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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

杖瓶王ハ鵄カ法門トナリ來タ醜面王ハ牛ガ法門トナリ來ル。梵授王ハ華樹ガ法門トナリ來ル。此壯勝王ハ女人環釧ノ聲カ法門トナリ來ツタシヤ。面白キコトシヤ。時此陶師ガ此四聖ノ緣事ヲ聞テ。國王尊貴ノ人タニ各各位ヲサリ出家ス。我コノ卑賤ノ業ヲナシ。一生マヌカレ得ヌ。誠ニ鵄ノ肉ヲ貪リ。牛ノ特牛ヲ爭フニ異ナラスト思ヒ定テ。出家ノ志決定シタルトアル。此ガ大迦葉尊者ノ因位ナルト云コトシヤ。此四聖ノ境ニフレテ感アルモ。陶師ノ賢ヲ見テ齊シカランコトヲ思フモ。十善ノ法ヨリ見レハ。皆不兩舌戒ノ儀シヤ。

新字:杖瓶王ハ鵄カ法門トナリ来タ醜面王ハ牛ガ法門トナリ来ル。梵授王ハ華樹ガ法門トナリ来ル。此壮勝王ハ女人環釧ノ声カ法門トナリ来ツタシヤ。面白キコトシヤ。時此陶師ガ此四聖ノ縁事ヲ聞テ。国王尊貴ノ人タニ各各位ヲサリ出家ス。我コノ卑賤ノ業ヲナシ。一生マヌカレ得ヌ。誠ニ鵄ノ肉ヲ貪リ。牛ノ特牛ヲ争フニ異ナラスト思ヒ定テ。出家ノ志決定シタルトアル。此ガ大迦葉尊者ノ因位ナルト云コトシヤ。此四聖ノ境ニフレテ感アルモ。陶師ノ賢ヲ見テ斉シカランコトヲ思フモ。十善ノ法ヨリ見レハ。皆不両舌戒ノ儀シヤ。

書き下し

杖瓶王ハ鵄カ法門トナリ来タ醜面王ハ牛ガ法門トナリ来ル。梵授王ハ華樹ガ法門トナリ来ル。此壮勝王ハ女人環釧ノ声カ法門トナリ来ツタシヤ。面白キコトシヤ。時此陶師ガ此四聖ノ縁事ヲ聞テ。国王尊貴ノ人タニ各各位ヲサリ出家ス。我コノ卑賤ノ業ヲナシ。一生マヌカレ得ヌ。誠ニ鵄ノ肉ヲ貪リ。牛ノ特牛ヲ争フニ異ナラスト思ヒ定テ。出家ノ志決定シタルトアル。此ガ大迦葉尊者ノ因位ナルト云コトシヤ。此四聖ノ境ニフレテ感アルモ。陶師ノ賢ヲ見テ斉シカランコトヲ思フモ。十善ノ法ヨリ見レハ。皆不両舌戒ノ儀シヤ。

現代語訳

杖瓶王は鵄が法門となって来た。醜面王は牛が法門となって来た。梵授王は花の樹が法門となって来た。この壮勝王は女人の腕輪の音が法門となって来たのである。面白いことである。そのとき、この陶工がこの四人の聖者の縁の話を聞いて、国王という尊貴な人でさえ、それぞれ位を去って出家した。私はこの卑しい仕事をして、一生逃れられない。まことに鵄が肉を貪り、牛が雄牛を争うのと異ならない、と思い定めて、出家の志が決まった、とある。これが大迦葉尊者の前世の因位であるということだ。この四聖が境界に触れて感じるところがあったのも、陶工が賢者を見て自分も等しくなろうと思ったのも、十善の法から見れば、みな不両舌戒のありさまである。

解説

鵄、牛、花の樹、腕輪の音。四人の王はそれぞれ違うものを法門として悟った。その話を聞いていた陶工は、王でさえ位を捨てたのに、自分はこの暮らしを抜けられないと思い、出家を決意した。これが後の大迦葉の前世だと伝えられる。尊者は、四人が物事に触れて感じたことも、陶工が賢者を見て等しくなりたいと願ったことも、不両舌戒の現れだと言う。人と物、人と人が響き合って心が動く、その結びつきを戒の姿と見ているのである。優れた人の話に触れて志を立てる機会は、今日にも開かれている。

この章句が説くこと

法門発心見賢思斉大迦葉独覚不両舌

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