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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

看ヨ。鵄鳥ガ目ニハ。此一團ノ肉ハマコトニ味美好境シヤ。今日ノ人間ノ名利五欲大祿高位官爵ノ類モ。人間ノ目ニコソ好境界ナレトモ。諸天若ハ佛菩薩ノ眼ヨリ見レハ鵄ノ一團肉ヲ爭フ如クシヤ。コレツレノコトモ決徹シテ疑ハヌ處ニ至レハ。一切ノ欲境ハ皆風前ノ塵シヤ。次問第二獨覺。仁者是誰。彼卽答曰。仁等頗聞醜面王不。答曰。嘗聞。報言。醜面王者我是。復問曰。仁者以何因緣而作出家。醜面獨覺答曰。我在宮中。或時見二特牛逐一特牛共相觝觸軀體傷損一牛角折退走而去。我既見已。情甚嗟嘆。而作是念。諸憂患貪欲爲本。心爲惱害。深生厭患。便卽出家ト。此中前ノ鵄鳥ノ肉ヲ爭フト。此犢牛ノ特牛ヲ爭フト。所見ノ境界ハ相似タレトモ。杖瓶王ト醜面王トノ心ノ感ハ別シヤ。前ノ杖瓶王獨覺ハ無益鎖細ノ事ニ苦ムコトヲ感シ。此醜面獨覺ハ一切ノ苦ハ貪欲ヨリ起ルヲ嗟嘆ス。此貪欲ノ苦本ナルコトヲ決徹シテ知レバ。萬境ハ自ラ解脫スルシヤ。

新字:看ヨ。鵄鳥ガ目ニハ。此一団ノ肉ハマコトニ味美好境シヤ。今日ノ人間ノ名利五欲大禄高位官爵ノ類モ。人間ノ目ニコソ好境界ナレトモ。諸天若ハ仏菩薩ノ眼ヨリ見レハ鵄ノ一団肉ヲ争フ如クシヤ。コレツレノコトモ決徹シテ疑ハヌ処ニ至レハ。一切ノ欲境ハ皆風前ノ塵シヤ。次問第二独覚。仁者是誰。彼即答曰。仁等頗聞醜面王不。答曰。嘗聞。報言。醜面王者我是。復問曰。仁者以何因縁而作出家。醜面独覚答曰。我在宮中。或時見二特牛逐一特牛共相觝触軀体傷損一牛角折退走而去。我既見已。情甚嗟嘆。而作是念。諸憂患貪欲為本。心為悩害。深生厭患。便即出家ト。此中前ノ鵄鳥ノ肉ヲ争フト。此犢牛ノ特牛ヲ争フト。所見ノ境界ハ相似タレトモ。杖瓶王ト醜面王トノ心ノ感ハ別シヤ。前ノ杖瓶王独覚ハ無益鎖細ノ事ニ苦ムコトヲ感シ。此醜面独覚ハ一切ノ苦ハ貪欲ヨリ起ルヲ嗟嘆ス。此貪欲ノ苦本ナルコトヲ決徹シテ知レバ。万境ハ自ラ解脱スルシヤ。

書き下し

看ヨ。鵄鳥ガ目ニハ。此一団ノ肉ハマコトニ味美好境シヤ。今日ノ人間ノ名利五欲大禄高位官爵ノ類モ。人間ノ目ニコソ好境界ナレトモ。諸天若ハ仏菩薩ノ眼ヨリ見レハ鵄ノ一団肉ヲ争フ如クシヤ。コレツレノコトモ決徹シテ疑ハヌ処ニ至レハ。一切ノ欲境ハ皆風前ノ塵シヤ。次問第二独覚。仁者是誰。彼即答曰。仁等頗聞醜面王不。答曰。嘗聞。報言。醜面王者我是。復問曰。仁者以何因縁而作出家。醜面独覚答曰。我在宮中。或時見二特牛逐一特牛共相觝触軀体傷損一牛角折退走而去。我既見已。情甚嗟嘆。而作是念。諸憂患貪欲為本。心為悩害。深生厭患。便即出家ト。此中前ノ鵄鳥ノ肉ヲ争フト。此犢牛ノ特牛ヲ争フト。所見ノ境界ハ相似タレトモ。杖瓶王ト醜面王トノ心ノ感ハ別シヤ。前ノ杖瓶王独覚ハ無益鎖細ノ事ニ苦ムコトヲ感シ。此醜面独覚ハ一切ノ苦ハ貪欲ヨリ起ルヲ嗟嘆ス。此貪欲ノ苦本ナルコトヲ決徹シテ知レバ。万境ハ自ラ解脱スルシヤ。

現代語訳

見よ。鵄の目には、この一塊の肉はまことに味のよい好ましい対象である。今日の人間の名利や五欲、大きな禄や高い位や官爵の類も、人間の目にこそ好ましい境界であるけれども、諸天や仏菩薩の眼から見れば、鵄が一塊の肉を争うようなものである。こういうことも、決定的に徹して疑わないところに至れば、一切の欲の対象はみな風の前の塵である。次に第二の独覚に問うた。あなたは誰か、と。彼は答えた。あなたがたは醜面王を聞いたことがあるか、と。答えた。かつて聞いたことがある、と。言った。醜面王とは私である、と。また問うた。あなたは何の因縁によって出家したのか、と。醜面独覚は答えた。私は宮中にいて、あるとき二頭の雄牛が一頭の雄牛を追い、互いに角で突き合って体が傷つき、一頭の牛は角が折れて退き逃げ去るのを見た。私はそれを見て、心にひどく嘆き、こう思った。諸々の憂いや患いは貪欲を本とする。心が悩み害される、と。深く厭い、すぐに出家したのである、と。この中で、前の鵄が肉を争うのと、この牛が雄牛を争うのと、見た境界は似ているけれども、杖瓶王と醜面王との心の感じ方は別である。前の杖瓶王独覚は、無益で細かな事に苦しむことを感じ、この醜面独覚は一切の苦が貪欲から起こることを嘆いた。この貪欲が苦の本であることを決定的に徹して知れば、あらゆる境界はおのずから解脱するのである。

解説

鵄にとって肉は最高のごちそうだが、上から見ればただの奪い合いである。名誉や高い地位も、仏の眼から見れば同じだと尊者は言う。二人目の醜面王は、雄牛どうしが角を突き合わせ、一頭が角を折って逃げるのを見て、憂いの根は貪欲だと悟った。尊者は、似た光景を見ても、一人は無益な争いの苦しさを、一人は貪欲こそ苦の根だと感じた、と心の受け止め方の違いに注目する。同じ出来事から何を学ぶかは人それぞれで、その気づきを徹底することが大事なのである。

この章句が説くこと

貪欲名利独覚解脱決徹出家

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