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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

此戒法我ニ非ス。我所ニ非ス。生生ノ處此戒ト倶ニ生スル。此戒ト倶ニ長スル。富四海ヲ保テ心ニ繫縛ナイ。貴キ億兆ノ上ニ居シテ心ニ倨傲ナイ。心ニ繫縛ナケレハ。此富未來際ヲ盡シテ用ヒ盡サヌシヤ。心ニ倨傲ナケレハ。此位世界ノアラン限リハ盡サヌシヤ。ナゼソ。法性無盡ナレバ戒善モ無盡シヤ。戒善無盡ナレハ善業果モ無盡シヤ。善果戒法ヲ助テ常ニ世界ニ居ス。此位此富生生ノ處ニ隨逐シテ影ノ形ヲ逐ガ如クシヤ。戒法善果ヲ助テ常ニ法性ニ順スル。此繫縛ナク。此倨傲ナイ。不貪欲戒ノ法。法トシテカクノ如クシヤ。

新字:此戒法我ニ非ス。我所ニ非ス。生生ノ処此戒ト倶ニ生スル。此戒ト倶ニ長スル。富四海ヲ保テ心ニ繋縛ナイ。貴キ億兆ノ上ニ居シテ心ニ倨傲ナイ。心ニ繋縛ナケレハ。此富未来際ヲ尽シテ用ヒ尽サヌシヤ。心ニ倨傲ナケレハ。此位世界ノアラン限リハ尽サヌシヤ。ナゼソ。法性無尽ナレバ戒善モ無尽シヤ。戒善無尽ナレハ善業果モ無尽シヤ。善果戒法ヲ助テ常ニ世界ニ居ス。此位此富生生ノ処ニ随逐シテ影ノ形ヲ逐ガ如クシヤ。戒法善果ヲ助テ常ニ法性ニ順スル。此繋縛ナク。此倨傲ナイ。不貪欲戒ノ法。法トシテカクノ如クシヤ。

書き下し

此戒法我ニ非ス。我所ニ非ス。生生ノ処此戒ト倶ニ生スル。此戒ト倶ニ長スル。富四海ヲ保テ心ニ繋縛ナイ。貴キ億兆ノ上ニ居シテ心ニ倨傲ナイ。心ニ繋縛ナケレハ。此富未来際ヲ尽シテ用ヒ尽サヌシヤ。心ニ倨傲ナケレハ。此位世界ノアラン限リハ尽サヌシヤ。ナゼソ。法性無尽ナレバ戒善モ無尽シヤ。戒善無尽ナレハ善業果モ無尽シヤ。善果戒法ヲ助テ常ニ世界ニ居ス。此位此富生生ノ処ニ随逐シテ影ノ形ヲ逐ガ如クシヤ。戒法善果ヲ助テ常ニ法性ニ順スル。此繋縛ナク。此倨傲ナイ。不貪欲戒ノ法。法トシテカクノ如クシヤ。

現代語訳

この戒法は我でもなく、我がものでもない。生まれ変わる所ごとに、この戒と共に生まれる。この戒と共に長じる。富は四海を保っても、心に縛りがない。貴さは億兆の上にあっても、心に傲りがない。心に縛りがなければ、この富は未来の果てまで用いても尽きないのである。心に傲りがなければ、この位は世界のある限り尽きないのである。なぜか。法性が無尽であれば、戒の善も無尽である。戒の善が無尽であれば、善業の果も無尽である。善い果報が戒法を助けて、常に世界に居る。この位この富は、生まれ変わる所ごとに付き従って、影が形を追うようなものである。戒法が善い果報を助けて、常に法性に従う。この縛りがなく、この傲りがない。不貪欲戒の法は、法としてこのようなものである。

解説

不貪欲戒は自分の持ち物ではなく、生まれる所ごとに共に生まれ共に育つものだと尊者は言う。天下の富を持っても心が縛られず、最高の位にあっても傲らないなら、その富と位は尽きることがない。法性が尽きないから戒の善も尽きず、善の果報も影が形に従うように付き従う、という因果の説明である。富や地位を否定するのではなく、それに縛られず傲らない心こそが、かえってそれを長く保つ。持っているものに執着しない人ほど信頼を得るという実感にも重なる。

この章句が説くこと

繋縛倨傲富貴因果不貪欲法性

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