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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

大抵高位大祿ノ人ハ過去十善ノ餘慶ナルニ由テ。貪欲薄ク華奢ニ隨順セヌモノシヤ。下賤困窮ノ者ハ宿緣ツタナキ故ニ。慳貪深ク華麗ヲ好ムモノシヤ。世ニ高貴ノ人ノ財利ニ耽リ。華奢ヲ好ミ事ニ貪欲ニ隨順スルハ。多クハ奸佞ノ小臣ニ誘ハルル故ト云コトシヤ。又念ノ生スルモ其分限不相應ナル事ハ。多ハ凶事ノ兆ト云コトシヤ。若貪欲相應スレバ。此戒ノ違犯トナル。增上スレバ身ヲ亡シ國家ヲ敗ル。此ヲ初ニ愼マネバ。終ニ救フベカラザルニ至シヤ。

新字:大抵高位大禄ノ人ハ過去十善ノ余慶ナルニ由テ。貪欲薄ク華奢ニ随順セヌモノシヤ。下賤困窮ノ者ハ宿縁ツタナキ故ニ。慳貪深ク華麗ヲ好ムモノシヤ。世ニ高貴ノ人ノ財利ニ耽リ。華奢ヲ好ミ事ニ貪欲ニ随順スルハ。多クハ奸佞ノ小臣ニ誘ハルル故ト云コトシヤ。又念ノ生スルモ其分限不相応ナル事ハ。多ハ凶事ノ兆ト云コトシヤ。若貪欲相応スレバ。此戒ノ違犯トナル。增上スレバ身ヲ亡シ国家ヲ敗ル。此ヲ初ニ慎マネバ。終ニ救フベカラザルニ至シヤ。

書き下し

大抵高位大禄ノ人ハ過去十善ノ余慶ナルニ由テ。貪欲薄ク華奢ニ随順セヌモノシヤ。下賤困窮ノ者ハ宿縁ツタナキ故ニ。慳貪深ク華麗ヲ好ムモノシヤ。世ニ高貴ノ人ノ財利ニ耽リ。華奢ヲ好ミ事ニ貪欲ニ随順スルハ。多クハ奸佞ノ小臣ニ誘ハルル故ト云コトシヤ。又念ノ生スルモ其分限不相応ナル事ハ。多ハ凶事ノ兆ト云コトシヤ。若貪欲相応スレバ。此戒ノ違犯トナル。增上スレバ身ヲ亡シ国家ヲ敗ル。此ヲ初ニ慎マネバ。終ニ救フベカラザルニ至シヤ。

現代語訳

おおよそ高位大禄の人は、過去の十善の余慶によるので、貪欲が薄く、華奢に従わないものである。下賤で困窮する者は、宿縁がつたないために、物惜しみと貪りが深く、華麗を好むものである。世に高貴の人が財利にふけり、華奢を好み、事ごとに貪欲に従うのは、多くは奸佞の小臣に誘われるためということである。また念が生じるのも、その分限に不相応な事は、多くは凶事の兆しということである。もし貪欲と結びつけば、この戒の違犯となる。増長すれば、身を滅ぼし国家を破る。これを初めに慎まなければ、ついに救うことができないまでに至るのである。

解説

高位の人は過去の十善の余慶によって欲が薄く、困窮する者は宿縁によって貪りが深い、という説明は、因果応報を前提にした当時の仏教の見方であり、今の読者がそのまま貧富の評価に当てはめるものではない。この章句で汲み取りたいのは後半である。高貴な人が財利にふけるのは多く取り巻きの佞臣に誘われるためであり、分限に不相応な思いが湧くのは凶事の兆しで、初めに慎まなければ救えなくなる。欲は小さな芽のうちに気づくほど制しやすい、という指摘である。

この章句が説くこと

分限貪欲佞臣兆し十善慎み

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