生ヲ樂ヒ死ヲ惡ム。一切日月寶珠。諸ノ火光ヲ以テ自身トスト說ケハ。廣大ナルコトヲ云ヤウナレトモ。唯此皮肉煖氣ノ分齊ヲ自身ト認ルヲ以テ比對シ看ヨ。今日ノ人モ二六時中ニ私ノ念ニ誑惑セラレサレハ。此法界身ニ相違ナキシヤ。

新字:此身ノ煖気ハ火大ニ属ス。此四肢百骸。ソノ命根任持スル。此煖気ト倶トナリ居ルシヤ。此煖気去尽レハ形木石ニ異ナラス。火大カナケレハ人ハ活テ居ラレヌモノシヤ。熱病增上スレハ眼前ニ火光ヲ見ル。此身ノ火大アル。知ヘキシヤ。此身内ノ火。外ノ日月ノ光ト相違セヌシヤ。金石草木ヨリ出ル火ト相違セヌシヤ。愚ナル者ハ此身内ノ煖気ヲ愛シテ。生ヲ楽ヒ死ヲ悪ム。一切日月宝珠。諸ノ火光ヲ以テ自身トスト説ケハ。広大ナルコトヲ云ヤウナレトモ。唯此皮肉煖気ノ分斉ヲ自身ト認ルヲ以テ比対シ看ヨ。今日ノ人モ二六時中ニ私ノ念ニ誑惑セラレサレハ。此法界身ニ相違ナキシヤ。

書き下し

此身ノ煖気ハ火大ニ属ス。此四肢百骸。ソノ命根任持スル。此煖気ト倶トナリ居ルシヤ。此煖気去尽レハ形木石ニ異ナラス。火大カナケレハ人ハ活テ居ラレヌモノシヤ。熱病增上スレハ眼前ニ火光ヲ見ル。此身ノ火大アル。知ヘキシヤ。此身内ノ火。外ノ日月ノ光ト相違セヌシヤ。金石草木ヨリ出ル火ト相違セヌシヤ。愚ナル者ハ此身内ノ煖気ヲ愛シテ。生ヲ楽ヒ死ヲ悪ム。一切日月宝珠。諸ノ火光ヲ以テ自身トスト説ケハ。広大ナルコトヲ云ヤウナレトモ。唯此皮肉煖気ノ分斉ヲ自身ト認ルヲ以テ比対シ看ヨ。今日ノ人モ二六時中ニ私ノ念ニ誑惑セラレサレハ。此法界身ニ相違ナキシヤ。

現代語訳

この身の温かさは火大に属する。この四肢百骸は、その命の根を保ち持つのに、この温かさと共にあるのである。この温かさが去り尽くせば、形は木や石と異ならない。火大がなければ、人は生きていられないものである。熱病が増長すれば、目の前に火の光を見る。この身に火大があることを知るべきである。この身の内の火は、外の日月の光と違わないのである。金石草木から出る火と違わないのである。愚かな者は、この身の内の温かさを愛して、生を願い死を嫌う。一切の日月や宝珠、諸々の火の光をもって自分の身とする、と説けば、広大なことを言うようだけれども、ただこの皮と肉と温かさの範囲を自分の身と認めることと比べて見よ。今日の人も、一日中、私の念に惑わされなければ、この法界の身に違いないのである。

解説

体の温かさは火大に属し、命はこの温かさと共にある。温かさが去れば体は木石と同じになる。尊者は、体の内の火は太陽や月の光とも、石や木から出る火とも違わないと言う。人はこの温かさを愛して生に執着し死を嫌うが、日月の光を自分の身とする教えも、皮膚の内の温もりだけを自分とするのと比べれば、見方を広げただけのことである。私の念に惑わされなければ、この身は法界の身になる。生への執着を責めるのではなく、温もりの源を広く感じ直させる語り口である。

この章句が説くこと

火大煖気生死法界四大私念

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