十善法語 / 巻第七・不兩舌戒
少衆トイヘトモ。其衆ニ主タル者ハ必ソノ長處カアルモノシヤ。此長處ハ細民ノ知ル處テハナイ。其部下ニ居テ其首領ヲ蔑ニシ。私ノ威命ヲ立ントスル者ハ。必天命ニ背ク。必善果報ヲ減スル。タトヒ其才ハ中人ニ及ストモ。其首領ヲ尊重スル者ハ。必天命ニ順スル。必善果報ヲ增長スル。十善ノ法如是シヤ。小家トイヘトモ。其元祖タル者ハ必統ヲ垂ルル德カアル。庸流ヨリハ勝ルモノシヤ。マシテ郡國ノ開祖タル者ハ通途ノ果報テハナイシヤ。其家家ニ立置シ法ハ各各長スル所ガアルヘキシヤ。小心ニ枯淡ヲ守ルモ其一風シヤ。大量ニ人ヲ惠ムモ亦一風シヤ。武ヲ勵シテ嚴烈ナルモ一家風シヤ。文ヲ主トシテ溫厚ナルモ一家風シヤ。各各其家先祖ノ定ル所ガ家ノ守リシヤ。コレヲ十善ノ道ト名ツクル。若兒孫タル者少ク書ヲ讀テ祖考ノ不學ヲ侮リ。下民タル者己カ才藝ニホコリテ國ノ政ヲ議スル者ハ。必天命ニ背ク。自ノ善果報ヲ損スルト云コトシヤ。
新字:少衆トイヘトモ。其衆ニ主タル者ハ必ソノ長処カアルモノシヤ。此長処ハ細民ノ知ル処テハナイ。其部下ニ居テ其首領ヲ蔑ニシ。私ノ威命ヲ立ントスル者ハ。必天命ニ背ク。必善果報ヲ減スル。タトヒ其才ハ中人ニ及ストモ。其首領ヲ尊重スル者ハ。必天命ニ順スル。必善果報ヲ增長スル。十善ノ法如是シヤ。小家トイヘトモ。其元祖タル者ハ必統ヲ垂ルル徳カアル。庸流ヨリハ勝ルモノシヤ。マシテ郡国ノ開祖タル者ハ通途ノ果報テハナイシヤ。其家家ニ立置シ法ハ各各長スル所ガアルヘキシヤ。小心ニ枯淡ヲ守ルモ其一風シヤ。大量ニ人ヲ恵ムモ亦一風シヤ。武ヲ励シテ厳烈ナルモ一家風シヤ。文ヲ主トシテ温厚ナルモ一家風シヤ。各各其家先祖ノ定ル所ガ家ノ守リシヤ。コレヲ十善ノ道ト名ツクル。若児孫タル者少ク書ヲ読テ祖考ノ不学ヲ侮リ。下民タル者己カ才芸ニホコリテ国ノ政ヲ議スル者ハ。必天命ニ背ク。自ノ善果報ヲ損スルト云コトシヤ。
書き下し
少衆トイヘトモ。其衆ニ主タル者ハ必ソノ長処カアルモノシヤ。此長処ハ細民ノ知ル処テハナイ。其部下ニ居テ其首領ヲ蔑ニシ。私ノ威命ヲ立ントスル者ハ。必天命ニ背ク。必善果報ヲ減スル。タトヒ其才ハ中人ニ及ストモ。其首領ヲ尊重スル者ハ。必天命ニ順スル。必善果報ヲ增長スル。十善ノ法如是シヤ。小家トイヘトモ。其元祖タル者ハ必統ヲ垂ルル徳カアル。庸流ヨリハ勝ルモノシヤ。マシテ郡国ノ開祖タル者ハ通途ノ果報テハナイシヤ。其家家ニ立置シ法ハ各各長スル所ガアルヘキシヤ。小心ニ枯淡ヲ守ルモ其一風シヤ。大量ニ人ヲ恵ムモ亦一風シヤ。武ヲ励シテ厳烈ナルモ一家風シヤ。文ヲ主トシテ温厚ナルモ一家風シヤ。各各其家先祖ノ定ル所ガ家ノ守リシヤ。コレヲ十善ノ道ト名ツクル。若児孫タル者少ク書ヲ読テ祖考ノ不学ヲ侮リ。下民タル者己カ才芸ニホコリテ国ノ政ヲ議スル者ハ。必天命ニ背ク。自ノ善果報ヲ損スルト云コトシヤ。
現代語訳
小さな集団であっても、その集団の主である者には、必ずその長所があるものである。この長所は下々の者の知るところではない。その部下にいてその首領をないがしろにし、自分の威勢を立てようとする者は、必ず天命に背く。必ず善い果報を減らす。たとえその才が並の人に及ばなくても、その首領を尊重する者は、必ず天命に順う。必ず善い果報を増す。十善の法はこのようなものである。小さな家であっても、その元祖である者には、必ず家の統を後に伝える徳がある。凡庸な人々よりは勝るものである。まして郡や国の開祖である者は、並の果報ではないのである。その家々に立てておいた法には、それぞれ優れたところがあるはずである。細心に質素を守るのもその一つの風である。大らかに人に恵むのもまた一つの風である。武を励んで厳しく激しいのも一家の風である。文を主として温厚なのも一家の風である。それぞれその家の先祖の定めたところが家の守りである。これを十善の道と名づける。もし子孫である者が、少し書を読んで祖父や父の無学を侮り、下々の民である者が自分の才芸を誇って国の政を論じるなら、必ず天命に背き、自分の善い果報を損なうということだ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・堯曰篇堯曰く、「咨、爾舜、天の暦数爾の躬に在り。允に其の中を執れ。四海困窮せば、天禄永く終わらん。」舜も亦た以て禹に命ず。曰く、「予小子履、敢えて玄牡を用い、敢えて昭らかに皇皇たる后帝に告ぐ。罪有るは敢えて赦さず。帝の臣は蔽わず、簡ぶこと帝の心に在り。朕が躬罪有らば、万方を以てすること無かれ。万方罪有らば、罪は朕が躬に在り。」「周に大賚有り、善人是れ富む。」「周親有りと雖も、仁人に如かず。百姓過ち有らば、予一人に在り。」権量を謹み、法度を審らかにし、廃官を脩むれば、四方の政行われん。滅国を興し、絶世を継ぎ、逸民を挙ぐれば、天下の民心を帰せん。重んずる所は、民・食・喪・祭。寛なれば則ち衆を得、信なれば則ち民任じ、敏なれば則ち功有り、公なれば則ち説ぶ。
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論語・季氏篇孔子曰く、君子に三畏有り。天命を畏れ、大人を畏れ、聖人の言を畏る。小人は天命を知らずして畏れざるなり。大人に狎れ、聖人の言を侮る。
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孟子・梁惠王章句下魯の平公將に出でんとす。嬖人臧倉なる者請うて曰く、「他日、君出づれば、則ち必ず有司に之く所を命ず。今、輿に乘り已に駕す。有司未だ之く所を知らず。敢て請う。」公曰く、「將に孟子を見んとす。」曰く、「何ぞや。君の為す所、身を輕んじて以て匹夫に先だつとは。以て賢と為すか。禮義は賢者由り出づ。而るに孟子の後喪は前喪に踰えたり。君、見る無かれ。」公曰く、「諾。」樂正子、入り見えて曰く、「君、奚為れぞ孟軻を見ざるや。」曰く、「或ひと寡人に告げて曰く、『孟子の後喪は前喪を踰えたり。』是を以て往きて見ざるなり。」曰く、「何ぞや。君の所謂踰ゆとは。前には士を以てし、後には大夫を以てし、前には三鼎を以てし、後には五鼎を以てしたるか。」曰く、「否。棺槨衣衾の美を謂うなり。」曰く、「所謂踰ゆるには非ざるなり。貧富同じからざればなり。」樂正子、孟子に見えて曰く、「克、君に告ぐ。君、來たり見んと為す。嬖人に臧倉なる者有り、君を沮む。君是を以て來たることを果たさざるなり。」曰く、「行くも之を使しむる或り、止まるも之を尼むる或り。行止は人の能くする所に非ざるなり。吾の魯侯に遇わざるは、天なり。臧氏の子、焉ぞ能く予をして遇わしめざらんや。」
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孔子家語・五儀解哀公孔子に問いて曰く、「夫れ国家の存亡禍福は、信に天命有りて、唯だ人のみに非ざるか。」孔子対えて曰く、「存亡禍福は、皆己のみ。天災地妖は、加うる能わざるなり。」公曰く、「善いかな。吾子の言、豈に其の事有るか。」孔子曰く、「昔者殷王帝辛の世、雀の大鳥を城隅に生む有り。之を占いて曰く、『凡そ小を以て大を生ずれば、則ち国家必ず王として名必ず昌んならん』と。是に於て帝辛雀の徳を介として、国政を修めず、亢暴極まり無く、朝臣救うこと莫く、外寇乃ち至りて、殷国以て亡ぶ。此れ即ち己を以て天時に逆らい、福を詭りて反りて禍と為す者なり。又其の先世殷王太戊の時、道缺け法圮れ、以て夭櫱・桑穀朝に致し、七日にして大いに拱す。之を占う者曰く、『桑穀は野木にして朝に合生せず、意者国亡びんか』と。太戊恐駭し、身を側めて行を修め、先王の政を思い、養民の道を明らかにす。三年の後、遠方義を慕いて重訳して至る者、十有六国。此れ即ち己を以て天時に逆らい、禍を得て福と為す者なり。故に天災地妖は、人主を儆む所以の者なり。寤夢征怪は、人臣を儆む所以の者なり。災妖は善政に勝たず、寤夢は善行に勝たず。能く此を知る者は、至治の極なり。唯だ明王のみ此に達す。」公曰く、「寡人鄙固此くの如きに、亦た君子の教を聞くを得ざりしなり。」
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尚書・康誥惟れ命は常には于いてせず。
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『呻吟語』内篇・修身・我主張して天に由らず富貴福澤を得んと要するは、天主張して、我に由るを得ず。賢人君子と做らんと要するは、我主張して、天に由るを得ず。