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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

ヨク此戒ヲ護持スル者ハ。家宅十分ノ安ヲ求メヌ。病アルトキ醫ニ十分ノ功ヲ求メヌ。人ニ交リテ十分ノ親好ヲ求メヌ。臣佐ヲ用ルニ各ソノ長スル處ヲ取ル。器財ヲ用ルニ唯時ノ用ニ達スルヲ取ル。奴僕ヲ役使スルニ十分ノ勞ヲ爲シメヌ。軍ニ臨ンテ十分ノ勝ヲトラヌ。敵ヲ亡スニ其遠裔ヲ殺シ盡サヌ。書ヲ讀ニ解シ盡コトヲ求メヌ。事ニ臨テ十分ノ才ヲ盡サヌ。十分ノ名ニ居ラヌ。十分ノ功ニ居ラヌ。萬般ノ事。此守ヲ失ハヌト云コトシヤ。子弟ヲ導クモ。沙門ノ弟子ヲ度スルモ。此不貪欲戒ヲ以テ主トスルト云コトシヤ。

新字:ヨク此戒ヲ護持スル者ハ。家宅十分ノ安ヲ求メヌ。病アルトキ医ニ十分ノ功ヲ求メヌ。人ニ交リテ十分ノ親好ヲ求メヌ。臣佐ヲ用ルニ各ソノ長スル処ヲ取ル。器財ヲ用ルニ唯時ノ用ニ達スルヲ取ル。奴僕ヲ役使スルニ十分ノ労ヲ為シメヌ。軍ニ臨ンテ十分ノ勝ヲトラヌ。敵ヲ亡スニ其遠裔ヲ殺シ尽サヌ。書ヲ読ニ解シ尽コトヲ求メヌ。事ニ臨テ十分ノ才ヲ尽サヌ。十分ノ名ニ居ラヌ。十分ノ功ニ居ラヌ。万般ノ事。此守ヲ失ハヌト云コトシヤ。子弟ヲ導クモ。沙門ノ弟子ヲ度スルモ。此不貪欲戒ヲ以テ主トスルト云コトシヤ。

書き下し

ヨク此戒ヲ護持スル者ハ。家宅十分ノ安ヲ求メヌ。病アルトキ医ニ十分ノ功ヲ求メヌ。人ニ交リテ十分ノ親好ヲ求メヌ。臣佐ヲ用ルニ各ソノ長スル処ヲ取ル。器財ヲ用ルニ唯時ノ用ニ達スルヲ取ル。奴僕ヲ役使スルニ十分ノ労ヲ為シメヌ。軍ニ臨ンテ十分ノ勝ヲトラヌ。敵ヲ亡スニ其遠裔ヲ殺シ尽サヌ。書ヲ読ニ解シ尽コトヲ求メヌ。事ニ臨テ十分ノ才ヲ尽サヌ。十分ノ名ニ居ラヌ。十分ノ功ニ居ラヌ。万般ノ事。此守ヲ失ハヌト云コトシヤ。子弟ヲ導クモ。沙門ノ弟子ヲ度スルモ。此不貪欲戒ヲ以テ主トスルト云コトシヤ。

現代語訳

よくこの戒を護持する者は、家宅に十分の安らぎを求めない。病のとき、医者に十分の効き目を求めない。人と交わって、十分の親しさを求めない。臣佐を用いるには、おのおのその長ずる所を取る。器財を用いるには、ただその時の用に足りることを取る。召使いを使うのに、十分の労をさせない。戦に臨んで、十分の勝ちを取らない。敵を滅ぼすのに、その遠い末裔まで殺し尽くさない。書を読むのに、解し尽くすことを求めない。事に臨んで、十分の才を尽くさない。十分の名に居らない。十分の功に居らない。万般の事に、この守りを失わないということである。子弟を導くのも、沙門が弟子を得度させるのも、この不貪欲戒を主とするということである。

解説

十分を求めない、という不貪欲戒の要を、暮らしから政治、戦、学問までの具体例で並べる段である。家に完全な安らぎを求めず、医者に完全な効き目を求めず、人付き合いに完全な親しさを求めない。部下には長所を取り、戦では勝ちきらず、敵を根絶やしにせず、書物は解き尽くそうとせず、才を出し尽くさず、名や功の頂点に居座らない。八分目にとどめる余白が、人を生かし、関係を長持ちさせる。完璧を求めて疲れた人や、部下に満点を求めがちな上司に響く一節である。

この章句が説くこと

十分八分余白不貪欲人材守り

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