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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

他日小臣ニ命シ。殿庭ニ蒺藜ヲ布セテ。師曠ヲ召ス。師曠召ニ應シテ來ルニ。足膝ヲ破ル。ソノトキ師曠天ニ仰テ嘆ズ。平公云。今且ク汝ト戯ル。何故深クナゲクト。師曠答フ。人自カラ妖ヲ興シテ自ラ賊フ。國君ノ殿庭蒺藜生スヘカラズ。此蒺藜アル。滅亡ノ兆ナルヘシト。果シテ久シカラヌ内ニ。平公卒ストアル。此等ハ小事ナレドモ。緣起ノ大體ニ比況スヘキコトシヤ。

新字:他日小臣ニ命シ。殿庭ニ蒺藜ヲ布セテ。師曠ヲ召ス。師曠召ニ応シテ来ルニ。足膝ヲ破ル。ソノトキ師曠天ニ仰テ嘆ズ。平公云。今且ク汝ト戯ル。何故深クナゲクト。師曠答フ。人自カラ妖ヲ興シテ自ラ賊フ。国君ノ殿庭蒺藜生スヘカラズ。此蒺藜アル。滅亡ノ兆ナルヘシト。果シテ久シカラヌ内ニ。平公卒ストアル。此等ハ小事ナレドモ。縁起ノ大体ニ比況スヘキコトシヤ。

書き下し

他日小臣ニ命シ。殿庭ニ蒺藜ヲ布セテ。師曠ヲ召ス。師曠召ニ応シテ来ルニ。足膝ヲ破ル。ソノトキ師曠天ニ仰テ嘆ズ。平公云。今且ク汝ト戯ル。何故深クナゲクト。師曠答フ。人自カラ妖ヲ興シテ自ラ賊フ。国君ノ殿庭蒺藜生スヘカラズ。此蒺藜アル。滅亡ノ兆ナルヘシト。果シテ久シカラヌ内ニ。平公卒ストアル。此等ハ小事ナレドモ。縁起ノ大体ニ比況スヘキコトシヤ。

現代語訳

ある日、小臣に命じて、御殿の庭に蒺藜(とげのある草)を敷かせて、師曠を召した。師曠は召しに応じて来ると、足や膝を傷つけた。そのとき師曠は天を仰いで嘆いた。平公は言った。「今ちょっとお前と戯れただけだ。なぜ深く嘆くのか」と。師曠は答えた。「人は自ら妖しいことを起こして、自ら損なうものです。国君の御殿の庭に蒺藜が生えるはずがありません。この蒺藜があるのは、滅亡の兆しでしょう」と。果たして久しくないうちに、平公は亡くなったとある。これらは小さな事であるけれども、縁起の大きな姿に比べて考えるべきことである。

解説

直言を不快に思った平公は、戯れと称して庭にとげのある蒺藜を敷き、盲目の師曠を歩かせて足を傷つけさせる。師曠は、人は自ら妖しいことを起こして自ら損なう、君主の庭に蒺藜があるのは滅亡の兆しだと嘆き、平公はほどなく亡くなる。怒りを戯れの形で晴らしたことが、そのまま自らの破滅の兆しになった。尊者はこれを縁起の大きな姿の縮図として示す。不快な直言者に意趣返しをしたくなったとき、その行為が自分の庭に棘を撒いていないかを考えさせる。

この章句が説くこと

瞋恚蒺藜直言滅亡縁起師曠

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