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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

經中ニ世尊每ニ言フ。阿難ハ精進ニ過テ反テ道ヲ障フト。佛滅後。大迦葉尊者阿難ヲ呵ス。時ニ阿難尊者迦葉ノ呵責ヲ被リ已テ。勇猛ニ禪定ヲ修スルニ。道ヲ得ズ。此時世尊平日ノ教誠ヲ憶念シ。少ク眠息セントシテ。足旣ニ床ヲ離レ。頭未タ枕ニ及ハヌトキ。無學果ヲ證得セシトアル。看ヨ。此藥反テ病トナリ。此法反テ障礙トナル。藥去テ其病モ去ル。法絕シテ障礙モ斷絕スル。コノ趣面白カルヘキシヤ。女人ノ中ニ。瘦瞿曇彌ハ諸患難ニ遇テ得道セリトアル。業報因緣此ガ此身心ノ憂苦トナル。此憂苦因緣此法ヲ得ル。此モソノ趣面白キシヤ。蓮華色尼ガ目連尊者ニ遇テ道ニ入ル。後尼衆ノ中ニ神通第一ノ德ヲ顯ハス類。宿業隨ヒ來テ此人ニ遇フ。此人緣トナツテ我行成就ス。皆因緣契當。留メテ留メ得ラレヌ場處カアルシヤ。

新字:経中ニ世尊毎ニ言フ。阿難ハ精進ニ過テ反テ道ヲ障フト。仏滅後。大迦葉尊者阿難ヲ呵ス。時ニ阿難尊者迦葉ノ呵責ヲ被リ已テ。勇猛ニ禅定ヲ修スルニ。道ヲ得ズ。此時世尊平日ノ教誠ヲ憶念シ。少ク眠息セントシテ。足既ニ床ヲ離レ。頭未タ枕ニ及ハヌトキ。無学果ヲ証得セシトアル。看ヨ。此薬反テ病トナリ。此法反テ障礙トナル。薬去テ其病モ去ル。法絶シテ障礙モ断絶スル。コノ趣面白カルヘキシヤ。女人ノ中ニ。痩瞿曇弥ハ諸患難ニ遇テ得道セリトアル。業報因縁此ガ此身心ノ憂苦トナル。此憂苦因縁此法ヲ得ル。此モソノ趣面白キシヤ。蓮華色尼ガ目連尊者ニ遇テ道ニ入ル。後尼衆ノ中ニ神通第一ノ徳ヲ顕ハス類。宿業随ヒ来テ此人ニ遇フ。此人縁トナツテ我行成就ス。皆因縁契当。留メテ留メ得ラレヌ場処カアルシヤ。

書き下し

経中ニ世尊毎ニ言フ。阿難ハ精進ニ過テ反テ道ヲ障フト。仏滅後。大迦葉尊者阿難ヲ呵ス。時ニ阿難尊者迦葉ノ呵責ヲ被リ已テ。勇猛ニ禅定ヲ修スルニ。道ヲ得ズ。此時世尊平日ノ教誠ヲ憶念シ。少ク眠息セントシテ。足既ニ床ヲ離レ。頭未タ枕ニ及ハヌトキ。無学果ヲ証得セシトアル。看ヨ。此薬反テ病トナリ。此法反テ障礙トナル。薬去テ其病モ去ル。法絶シテ障礙モ断絶スル。コノ趣面白カルヘキシヤ。女人ノ中ニ。痩瞿曇弥ハ諸患難ニ遇テ得道セリトアル。業報因縁此ガ此身心ノ憂苦トナル。此憂苦因縁此法ヲ得ル。此モソノ趣面白キシヤ。蓮華色尼ガ目連尊者ニ遇テ道ニ入ル。後尼衆ノ中ニ神通第一ノ徳ヲ顕ハス類。宿業随ヒ来テ此人ニ遇フ。此人縁トナツテ我行成就ス。皆因縁契当。留メテ留メ得ラレヌ場処カアルシヤ。

現代語訳

経の中に、世尊は常に、阿難は精進が過ぎてかえって道を妨げている、と言われた。仏の滅後、大迦葉尊者が阿難を叱った。そのとき阿難尊者は迦葉の叱責を受けて、勇猛に禅定を修めたが、道を得なかった。そのとき世尊の平日の教えを思い出し、少し眠って休もうとして、足がすでに床を離れ、頭がまだ枕に届かないときに、無学の果(阿羅漢果)を証得した、とある。見よ。この薬がかえって病となり、この法がかえって障りとなる。薬が去ってその病も去る。法が絶えて障りも絶える。この趣は面白いはずである。女人の中で、痩せた瞿曇弥は、さまざまな患難に遭って道を得た、とある。業の報いの因縁、これがこの身心の憂い苦しみとなる。この憂い苦しみの因縁で、この法を得る。これもその趣が面白いのである。蓮華色尼が目連尊者に遇って道に入り、後に尼僧の中で神通第一の徳を現した類。前世の業が付き従ってきてこの人に遇う。この人が縁となって自分の行が成就する。みな因縁がぴたりと合って、留めようとしても留められない場面があるのである。

解説

仏滅後の第一結集を前に、まだ悟っていなかった阿難は大迦葉に叱られ、必死に坐禅したが悟れなかった。精進しすぎを戒めた仏の言葉を思い出し、横になろうとした瞬間に悟ったと伝えられる。努力という薬がかえって病になっていたのである。わが子を失う苦しみを経て仏に出会ったキサー・ゴータミー(痩瞿曇弥)、数奇な宿業の末に目連に導かれ神通第一となった蓮華色尼も、苦しみや出会いが縁となった例である。力を入れすぎて行き詰まったとき、少し力を抜くことが突破口になることがある。

この章句が説くこと

精進因縁苦難阿難蓮華色尼障礙

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