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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

經中ニ。佛世ニ染師ノ子アリ舍利弗尊者ノ弟子トナル。尊者コレニ數息觀ヲ授ク。年月ヲ經テ功ヲ積メトモ。其證ヲ得ス。鍛師ノ子アリ是モ舍利弗尊者ノ弟子トナル。尊者コレニ不淨觀ヲ授ク。是モ年月ヲ經テ功ヲ積メトモ其證ヲ得ス。舍利弗尊者此ヲ世尊ニ白ス。世尊告タマフ。舍利弗法ヲ授クル。其人機ニ違フ。染師ノ子不淨觀ヲ脩スベク。鍛師ノ子數息觀ヲ修スベシト。此二子佛勅ニ順シテ修スルニ。不久シテ聖果ニ登ルトアル。此等ノ趣モ看ヨ。此業因緣アリテ染師ノ子トナル。垢汚ヲ淨除シテ日ヲ送リ年ヲ送ル。出世道ニ入テモ此緣隨逐ス。不淨觀ノ成スル。ソノ趣思ベキシヤ。此業因緣アリテ鍛師ノ子トナル。□籥ニトモナフテ日ヲ送リ月ヲ送ル。出世道ニ入テモ此緣隨逐ス。數息觀ノ成スルソノ趣思ベキシヤ。

新字:経中ニ。仏世ニ染師ノ子アリ舎利弗尊者ノ弟子トナル。尊者コレニ数息観ヲ授ク。年月ヲ経テ功ヲ積メトモ。其証ヲ得ス。鍛師ノ子アリ是モ舎利弗尊者ノ弟子トナル。尊者コレニ不浄観ヲ授ク。是モ年月ヲ経テ功ヲ積メトモ其証ヲ得ス。舎利弗尊者此ヲ世尊ニ白ス。世尊告タマフ。舎利弗法ヲ授クル。其人機ニ違フ。染師ノ子不浄観ヲ脩スベク。鍛師ノ子数息観ヲ修スベシト。此二子仏勅ニ順シテ修スルニ。不久シテ聖果ニ登ルトアル。此等ノ趣モ看ヨ。此業因縁アリテ染師ノ子トナル。垢汚ヲ浄除シテ日ヲ送リ年ヲ送ル。出世道ニ入テモ此縁随逐ス。不浄観ノ成スル。ソノ趣思ベキシヤ。此業因縁アリテ鍛師ノ子トナル。□籥ニトモナフテ日ヲ送リ月ヲ送ル。出世道ニ入テモ此縁随逐ス。数息観ノ成スルソノ趣思ベキシヤ。

書き下し

経中ニ。仏世ニ染師ノ子アリ舎利弗尊者ノ弟子トナル。尊者コレニ数息観ヲ授ク。年月ヲ経テ功ヲ積メトモ。其証ヲ得ス。鍛師ノ子アリ是モ舎利弗尊者ノ弟子トナル。尊者コレニ不浄観ヲ授ク。是モ年月ヲ経テ功ヲ積メトモ其証ヲ得ス。舎利弗尊者此ヲ世尊ニ白ス。世尊告タマフ。舎利弗法ヲ授クル。其人機ニ違フ。染師ノ子不浄観ヲ脩スベク。鍛師ノ子数息観ヲ修スベシト。此二子仏勅ニ順シテ修スルニ。不久シテ聖果ニ登ルトアル。此等ノ趣モ看ヨ。此業因縁アリテ染師ノ子トナル。垢汚ヲ浄除シテ日ヲ送リ年ヲ送ル。出世道ニ入テモ此縁随逐ス。不浄観ノ成スル。ソノ趣思ベキシヤ。此業因縁アリテ鍛師ノ子トナル。□籥ニトモナフテ日ヲ送リ月ヲ送ル。出世道ニ入テモ此縁随逐ス。数息観ノ成スルソノ趣思ベキシヤ。

現代語訳

経の中に次のようにある。仏の世に染め物師の子がいて、舎利弗尊者の弟子となった。尊者はこれに数息観を授けた。年月を経て功を積んだが、その証を得なかった。鍛冶師の子がいて、これも舎利弗尊者の弟子となった。尊者はこれに不浄観を授けた。これも年月を経て功を積んだが、その証を得なかった。舎利弗尊者はこれを世尊に申し上げた。世尊は告げられた。舎利弗が法を授けたのは、その人の機根に違っている。染め物師の子は不浄観を修めるべきであり、鍛冶師の子は数息観を修めるべきである、と。この二人の子が仏の勅に従って修めると、久しからずして聖者の果に登った、とある。これらの趣も見よ。この業の因縁があって染め物師の子となる。汚れを清め除いて日を送り年を送る。出世間の道に入っても、この縁が付き従う。不浄観が成就するその趣を思うべきである。この業の因縁があって鍛冶師の子となる。□籥(ふいご)に伴って日を送り月を送る。出世間の道に入っても、この縁が付き従う。数息観が成就するその趣を思うべきである。

解説

智慧第一の舎利弗でさえ、弟子に合わない修行法を授けてしまった。汚れを扱う染め物師の子には身体の不浄を観じる不浄観が、ふいごで風を送る鍛冶師の子には呼吸を数える数息観が合っていた。仏が入れ替えさせると二人はすぐに悟った。生まれ育った仕事で身についた感覚が、修行でも縁として働くという話である。人に何かを教えるとき、一般に優れた方法を押しつけるより、その人がこれまで積んできた経験に沿った方法を選ぶほうが、ずっと早く身につく。

この章句が説くこと

機根修行舎利弗数息観不浄観

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