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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

佛戒ニ差排アツテ。初入道ノ男子ヲ優婆塞ト云。女ヲ優婆夷ト云。此輩先五戒ヲ護持スルシヤ。其五戒ノ中ニ飮酒戒ヲ制シ。此十善ニハ飮酒戒ヲ制セヌジヤ。ナゼゾ。十善ハ世間出世間ノ通戒シヤニ由テ。飮酒ハ所論デナキシヤ。初入道ノ人モ少分無漏道ニ順ス。此酒ハ諸漏ニ隨逐スルニ由テ制セネバナラヌシヤ。十善ノ人。禮式ニ願シテ時アツテ酒ヲ用フル。過ルニ至ラヌシヤ。若過テ威儀ヲ亂スニ至レバ。此不貪欲戒ヲ破スルシヤ。

新字:仏戒ニ差排アツテ。初入道ノ男子ヲ優婆塞ト云。女ヲ優婆夷ト云。此輩先五戒ヲ護持スルシヤ。其五戒ノ中ニ飲酒戒ヲ制シ。此十善ニハ飲酒戒ヲ制セヌジヤ。ナゼゾ。十善ハ世間出世間ノ通戒シヤニ由テ。飲酒ハ所論デナキシヤ。初入道ノ人モ少分無漏道ニ順ス。此酒ハ諸漏ニ随逐スルニ由テ制セネバナラヌシヤ。十善ノ人。礼式ニ願シテ時アツテ酒ヲ用フル。過ルニ至ラヌシヤ。若過テ威儀ヲ乱スニ至レバ。此不貪欲戒ヲ破スルシヤ。

書き下し

仏戒ニ差排アツテ。初入道ノ男子ヲ優婆塞ト云。女ヲ優婆夷ト云。此輩先五戒ヲ護持スルシヤ。其五戒ノ中ニ飲酒戒ヲ制シ。此十善ニハ飲酒戒ヲ制セヌジヤ。ナゼゾ。十善ハ世間出世間ノ通戒シヤニ由テ。飲酒ハ所論デナキシヤ。初入道ノ人モ少分無漏道ニ順ス。此酒ハ諸漏ニ随逐スルニ由テ制セネバナラヌシヤ。十善ノ人。礼式ニ願シテ時アツテ酒ヲ用フル。過ルニ至ラヌシヤ。若過テ威儀ヲ乱スニ至レバ。此不貪欲戒ヲ破スルシヤ。

現代語訳

仏の戒には段階があって、初めて道に入る男子を優婆塞と言い、女子を優婆夷と言う。この人々はまず五戒を護持する。その五戒の中には飲酒戒を定めているが、この十善には飲酒戒を定めていない。なぜか。十善は世間と出世間に通じる戒であるから、飲酒は論じる所ではないのである。初めて道に入る人も、少しは無漏の道に従う。この酒は諸々の漏(煩悩)に付き従うものであるから、禁じなければならないのである。十善の人は、礼式に臨んで時に酒を用いる。度を過ごすには至らない。もし度を過ごして威儀を乱すに至れば、この不貪欲戒を破ることになる。

解説

在家信者の五戒には不飲酒戒があるのに、十善には飲酒の戒がない。その理由を尊者は、十善は世間にも出世間にも通じる根本の戒であり、酒そのものは論点ではないからだと説く。仏道に入ったばかりの人の五戒で酒を禁じるのは、酒が煩悩に付き従いやすいからである。十善の人は礼式の場で酒を用いてもよいが、度を過ごして振る舞いを乱せば、それが不貪欲戒を破ることになる。禁止の一覧ではなく、節度という原理で飲み方を考えさせる一節である。

この章句が説くこと

飲酒五戒十善節度優婆塞威儀

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