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十善法語 / 巻第八・不貪欲戒

論語ニモ孔子ガ我未見剛者ト。或人カ門人ノ中申根ハ剛者ナルヘシト。孔子云。根ハ慾アリ。ナンゾ剛ヲ得ント。カウシヤ。若情欲アラハ勇者モ勇ヲ失フ。智者モ智ヲ失フ。世中ニ在テモ剛者ト云名ハ許サレヌ。佛法ノ中デハ凡夫ト云名ヲ與フベキシヤ。經中ニ諸苦所因貪欲爲本トアル。貪欲心ヲ以テ色ヲ見レバ五色ミナ苦シヤ。貪欲心ヲ以テ聲ヲ聞ケハ五聲ミナ苦シヤ。貪欲相應スレハ鼻ノ香舌ノ味身ノ觸ミナ苦シヤ。貪欲心ヲ以テ世間ニ住スレバ男女大小ミナ苦シヤ。金銀財寶祿位官爵ミナ苦シヤ。一切時一切處カミナ凡夫境界シヤ。

新字:論語ニモ孔子ガ我未見剛者ト。或人カ門人ノ中申根ハ剛者ナルヘシト。孔子云。根ハ慾アリ。ナンゾ剛ヲ得ント。カウシヤ。若情欲アラハ勇者モ勇ヲ失フ。智者モ智ヲ失フ。世中ニ在テモ剛者ト云名ハ許サレヌ。仏法ノ中デハ凡夫ト云名ヲ与フベキシヤ。経中ニ諸苦所因貪欲為本トアル。貪欲心ヲ以テ色ヲ見レバ五色ミナ苦シヤ。貪欲心ヲ以テ声ヲ聞ケハ五声ミナ苦シヤ。貪欲相応スレハ鼻ノ香舌ノ味身ノ触ミナ苦シヤ。貪欲心ヲ以テ世間ニ住スレバ男女大小ミナ苦シヤ。金銀財宝禄位官爵ミナ苦シヤ。一切時一切処カミナ凡夫境界シヤ。

書き下し

論語ニモ孔子ガ我未見剛者ト。或人カ門人ノ中申根ハ剛者ナルヘシト。孔子云。根ハ慾アリ。ナンゾ剛ヲ得ント。カウシヤ。若情欲アラハ勇者モ勇ヲ失フ。智者モ智ヲ失フ。世中ニ在テモ剛者ト云名ハ許サレヌ。仏法ノ中デハ凡夫ト云名ヲ与フベキシヤ。経中ニ諸苦所因貪欲為本トアル。貪欲心ヲ以テ色ヲ見レバ五色ミナ苦シヤ。貪欲心ヲ以テ声ヲ聞ケハ五声ミナ苦シヤ。貪欲相応スレハ鼻ノ香舌ノ味身ノ触ミナ苦シヤ。貪欲心ヲ以テ世間ニ住スレバ男女大小ミナ苦シヤ。金銀財宝禄位官爵ミナ苦シヤ。一切時一切処カミナ凡夫境界シヤ。

現代語訳

論語にも、孔子が「私はまだ剛い者を見たことがない」と言った。ある人が、門人の中で申根(申棖)は剛い者でしょう、と言った。孔子は言った。棖には欲がある、どうして剛くあり得ようか、と。こういうことである。もし情欲があれば、勇者も勇を失い、智者も智を失う。世間にあっても剛者という名は許されない。仏法の中では凡夫という名を与えるべきである。経の中に、諸々の苦の原因は貪欲を根本とする、とある。貪欲の心で色を見れば、五色がみな苦である。貪欲の心で声を聞けば、五声がみな苦である。貪欲と結びつけば、鼻の香、舌の味、身に触れるものがみな苦である。貪欲の心で世間に住めば、男女大小の人々がみな苦である。金銀財宝も、俸禄・位・官爵もみな苦である。いつでもどこでも、みな凡夫の境界である。

解説

論語公冶長篇で、孔子が申棖を評して、棖には欲がある、どうして剛くあり得ようか、と言った話を引き、欲のある者は強くなれないと説く。欲は勇者から勇を、智者から智を奪う。さらに経の、諸々の苦の原因は貪欲を根本とするという句を引き、同じ色や音や財宝も、貪る心で向き合えばすべて苦になると言う。苦の原因を対象の側ではなく、向き合う心の側に置くのが要点である。交渉や判断の場で、欲しいものがあるほど弱くなるという経験に重ねて読める。

この章句が説くこと

貪欲論語申棖

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