十善法語 / 巻第八・不貪欲戒
此身有テ衣ル。其限ヲ知ル。身ニ適ヘハ止ム。此衣服十分ノ好ヲ求メヌ。華麗ハ一向所論デナイ。沙門法ノ中ハ。染壞割截等ノ儀アル是シヤ。殷ノ紂王カ衣珠玉トハ。愚ノ甚シキシヤ。此口有テ喫フ。其限ヲ知ル。十分ノ好味ヲ求メヌ。若其味甚口ニ適フトキハ。三分ニシテ一ヲ減スル。沙門法ノ中ハ。節量食ノ式。水淨ノ儀アル是シヤ。外國ニ六畜ヲ常食トスルハ。十善ノ儀テハナイ。斑足王ガ人肉ヲ食スル。易牙カ其子ヲ煮ハ。尤モ甚シキコトシヤ。此眼有テ見ル。五采ノ明ヲ害スルコトヲ知ル。十分ノ好色ヲ求メヌ。若其色甚タ眼ニ適フトキハ其守ヲ知ル。沙門法ノ中ハ。金銀莊飾具等ヲ好マヌ。是シヤ。東昏侯カ園中ノ石五色ノ彩ヲナス。蜀主王衍カ繪ヲ結テ山ヲ爲リ。其上ニ酒宴スル類ハ。甚シキコトシヤ。
新字:此身有テ衣ル。其限ヲ知ル。身ニ適ヘハ止ム。此衣服十分ノ好ヲ求メヌ。華麗ハ一向所論デナイ。沙門法ノ中ハ。染壊割截等ノ儀アル是シヤ。殷ノ紂王カ衣珠玉トハ。愚ノ甚シキシヤ。此口有テ喫フ。其限ヲ知ル。十分ノ好味ヲ求メヌ。若其味甚口ニ適フトキハ。三分ニシテ一ヲ減スル。沙門法ノ中ハ。節量食ノ式。水浄ノ儀アル是シヤ。外国ニ六畜ヲ常食トスルハ。十善ノ儀テハナイ。斑足王ガ人肉ヲ食スル。易牙カ其子ヲ煮ハ。尤モ甚シキコトシヤ。此眼有テ見ル。五采ノ明ヲ害スルコトヲ知ル。十分ノ好色ヲ求メヌ。若其色甚タ眼ニ適フトキハ其守ヲ知ル。沙門法ノ中ハ。金銀荘飾具等ヲ好マヌ。是シヤ。東昏侯カ園中ノ石五色ノ彩ヲナス。蜀主王衍カ絵ヲ結テ山ヲ為リ。其上ニ酒宴スル類ハ。甚シキコトシヤ。
書き下し
此身有テ衣ル。其限ヲ知ル。身ニ適ヘハ止ム。此衣服十分ノ好ヲ求メヌ。華麗ハ一向所論デナイ。沙門法ノ中ハ。染壊割截等ノ儀アル是シヤ。殷ノ紂王カ衣珠玉トハ。愚ノ甚シキシヤ。此口有テ喫フ。其限ヲ知ル。十分ノ好味ヲ求メヌ。若其味甚口ニ適フトキハ。三分ニシテ一ヲ減スル。沙門法ノ中ハ。節量食ノ式。水浄ノ儀アル是シヤ。外国ニ六畜ヲ常食トスルハ。十善ノ儀テハナイ。斑足王ガ人肉ヲ食スル。易牙カ其子ヲ煮ハ。尤モ甚シキコトシヤ。此眼有テ見ル。五采ノ明ヲ害スルコトヲ知ル。十分ノ好色ヲ求メヌ。若其色甚タ眼ニ適フトキハ其守ヲ知ル。沙門法ノ中ハ。金銀荘飾具等ヲ好マヌ。是シヤ。東昏侯カ園中ノ石五色ノ彩ヲナス。蜀主王衍カ絵ヲ結テ山ヲ為リ。其上ニ酒宴スル類ハ。甚シキコトシヤ。
現代語訳
この身があって衣を着る。その限りを知る。身に合えば止める。この衣服に十分の好みを求めない。華麗は一向に論じる所ではない。沙門の法の中では、(袈裟を)染めて色を壊し、裁ち割るなどの規則があるのがこれである。殷の紂王が珠玉を衣にしたとは、愚かの甚だしいことである。この口があって食べる。その限りを知る。十分の美味を求めない。もしその味が甚だ口に合うときは、三分して一を減らす。沙門の法の中では、食を量って節する式や、水を浄める規則があるのがこれである。外国で六畜を常食とするのは、十善の在り方ではない。斑足王が人肉を食べ、易牙がその子を煮たのは、最も甚だしいことである。この眼があって見る。五色が眼の明を害することを知る。十分の好い色を求めない。もしその色が甚だ眼に合うときは、その守りを知る。沙門の法の中では、金銀の荘飾具などを好まない、これである。東昏侯が園の中の石に五色の彩りを施し、蜀の主の王衍が絹を結って山を作り、その上で酒宴をした類は、甚だしいことである。
解説

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