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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

又老子ノ言ニ。美好者不祥器トアル。カウシヤ。美好ナル者ハ古今ニ推通シ。情非情ニ推通シテ。道ヲ害シ德ヲ敗ル事ガ多シヤ。此美好ハ天ヨリ與フル德シヤ。ナゼニ不祥ノ器ナルソ。此中具ニ思惟シ看ヨ。美好ナルモノヲハ。人ガ見ルトキ貪欲ト相應スル。自守ルト甚キ慳吝ト相應スル。動スレハ放逸橋慢ノ門ヲ開ク。甚シキニ至テハ自心ヲ惱亂スル。身ヲ亡シ國家ヲ亂スシヤ。要約シテ云ハハ美好ノ者ハ災ノツイテマハル處シヤ。唯謹愼護持ノ人ノミ有テ。其美好ノ德ヲ全クスルシヤ。

新字:又老子ノ言ニ。美好者不祥器トアル。カウシヤ。美好ナル者ハ古今ニ推通シ。情非情ニ推通シテ。道ヲ害シ徳ヲ敗ル事ガ多シヤ。此美好ハ天ヨリ与フル徳シヤ。ナゼニ不祥ノ器ナルソ。此中具ニ思惟シ看ヨ。美好ナルモノヲハ。人ガ見ルトキ貪欲ト相応スル。自守ルト甚キ慳吝ト相応スル。動スレハ放逸橋慢ノ門ヲ開ク。甚シキニ至テハ自心ヲ悩乱スル。身ヲ亡シ国家ヲ乱スシヤ。要約シテ云ハハ美好ノ者ハ災ノツイテマハル処シヤ。唯謹慎護持ノ人ノミ有テ。其美好ノ徳ヲ全クスルシヤ。

書き下し

又老子ノ言ニ。美好者不祥器トアル。カウシヤ。美好ナル者ハ古今ニ推通シ。情非情ニ推通シテ。道ヲ害シ徳ヲ敗ル事ガ多シヤ。此美好ハ天ヨリ与フル徳シヤ。ナゼニ不祥ノ器ナルソ。此中具ニ思惟シ看ヨ。美好ナルモノヲハ。人ガ見ルトキ貪欲ト相応スル。自守ルト甚キ慳吝ト相応スル。動スレハ放逸橋慢ノ門ヲ開ク。甚シキニ至テハ自心ヲ悩乱スル。身ヲ亡シ国家ヲ乱スシヤ。要約シテ云ハハ美好ノ者ハ災ノツイテマハル処シヤ。唯謹慎護持ノ人ノミ有テ。其美好ノ徳ヲ全クスルシヤ。

現代語訳

また老子の言葉に、「美しく好ましいものは不祥の器である」とある。こういうことである。美しく好ましいものは、古今に通じ、心あるものにも心なきものにも通じて、道を害し徳を損なうことが多いのである。この美好は天から与えられた徳である。なぜ不祥の器なのか。ここをよく思惟して見よ。美好なものを、人が見るときには貪欲と結びつく。自分で守るときには甚だしい物惜しみと結びつく。ともすれば放逸や驕慢の門を開く。甚だしくなると、自分の心を悩み乱す。身を滅ぼし、国家を乱すのである。要約して言えば、美好のものは災いが付いて回る所である。ただ謹み慎んで護り持つ人だけが、その美好の徳を全うするのである。

解説

美しいもの、優れたものは天から与えられた徳でありながら、なぜ不祥の器なのか。尊者の答えは、それが人の心に貪欲や物惜しみ、驕りを呼び起こすからである。見る者は欲しがり、持つ者は惜しみ、ともすれば放逸や驕慢に流れて、ついには身や国を滅ぼす。美好には災いが付いて回るが、謹み慎んで守る人だけがその徳を全うできる。優れた才能や恵まれた条件を持つほど、それを守る慎みが要る、という指摘として今にも通じる。

この章句が説くこと

美好不祥慎み貪欲老子驕慢

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